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バルセロナのペドリ
バルセロナのペドリが茨の道を歩んでいる。
1週間前のアスレティック戦の前半、ボールを蹴った後に右足を抑えて座り込んだ。両手で覆った目からは涙が流れていた。
これで今季3度目の負傷。バルセロナで通算8度目の負傷である。
内訳は、【1】左足の大腿四頭筋損傷(21年9月/全治11日)、【2】左足の大腿四頭筋断裂(同9月/同102日)、【3】左足の大腿二頭筋断裂(22年4月/同77日)、【4】右足の大腿直筋損傷(23年2月/同64日)、【5】右足の大腿筋の違和感(同5月/同46日)、【6】右足の大腿直筋損傷(8月/同71日)、【7】右足の大腿筋の違和感(同12月/同23日)、そして今回が【8】右足の大腿直筋損傷(24年3月3日/全治35日間の見込み)である。「右足の大腿直筋」は、右利きのペドリがボールを蹴ったりジャンプしたり走ったりするために使う、サッカー選手が酷使しがちな部分だ。
4シーズンで、21-22が90日間、22-23が110日間、23-24が129日間で、計429日間がケガとの戦いで、欠場した試合は76試合に及ぶ(数字はすべて移籍情報サイト『トランスファーマルクト』による)。
こう見ると、すべてが太腿の筋肉系の負傷で、最初は左足で次に右足に移っており、再発が何度もあることがわかる。負傷箇所が治り切らず、弱くなっているのだろう、と推測されている。いわゆる、癖になっている状態だ。
病気でもケガでも再発は精神的に一番辛い。今度こそと万全を尽くしたのに「また……」。あの涙はケガの痛みではなく心の痛み、無力感からくるものだったのだろう。ペドリの体重はバルセロナに入って7キロ増えたとされる。筋肉を付けて負傷を回避する狙いだったが、結果は出ていない。
筋肉系のケガには無数の要因がある。
柔軟性の喪失、疲労蓄積、ウォーミングアップ不足からホルモンバランスの崩れ、睡眠不足、天候、体質などなど。だが、このペドリの件を「運が悪かった」とか「サッカーにケガはつきもの」という言葉で片付けるのはやはり抵抗がある。
というのも、ペドリの茨の道は、前にも書いたように、4年前バルセロナでレギュラーとしてフル出場した後、EURO2020と東京五輪でもフル回転した1カ月後ーー20-21シーズンになんと73試合に出た後ーーに始まったからだ。酷使はすべての監督の責任だが、特に東京五輪に連れて行く決断をした現代表監督ルイス・デ・ラ・フエンテは今頃、後悔しているのではないか。
「あれだけの努力と練習の後に再スタートするのは辛いが、無力感からのあの涙がすぐに喜びの涙に変わることを疑わないでほしい」とペドリはSNSを通じて発信している。早く元気な顔を見たいが、何より今度こそ最後になることを願っている。
文:木村浩嗣
木村浩嗣
編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。
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