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サッカー フットサル コラム 2023年12月25日

Fリーグのファイナルシーズンが開幕 “絶対王者”名古屋苦戦の原因を考える

後藤健生コラム by 後藤 健生
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フットサルの全国リーグ「Fリーグ」はシーズンの最後を飾る「ファイナルシーズン」が開幕した。

12チームで争われているディビジョン1の最終順位を決めるための戦いである。12チームをレギュラーシーズンの上位6チームと下位6チームに分け、それぞれが1回戦総当たりのミニリーグを行い、レギュラーシーズンとの合計勝点で優勝を争う。

短期決戦で強豪同士がぶつかり合う、まさに「ファイナル」である。

昨シーズンまでは、レギュラーシーズンの1位と2位のチームが戦うプレーオフが行われていたのだが、今シーズンから新たに「ファイナルシーズン」という形に移行したのだ。強豪同士の対戦を増やすのと、2チームだけでなく全チームすべてが最後まで試合を行えるというメリットがあるのだろう。

そんなレギュレーションの変更も注目だが、Fリーグのさらに大きな“異変”といえば、「絶対王者」名古屋オーシャンズが絶体絶命の危機に立たされていることだ。

2007年に始まり、今年で17シーズン目を迎える「Fリーグ」。これまでの16シーズンのうち15回も優勝したのが、唯一のプロチームとして君臨する名古屋オーシャンズだった。

だが、今シーズンはレギュラーシーズンの22試合が終わった時点で、名古屋は首位のペスカドーラ町田に勝点4の差を付けられて2位に甘んじたのだ。

「4ポイントの差」ということは、町田が取りこぼさなければ、2024年1月14日の最終日の直接対決を迎える前に町田の優勝が決まってしまうということになる。

しかも、開幕したファイナルシーズン「町田ラウンド」の初戦で、名古屋はバサジィ大分に3対4で敗れて、さらに一層窮地に追い込まれてしまった。ただ、町田の方も1戦目こそシュライカー大阪相手に2対1で勝利したものの、2戦目では名古屋を破って勢いに乗った大分に敗れて、町田、名古屋ともに1勝1敗で「町田ラウンド」を終了。

「勝点4の差で町田がリード」という状況は変わっていない。

ファイナルシーズンは、年が明けて2024年の1月6日から8日にかけて名古屋の金城ふ頭アリーナで各チームが2試合を戦い、1月13、14の両日、東京の墨田区総合体育館で最終戦が行われる。

名古屋ラウンドでの2試合で町田が連勝すれば、その時点で優勝が決まってしまうのだが、町田ラウンドでの激戦を見るとさらに波乱がありそうな気がする。

とにかく、ファイナルシーズン上位リーグは激しい試合の連続だった。

僕は、フットサル専門ではないし、Fリーグの試合をずっとフォローしているわけではない。だから、名古屋が勝点を伸ばせなかった理由とか町田の好調の原因などについて興味のある方は、ぜひフットサル専門メディアの記事をチェックしていただきたい。

だが、ファイナルシーズンの戦いを見ていて感じたのは、フットサルというスポーツのプレー強度がこれまで以上に高くなっているということだ。そして、そんな日本のフットサルの質的な変化が今シーズンの名古屋の“低迷”の原因になっているのではないかと思ったのだ。

というのは、サッカーのJリーグでも同じような現象が起こっているからだ。

J1リーグの覇権は、最近の6年間、川崎フロンターレと横浜F・マリノスという神奈川県の2つのチームが握り続けていた。

やり方にはかなりの違いがあるが、どちらも自分たちでボールを動かして相手を崩す、テクニカルで攻撃志向の強いチームだった。

だが、今シーズンは川崎は8位と低迷し、なんとか天皇杯全日本選手権のタイトルを確保するにとどまったし、横浜FMはJ1リーグでは準優勝したものの、シーズン終盤は調子を崩して最終節を待たずにヴィッセル神戸の優勝決定を許し、一つもタイトルを獲得することができなかった。

そして、ヴィッセル神戸は「堅守からショートカウンター」という戦い方を徹底して初優勝を飾った。

神戸だけではない。名古屋グランパスやサンフレッチェ広島などもカウンタープレスを武器に戦って上位の食い込んでいるのだ。あるいは、J1昇格プレーオフを制して16シーズンぶりのJ1昇格を決めた東京ヴェルディなども、やはりカウンタープレスを武器としている。

こうした変化はヨーロッパでも先行して起こっていた。

今から10年ほど前にはバルセロナの「ティキタカ」が一世を風靡した時代があったが、ここ数年でヨーロッパのサッカーはすっかりカウンタープレスの時代に入っている。つまり、現象面だけを見れば「日本のサッカーもヨーロッパの潮流に乗っている」かのように見えるのだ。

そして、ファイナルシーズンの戦いを見ていて、フットサルでも同じように堅い守備をベースに相手陣内でボールを奪って一気に攻める、カウンタープレスに近いやり方が広がってきているように感じたのだ。

たとえば、ファイナルシーズンの初戦。立川アスレティックFCがバルドラール浦安に逆転勝利した試合。

前半から立川がボールを持つ時間は長かったが、浦安がしっかり相手をマークして、「はめて」しまった。そのため、立川はなかなか可能性のあるシュートを撃てない状態が続いた。

ところが、後半に入ると、浦安がボールを持った瞬間に立川が前半以上に速いプレスをかけてボールを奪い、また、奪ったボールを素早く展開して浦安の守備を攻略して、後半だけで5ゴールを奪って5対2で勝利したのだ。

プレスの掛け合いで前半は浦安が優位に立ち、後半は逆に浦安がボールを持った瞬間を狙った立川の守備からのスピードのあるカウンタープレスが効を奏した。そんな試合だった。

あるいは、ペスカドーラ町田とシュライカー大阪の試合では、前半は町田が自陣に入ったあたりに守備網を敷いて大阪の攻撃を封じて2点を先行。後半は2点のリードをアドバンテージにして、試合をコントロールしながらそのまま勝利するかと思われたが、30分を過ぎると疲れが出た町田の選手の足が止まり始め、大阪が守備網の裏のスペースを利用して1点を返し、さらに終盤に猛攻をかけ、町田が辛くも逃げ切った。

いずれの試合も、パス回しやドリブルのテクニックというよりは、プレッシングの強度や展開の速さが勝負を分けたように見えた。

今でも、名古屋オーシャンズの選手たちのテクニックやパスのダイナミックさは健在なのだが、他のチームの守備強度が上がったため、かつてのように名古屋がパスを回すだけではゴールに直結しなくなった。それが、名古屋苦戦の原因なのかもしれない。

つまり、J1リーグでカウンタープレスが発展したために川崎フロンターレが簡単には勝てなくなったのと、状況が似ているのではないかと思われるのである。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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