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その挑戦で、明日を創れ。日本一を懸けた埼スタファイナル!青森山田高校×サンフレッチェ広島ユースマッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグファイナル】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史青森山田高校のCBコンビ・山本虎(4番)と小泉佳絃(5番)
2年ぶり4度目のプレミアリーグEAST王者に輝いたのは青森山田高校。10得点無失点という圧巻の数字で開幕3連勝を飾ると、前半戦はわずか1敗で首位ターン。第14節の柏レイソルU-18戦で10試合ぶりの黒星を喫するも、翌節の流通経済大柏高校戦は2点のビハインドから逆転勝利を収め、連敗を回避する。
第17節では川崎フロンターレU-18との首位攻防戦に2-1で競り勝ったものの、同じく上位対決となった第18節の尚志高校戦は0-2で敗戦。第21節の昌平高校戦も2点を先行されながら、90分からの連続ゴールで何とか追い付くと、最終節のFC東京U-18戦は得意のセットプレーからの2得点で勝ち切り、EAST制覇を全員で喜んだ。
2年ぶり6度目のプレミアリーグWEST優勝を手繰り寄せたのはサンフレッチェ広島ユース。開幕戦はいきなり名古屋グランパスU-18にホームで2-5と衝撃の敗戦を突き付けられ、前半戦は6勝2分け3敗と首位の静岡学園と6ポイント差の3位で折り返す。
ただ、後半戦で負けたのは1試合のみ。第15節のヴィッセル神戸U-18戦は、黒木一心が後半アディショナルタイムに挙げたゴールで劇的勝利。第19節のサガン鳥栖U-18戦も0-2の苦境から、4点を奪い返しての逆転勝ち。最終節の神村学園高校戦は、2点を先制しながら同点に追い付かれ、そのままのスコアだと神戸U-18に覇権が移る状況の中で、85分に1年生の小林志紋が決勝点。粘り強くWEST制覇を達成した。
日本一を巡って、埼玉スタジアム2002で両雄が激突するプレミアリーグファイナル。今回は試合のカギを握ると予想する3つのポイントをご紹介したい。
1つ目のポイントは、【U-17W杯コンビ VS プレミア屈指のCBコンビ!】だ。
広島ユースでU-17W杯の舞台を経験してきたのは、ストライカーの井上愛簾と司令塔の中島洋太朗。ともに先発での起用も多く、世界のレベルをその肌で体感してきた。ただ、今シーズンの開幕時を振り返れば、井上の主戦場はセカンドチームが臨むプリンスリーグ中国。そこでのパフォーマンスが認められ、プレミアでの途中出場を繰り返していく中で、後半戦は1トップに定着し、シーズンでは8ゴールをマーク。エリア内での動き出しと得点感覚で勝負する、実にストライカーらしい逸材が、飛躍の1年を日本一で締めくくれるか。
一方の中島も前半戦は定位置を掴み切れず、リーグ戦で初めてのスタメンは第12節の名古屋U-18戦。とはいえ、以降の活躍は目覚ましく、結果的に6ゴール5アシストときっちり個人の結果も残してみせた。U-17日本代表のチームメイトからも高く評価されるサッカーIQの高さを武器に、広い視野と正確な技術から急所をえぐるパスは世代屈指。ファイナルでもこの男の“演出力”は要注目だ。
このリーグを定点観測している方なら、『プレミア屈指のCBコンビ』に青森山田の小泉佳絃と山本虎を推挙することに異論の余地はないだろう。190センチのサイズを誇る小泉は、チームの絶対的な武器として知られるセットプレーのターゲット役としても機能。今季のリーグ戦初ゴールは第11節と遅かったが、最終的には5得点を叩き出している。昨年以上に逞しさも増したハイタワーは、攻守両面でチームに欠かせない。
そして、青森山田をしなやかに束ねているのがキャプテンの山本だ。入学してからの2年間はケガが多かったが、今季はプレミア全試合にスタメン出場とまさにフル稼働。「試合や練習でも自分がミスしたら失点するぐらいの気持ちでやっている」と、確かな覚悟を持って1年間を戦い抜いてきた。さらにリーグ戦で重ねた7ゴールは、ストライカーの米谷壮史が記録した15ゴールに次ぐ数字。青森山田のセットプレー時には、小泉と山本から目が離せない。
2つ目のポイントには、【タイプの違う「6番のキーマン」!】を挙げたいと思う。
青森山田の6番を背負うのは菅澤凱。山本同様に今季のプレミア全試合でスタメンとしてピッチに送り出されたが、その大半は今年に入って挑戦した左サイドバック。確固たる決意を携えて「日本一の左サイドバックを目指す」と新たなポジションと向き合ってきたが、終盤戦は谷川勇獅の負傷離脱もあって、本職のボランチでのプレー機会が巡ってきた。
最終ラインの山本、中盤の芝田玲と個性的なリーダーを擁するチームの中で、その2人に対しても強気に物を言える菅澤も、間違いなくリーグ制覇を逞しく支えたリーダーの1人。どのポジションで登場するとしても、この男の存在は2023年の青森山田にとって必要不可欠だ。
広島ユースの6番はキャプテンを務める石原未蘭。今シーズンのプレミアは全22試合、1980分フル出場を達成。これはEAST、WESTを見渡してもフィールドプレーヤーではわずかに5人しかいない偉業である。
昨季は左サイドバックを任されていたが、今季の主戦場は右サイドバック。ビルドアップ時はほとんどボランチの位置に入るようなスタイルへのチャレンジにも、「1人1人のやることが去年より多いので、そこは楽しいですね」と言い切る姿勢も頼もしい。ちなみに『未蘭=みらん』という名前の由来は、もちろんサッカー好きの父がACミランから取ったという情報も付け加えておこう。
3つ目のポイントには、【ゴールを生み出す「10番対決」!】を推す。
広島ユース伝統の10番を託されたのは中川育。この人もリーグ戦全22試合でスタメンに指名され、12得点6アシストを記録。実にチーム総得点の4割近くに絡むなど、WEST最多得点を誇る強力攻撃陣を堂々と牽引してきた。
最大のストロングポイントは、左サイドから縦にも中にも勝負できる躍動感あふれるドリブル。その武器をしっかりと得点に結び付けられるあたりに、非凡な才能が滲む。「今年は“自分たちの学年”ということもあって、自分がやらなければいけないということは自覚しています」。埼スタが舞台でも、紫の10番は華麗にピッチを舞うに違いない。
青森山田の絶対的な10番は芝田玲だ。山本、菅澤同様にプレミア全22試合に先発で登場し、4得点10アシスト。その正確なキック精度からセットプレーのキッカーを担当しており、重ねた二桁のアシストは大いに評価されるべき数字だろう。
「自分は思ったことが全部口に出てしまうんです(笑)」とは本人だが、この男の周囲に熱量を波及させる能力は、やはり常勝軍団のリーダーを担うにふさわしい代物。中学時代から厳しい環境を求めて青森山田へと身を投じた10番が、埼スタの芝生の上で磨き続けた右足を美しくしならせる。
22試合を戦い抜いた両雄の、日本一を懸けたエクストラマッチ。予測不能。激戦必至。とにかく高校年代最高峰の90分間を、純粋に楽しみたい。
サンフレッチェ広島ユース・石原未蘭
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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