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平田ネト・アントニオ・マサノリが強豪アルゼンチン相手に同点弾を決め、家族へゴールパフ ォーマンス
2024年にウズベキスタンで開催されるフットサル・ワールドカップを目指すフットサル日本代表が、12月14日に東京・大田区総合体育館で行われた親善試合でアルゼンチンと引き分けた。
アルゼンチンは、2016年コロンビア大会でワールドカップを初制覇。前回の2021年リトアニア大会でも準優勝という強豪であり、この引き分けは日本にとって明るい材料であることは間違いない。
2021年の前回大会では決勝トーナメントに進出したものの、ワールドカップで最多、5度の優勝経験のあるブラジルに敗れてラウンド16敗退となった日本。この大会ではグループリーグのスペイン戦、そしてラウンド16でのブラジル戦と強豪相手の試合でも食い下がって善戦したものの、最後は相手のスケールの大きなプレーに揺さぶられて惜敗した。
同大会ではブルーノ・ガルシア監督の下でアシスタント・コーチを務め、2度の「惜敗」を間近で見ていた木暮賢一郎現代表監督は「日本がラウンド16以上に行くには、自分たちでボールを持つ時間を長くする必要がある」として、強豪相手にも守りを固めるのではなく、日本が攻める形を多く作ることを目指し、積極的に若い選手を招集しながら強化を進めてきた。
たとえば、昨年の9月にブラジル代表を迎えて行われた親善試合でも日本は真っ向勝負を挑んで、2試合とも1対5という同じスコアで連敗を喫した。強豪相手にも攻めの姿勢を見せたところは評価できたが、同時に力の差を見せつけられた試合だった。
ブラジル戦直後のアジアカップで優勝した日本代表は、2023年に入ってからは海外遠征を繰り返して経験を強化を進め、11月にはワールドカップ開催国であるウズベキスタンに遠征して同国代表に2連勝。今回のアルゼンチン戦は国内のフットサル・ファンにその成果を見せるための試合だった。
そして、アルゼンチンとの第1戦では試合開始早々の3分53秒にCKから失点したものの、その後は互角の展開を繰り広げ、残りもわずかになった38分17秒に吉川智貴のパスを受けた平田ネト・アントニオ・マサノリが同点ゴールを決めて引き分けに持ち込んだ。
試合終盤、平田ネト・アントニオ・マサノリがGKを巧みにかわしてシュートを決めた
内容としてもほぼ互角の展開での引き分け……。アルゼンチン代表のマティアス・ルクイス監督も「引き分けは試合内容を反映した妥当な結果」と評した。
真っ向勝負を試みて一蹴された昨年のブラジル戦と比較すれば、日本代表の強化が進んでいることは明らかだった。
キックオフ直後は日本がボールを握ってアルゼンチン陣内でのプレーが続いた。
先発メンバーはピヴォ(トップ)に清水和也を置き、アラ(サイド)に金澤空と堤優太、フィクソ(DF)に吉川という布陣。これは、直近のウズベキスタン遠征でも組んできたセットだったのでパス回しは非常にスムースだった。
ただ、その後、平田をピヴォに置いた2番目のセットに切り替わると、パスに乱れが生じる。平田と内田隼太はスペインのクラブに所属しているため、ウズベキスタン遠征には参加できなかったため、このセットの最初のプレーではパス回しに乱れが生じてしまったのだ。
そして、「丁寧につなごう」という意識が強くなったためパス・スピードが遅くなったところを狙われ、自陣でボールを奪われる場面が続き、そんな中で与えたCKからあっさりと失点してしまった。コンステンティノ・バポラキが早いタイミングで入れたCKに守備が対応できず、パブロ・タボルダにあっさりと頭で決められてしまった。
コーナーキックから14番パブロ・タボルダがヘディングで合わせ、アルゼンチンが先制
その後も、アルゼンチン優勢で試合が進んだものの、10分を超えるとアルゼンチンにもミスが生じ始めて日本のポゼッションの時間も長くなった。開始直後にはパス回しがうまくいかなかった2番目のセットも、時間とともにスムースに機能するようになっていった。
しかし、日本はボールは握っていたものの、アルゼンチンの堅い守りの前にセットプレーを除いてほとんど決定機を作ることはできなかった。
そして、後半に入っても基本的には同じような展開が続いた。
こうした展開になったのは、もちろん日本の選手たちの組織的で献身的な守備のおかげだったし、木暮監督の下で培ってきたボールを支配する戦い方が身に付いてきていたからだった。
また、ピヴォとして起用された清水と平田も奮起して、前線でしっかりとボールを収めて攻撃の時間を作り、同時にプレスバックして守備でも奮闘した。
アルゼンチン相手にこれだけの試合ができたことには自信を持っていい。
だが、同時にこういう試合展開になったのは、アルゼンチン自身が受け身の試合を選択したからでもある。
アルゼンチンは約30時間もかかる長距離移動を経て来日したばかりだった。従って、アルゼンチンの選手たちのコンディションが良いわけはない。
それを自覚していたアルゼンチンは、エネルギーを使わずに結果を残そうとしたのだ。
しかも、アルゼンチンは前半の早い時間にセットプレーから得点した。日本はパス回しはうまいが、しっかり守れば無失点で切り抜けられる。それが、彼らの判断だったのだ。
「負けるわけにはいかない」 選手たちに指示を送るアルゼンチン代表マティアス・ ルクイス監督
無理はせずに、ゲームをコントロールしながら1対0のまま試合を終わらせる(チャンスがあれば2点目を奪って勝負を決める)。それが、1点をリードしてからの彼らのプランだった。
そして、実際にアルゼンチンはプランを実行して、「勝利まであと1分」という時間までリードを保った。
そんな試合展開だったから、アルゼンチンの選手たちは決定的なビッグプレーをしたわけではない。だが、正確なパスをつないでゲームをコントロールしたのは見事だった。
日本のプレスを受けてボールロストの危険がある場面では、ロングボールを蹴って「ボールを捨てる」こともあったが、それ以外ではアンフォースドエラーはほとんどなかった。
日本にはパスが流れてラインを割ったり、相手にカットされるエラーがかなりあったが、アルゼンチンはそういうミスをほとんどしていない。
また、アルゼンチンではピヴォとして3人の選手がプレーしたが、いずれもしっかりとボールを収めて試合の流れを作っていた。自ら突破したり、強烈なシュートを放ったりと言った派手なプレーはなかったが、その技術の高さは存分に発揮。
この試合は引き分けに終わったものの、日本との実力差は明白なものだった。
試合後は「引き分けは妥当」と冷静に語ったルクイス監督だったが、日本に同点ゴールを許した直後にはGKを引き揚げて5人のフィールドプレーヤーを並べるパワープレーを仕掛けてきた。
やはり、彼らにとって「格下」の日本を相手に引き分けに終わることは許されないことだったのだろう。
両チームは、12月17日には北海道の帯広で再び戦う。アルゼンチンも第1戦よりはコンディションが上がることは間違いない。そして、第1戦が引き分けに終わっただけに、次は日本相手に完勝を目指してくるはずだ。
「本気のアルゼンチン」相手にも、しっかりとパスを回して攻撃の形を作ることができるのか……。フットサル日本代表の真価が試される。
試合後、木暮賢一郎監督を中心に円陣を組み、第2戦へと向かうフットサル日本代表
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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