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2024年のJリーグが開幕した。
2017年に川崎フロンターレが優勝し、その後、川崎と横浜F・マリノスがJ1リーグのタイトルを独占していたが、昨シーズンはヴィッセル神戸が初優勝を遂げた。
川崎と横浜FMは自分たちでボールを動かしてビルドアップする攻撃型のチームだった。
それに対して、神戸は高い位置からの守備でボールを奪ってショートカウンターで仕留める「カウンター・プレス」型だった。
神戸だけではない。昨シーズンは同じく「カウンター・プレス」を武器とするサンフレッチェ広島やロングカウンターを得意とする名古屋グランパスなどが台頭した。
これは、日本特有の現象ではない。ヨーロッパでもFCバルセロナの「ティキタカ」が過去のものとなり、その後は「カウンター・プレス」が台頭して現在に至っている。日本にも、その波が数年遅れで到達したと考えることもできるだろう。
そこで、今シーズンの最大の見どころは、日本でも「カウンタープレス」型が主流となっていくのか、それとも「ポゼッション」型が巻き返すのかという点になる。
J1開幕節では「カウンター・プレス」型の神戸と広島が完勝した。
とくに、新スタジアムで浦和レッズと対戦した広島はシャドーの位置に入った加藤陸次樹と大橋祐紀のともに新加入の2人が素晴らしいパフォーマンスを発揮。後半に入ると前線からのプレスでボールを奪う形を何度も作り、大橋がボールを奪うことで相手のファウルを誘発してPKも獲得した。このPKはピエロス・ソリティウが失敗したが、直後に早いタイミングでのクロスから大橋が自身2ゴール目を決めて勝利した。
神戸も、ハイプレスのスイッチ役だった武藤嘉紀が欠場しているが、それでも前線の大迫勇也ポストプレ−でチャンスを作り、佐々木大樹なども順調な成長ぶりを発揮。昇格組のジュビロ磐田に完勝した。
では、ポゼッション型の横浜FMや川崎の現状はどうなのか?
横浜FMはオーストラリアのスーパースター、ハリー・キューウェルが新監督に就任した。
横浜FMではアンジェ・ポステコグルー監督(現、トッテナム監督)が超攻撃的サッカーを定着させた。
ボールを持つ選手を次々と追い越して人数をかけてサイドから攻めて逆サイドが決めるのがパターンだった。また、FKやCKを獲得すると、相手の守備が整う前に仕掛けるアグレッシブな姿勢も特徴だった。
しかし、ポステコグルー監督退任後、同じオーストラリア人のケヴィン・マスカット監督が路線を継承したのだが、次第にアグレッシブさは薄れていき、最終的には攻撃は前線のブラジル人選手に依存するようになってしまった。
だが、セルティックでポステコグルー監督のアシスタントを務めていたキューウェル新監督はかつての姿を取り戻させているように見える。
喜田拓也をアンカーに置き、昨年までボランチとしてプレーしていた渡辺皓太をインサイドハーフの位置に上げたこともそうだが、ボールを持つ選手を多くの選手が追い越していく動きや、セットプレーの時に時間をかけないで再開するあたりがかつての姿を思い出させるし、相手がプレーを中断させたり、レフェリーがプレーをストップした時にテクニカル・エリアで怒りの表情を見せるあたりも、ポステコグルーを彷彿させる。
さて、かつての絶対王者の川崎は、6年間で4度の優勝を飾った当時に輝きを放ったパス・サッカーを復活させることができるのだろうか?
現状は必ずしも楽観できる状況ではない。
一つの目標としていたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のラウンド16では、中国の山東泰山を相手にアウェーで先勝しながら、ホームのセカンドレグで敗れて敗退。J1リーグ開幕節では湘南ベルマーレに先制ゴールを許して大苦戦。新主将の脇阪泰斗のスーパーミドルと相手GKのミスにつけ込んだエリソンのゴールでなんとか逆転勝利を手繰り寄せた。
山東戦セカンドレグでは、前半の途中から面白いようにパスがつながっていた。まるで、「最強」だった時代を思い起こさせるようにパスがうまく回ったのだ。だが、それが得点に結びつかなず、最終的には相手の個人能力の前に失点を重ねた。
山根視来と登里享平という両サイドバックが移籍し、センターバックも頼みのジェジエウが欠場中。守備ラインには大きな不安があるのだ。
山東戦でのその不安が的中してしまったものの、パス自体は回っていた。
だが、湘南戦ではパス回し自体がうまくいかなかった。
湘南は“川崎対策”を完璧にこなしていた。川崎のアンカー橘田健人にボールが渡ると、湘南のツートップのルキアンや鈴木章斗がしつこくチェック。さらに、インサイドハーフの脇阪や山本悠樹にボールが入った瞬間に、すぐに激しくチャージして川崎のパスを分断してきたのだ。
相手のストロングポイントを分析して対策を立て、それを選手たちが忠実に遂行するのがJリーグのサッカーなのだ。川崎のパス回しは、当然、Jリーグでは研究しつくされているから、簡単にそれを許してもらえないのだ。
ACLで対戦するアジアのチームは個人能力の高い選手は多いものの、戦術的な緻密さには欠ける。また、川崎との対戦経験がない(少ない)。だから、川崎としてはパスが回しやすいのだ。
では、Jリーグでも川崎が再びパス・サッカーで相手を圧倒する姿を見ることはできるのだろうか?
鬼木達監督は強気だ。山東戦敗戦後にも「今のスタイルは変えない」と断言したし、湘南戦の後にも「今のメンバーに期待している」と語った。
たしかに、昨年はかなり苦しんで順位的にも8位と低迷したものの、リーグ戦終盤には橘田、脇阪や瀬古樹などが成長して、奇麗なパス回しができるようになっていたし、絶対のキープ力で川崎の中盤を支える家長昭博も健在だ。
さらに新加入の山本も早くも川崎のサッカーに順応しており、素晴らしい動きを発揮しているし、同じく新加入の左サイドバック三浦颯太も攻撃参加でクレバーさを見せている。
ポジティブな点も多いのだ。試合を重ねていくことで川崎のパス・サッカーは復活できるはずだ。後は、不安を抱える最終ラインが安定すれば、川崎も優勝争いに加わってくるはずなのだが……。
湘南戦では19歳の高井幸大がセンターバックとして先発した。高さとスピード、クレバーさを兼ね備えた期待のDFなのだが、やはり経験不足。前半は消極的な守備でファウルも多かった。それでも、後半には見違えるようなプレーを見せてラインブレークして相手ボールを積極的にカットし、その潜在能力の高さを見せた。
「カウンター・プレス」型と「ポゼッション」型の競り合いが続くことによって、Jリーグのサッカーの水準はさらに上がっていくことだろう。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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