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サッカー フットサル コラム 2023年12月28日

攻撃力で優勝を勝ち取った鹿島のジュニアユース 育ってきた若手を中心に長期的視野で強化すべきだ

後藤健生コラム by 後藤 健生
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高円宮杯U-15選手権大会決勝

高円宮杯U-15選手権大会決勝

12月27日に東京・味の素フィールド西が丘で行われた高円宮杯U-15選手権大会決勝戦で、鹿島アントラーズ・ジュニアユースが延長戦の末に大宮アルディージャU15を破って優勝を決めた。

準決勝ではサガン鳥栖U-15を相手に7対0と圧勝していた鹿島だったが、決勝戦では大宮がしっかりと対策を講じ、しっかりとした守備から縦へのドリブルを使うカウンターで対抗。鹿島が先行したものの、大宮が2度とも追いついて延長戦にもつれ込んだ。

しかし、鹿島は延長前半にCKからのこぼれ球を平島大悟が強烈なシュートを突き刺して勝負を決めた。

大接戦となった決勝戦ではあったが、シュート数では大宮の8本に対して鹿島が19本と攻撃力では間違いなく鹿島が上回った。「鹿島の攻撃的サッカーが輝いた大会」と言っていいだろう。

テクニックのある選手を揃えてパスをつなぎ、自分たちでボールを動かして相手を崩していく。その中心にいるのが小笠原央だった。鹿島のレジェンド小笠原満男さん(現、鹿島ユース監督)の息子さんである。

小笠原満男選手は遠くのスペースを見つけて正確なパスを送るのが得意な選手だった。小笠原央選手は中学2年生の14歳でまだ159センチと小柄で、パス能力も高いが、キレキレのドリブルが特徴。キックフェイントをかけて切り返したり、ストップしてターンする動きで相手DFをかわしていくことができる。

いわば、小笠原満男選手のパス能力に本山雅志選手のドリブルをプラスしたような選手だ。切り返しやターンで相手をかわすだけでなく、今後、スピードで縦に突破するような突破力を身に着けたら素晴らしいドリブラーとなっていくのではないだろうか。

小笠原がトップ下で自由に動き、前線のシュートがうまい平島や高木瑛人などを使った攻撃力は非常に高いレベルにあった。

準決勝では7ゴールを決めたが、先制点は相手ゴール前での小笠原の個人技。2点目以降は平島、高木などが抜け出してのコントロールショットと得点パターンも豊富だった。

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【ハイライト】鹿島アントラーズジュニアユース vs. 大宮アルディージャU15|高円宮杯 JFA 第35回全日本U-15サッカー選手権大会 決勝

しかも、こうしたテクニシャンタイプの選手たちが守備でもしっかりと走り切るあたりは、現代サッカーらしいところだ。

また、ボランチの大貫琉偉も中盤でのボール奪取など守備力が高いのはもちろん、サイドに出てドリブル突破も見せるなど、マルチな能力を発揮していた。

いずれにしても、それぞれが特徴のある素晴らしいタレントを揃えたチームだった。

一つ上のU-18年代の鹿島アントラーズユースは、今シーズンはプリンスリーグ関東で戦っていたが、18試合で58得点という数字で優勝。プレミアリーグへの昇格を争う「プレミアリーグ・プレーオフ」でも瀬戸内高校(広島)に5対1、ベガルタ仙台ユースに7対0と圧勝して、来シーズンのプレミアリーグ入りを決めている。馬目隼之介、徳田誉という強力FWを擁する、こちらも非常に攻撃力の高いチームだ。

どうやら、鹿島アントラーズは育成部門が順調に機能し始めて若いタレントが揃ってきているようだ。

鹿島アントラーズは1993年にJリーグが開幕した時の創設メンバー、いわゆる「オリジナル・テン」の一つ。日本リーグ時代は2部で戦っていた住友金属を母体とした鹿島は、専用スタジアム(県立カシマサッカースタジアム)の建設、そしてブラジルのスーパースター、ジーコとの契約を武器にJリーグ入りを果たした。

そして、Jリーグ初年度のセカンドステージで優勝するなどJリーグ開幕後は数々のタイトルを獲得。「勝負にこだわる」ジーコの精神を受け継いでタイトルを取り続け、「常勝軍団」と呼ばれるようになった。

だが、2016年のJリーグ優勝および天皇杯全日本選手権優勝、2018年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝を最後にタイトルから遠ざかってしまっているのが現状だ。

Jリーグ初年度は日本人の宮本征勝監督の下で戦ったものの、1994年にジーコの実兄であるエドゥー監督が就任。その後もトニーニョ・セレーゾやオズワルド・オリヴェイラなど一貫してブラジル監督に指導を仰ぎ続けていた。

しかし、この数年間、鹿島は短期間に監督を交代させ続けている。

石井正忠や大岩剛、相馬直樹、岩政大樹などの日本人監督もそれなりにチームを強化させ、石井監督はJ1リーグのタイトルももたらしている。2023年シーズンも岩政監督の下で、好調時には非常に内容のある試合を展開。ようやく軌道に乗り始めたかに見えたが、シーズン終了と同時に岩政監督も退任。来シーズンは、セルビア人でJリーグでも実績のあるランコ・ポポヴィッチが監督に就任することが決まっている。

ブラジル陣路線を続けていたクラブは2022年に初のヨーロッパ人監督としてスイスのレネ・ヴァイラー監督を招聘したものの失敗したが、今回はセルビア人のポポヴィッチを選択したのだ。

監督選びは、まさに「迷走中」といっていい状態。タイトルを取れないとすぐに監督が退任されてしまうというのが最近の鹿島なのだ。

監督が頻繁に交代することは、クラブにとってけっして得策ではない。「常勝軍団」という言葉にクラブ自身が縛られすぎてしまっているのではないだろうか?

本当に「常勝軍団」を復活させたいのであれば、長期的強化方針を策定して、それに沿った監督を選び、若い選手を育てていくべきなのだ。1年や2年タイトルが取れなくても、それは将来の「常勝軍団」復活のための準備期間と考えるべきだろう。

とくに、せっかく育成組織が機能し始めているのだから、そこで育った若い選手たちを大切に長期的視野の下で育成していくことが必要だろう。それくらいの気持ちで取り組んでもらいたいものだ。

今年11月のワールドカップ予選で、鹿島からは22歳の佐野海舟が代表に招集され、ミャンマー戦で代表デビューを果たした。米子北高校を卒業した佐野が最初に入団したのがJ2リーグのFC町田ゼルビアであり、当時、同チームの監督を務めていたのがランコ・ポポヴィッチで、佐野はポポヴィッチ監督の下で才能を伸ばして鹿島移籍につながった。

来シーズンはそのポポヴィッチ監督が鹿島にやって来るので、佐野としてもさらに才能を伸ばせるのではないか。そして、ポポヴィッチ監督が若い選手の才能を見出だす能力に長けているのだとすれば、育成部門から育ってきた若い選手を中心に長期的な視野でチーム作りを任せるべきだろう。

鹿島アントラーズは、目先のタイトルを取ることより長期的に「常勝軍団」復活を目指すべきだろう。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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