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チームで存在感を示す久保建英
ヨーロッパではいよいよチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグなどカップ戦のノックアウトステージが開幕した。ビッグクラブ同士の戦いは、間違いなく「世界最高峰」の戦いだ。
2月13日(日本時間14日)にはレアル・ソシエダードの久保建英がパリ・サンジェルマン(PSG)とのアウェー戦に出場。キリアン・エンバペの先制ゴールの場面では「マークをはずしてしまった」と批判も受けた久保だが、攻撃面ではチームを引っ張り、カットインからのシュートを打つなど輝きを放ってかなり高い評価を受けているようだ。
世界の注目を集める試合で力を発揮していけば、自身の評価をぐんぐん上げることができるだろう。
同時刻に行われたラツィオ対バイエルン・ミュンヘン戦では今シーズン苦しんでいる鎌田大地も終盤に出場したし、その他、ヨーロッパリーグでも、上田綺世(フェイエノールト)や堂安律(フライブルク)、守田英正(スポルティング)といった日本代表選手が出場機会を得た。また、カンファレンスリーグでは渡辺剛(ヘント)もフル出場を果たしている。
今後も、チャンピオンズリーグでは冨安健洋のアーセナルの試合もあるし、遠藤航のリバプールもヨーロッパリーグで優勝を狙う。今や、ヨーロッパのカップ戦に日本人選手たちが出場するのも当たり前の光景となったようだ。
久保がPSG戦で活躍できたのは、アジアカップに出場していた日本代表が準々決勝で敗退し、予定よりも早くクラブに戻れたおかげでもある。
もちろん、2月10日に行われたアジアカップの決勝戦に出場していても(開催地のカタールはヨーロッパに近いから)PSG戦には間に合ったかもしれない。だが、その場合には疲労を蓄積した状態だったろうし、クラブに戻っていきなりの本番では実際よりも苦しい状態だったろう。
日本代表の早期敗退によって、久保はクラブで2試合戦ってからPSG戦に出場することができたのだ。
多くの日本人選手がヨーロッパのカップ戦で経験を積むことはとてもポジティブなことだ。とすれば、長期的な視点で言えば、日本のサッカーにとってアジアカップで優勝するよりもずっと大事なことなのかもしれない。
そもそも、アジアカップが1月に開催されることが問題なのだ。
日本だけではない。韓国代表でも孫興民(ソン・フンミン)や李康仁(イ・ガンイン)など、主力選手の多くがヨーロッパのビッグクラブで活躍している。中東勢ではほとんどの選手が国内組ではあるが、それでもヨーロッパでプレーする選手は何人もいる。また、東南アジア勢はヨーロッパ生まれ、ヨーロッパ育ちで現在もヨーロッパで活躍している選手を代表に招集することで強化を進めている。
そのため、アジアカップが1月から2月にかけて開催されることによって、多くのアジア人選手がクラブから離れざるを得ないのだ。
アジア人選手がクラブを離れることは、ヨーロッパのクラブの監督にとっても大きな問題となる。2024年1月から2月にかけてはアフリカ・ネーションズカップも開かれていたから、何人もの選手がクラブを離れる場合もある。
リバプールではレギュラーポジションをつかみかけていた日本代表の遠藤と攻撃の主役であるエジプト代表のモハメド・サラーがチームを離脱した。そして、モハメド・サラーはネーションズカップで負傷を追ってしまう。
あるいは、スタッド・ランスは伊東純也と中村敬斗という両翼が日本代表に招集されてしまった。
もちろん、「すべての大会日程をヨーロッパの都合に合わせるべきだ」というのは一種の帝国主義ではあるのだが、実際問題としてアジアやアフリカを代表するような選手の多くがヨーロッパのクラブで活躍している現実を考えれば、やはり、大陸選手権はワールドカップやEUROと同じように、ヨーロッパのサッカーがシーズンオフに入る6月に行うのが望ましい。
それは、ヨーロッパのクラブのためだけではない。
代表選手たちがクラブのことを忘れて代表活動に集中できるようにしなければ、アジアカップやアフリカ・ネーションズカップで彼らが最高のパフォーマンスを発揮することは難しいからだ。
ただし、アジアカップは今後も中東諸国でしか開催できそうもないし、そうなると気候的な理由で6月開催は不可能になる。アフリカの多くの国でも、やはり気象条件を考えると6月開催は難しいのかもしれない。
アジアカップは、2011年大会以降、4大会のうち3大会が中東開催となったし(2011年大会がカタール、2019年大会がUAE、そして2023年大会がカタール)、2027年大会もサウジアラビアでの開催が決まっている。そして、2015年のオーストラリア大会も含めて、すべての大会が1月から2月にかけて開催された。
2011年大会の頃には、まだヨーロッパのクラブで活躍する日本人選手は少数派だった(長友佑都がイタリアのチェゼーナに渡ったのはアジアカップ終了直後のことだった)。その後、ヨーロッパに渡る選手は増加し、今ではJリーグ組は少数派となっている。
つまり、ヨーロッパの日程とのバッティングの問題は、今年の大会が初めてというわけではないのだ。
ただし、前回大会までは、日本側にとっての問題点は「ヨーロッパのシーズン中にクラブを離れることによって、選手がクラブでのポジションを失ってしまうのではないか」という点にあった。クラブで出場機会が減ったら代表強化にも悪影響を及ぼすからだ。
ところが、今年のアジアカップに招集された選手たちには「ポジションを失うのではないか」という心配はほぼほぼなかったようだ。
どのクラブの監督も、日本代表が準々決勝で敗退して日本人選手が予想よりも早くクラブに復帰できることを歓迎する声明を出している。イングランド・プレミアリーグで首位を走るリバプールのユルゲン・クロップ監督なども、遠藤の復帰を大歓迎するような発言を行っているのだ。
数多くの日本人選手がヨーロッパのカップ戦のノックアウトステージに出場している光景。そして、代表活動でクラブから離れてもポジション争いについて心配しなくてもいいようになったこと……。
日本人選手の活躍を見ながら、僕は日本人選手の立ち位置の変化を実感した。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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