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必要なのは勝利だけ!両雄が逆転優勝に挑む等々力決戦!川崎フロンターレU-18×尚志高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第22節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史川崎フロンターレU-18・江原叡志
昨シーズンのプレミアリーグEAST王者、川崎フロンターレU-18は水際で連覇を狙う優勝争いに踏みとどまった。負ければその時点でタイトルの可能性が潰える状況で臨んだ、前節の柏レイソルU-18戦。4連勝と絶好調でアウェイに乗り込んできた相手との拮抗した好ゲームは、62分に高橋宗杜が挙げた先制ゴールがそのまま決勝点に。1-0で勝利を収める。
4年ぶりにプレミアの舞台へ帰ってきた尚志高校は、さらに水際で初戴冠を目指す優勝争いに踏みとどまった。川崎U-18同様に負ければ脱落というシビアなホームゲームの相手は、残留争いに巻き込まれている横浜F・マリノスユース。3度先行し、3度追い付かれる展開の中、90+2分に途中出場の桜松駿が決勝ゴールを叩き込み、4-3で劇的勝利を飾る。
この勝利で川崎U-18と尚志はともに勝点を46まで伸ばす。20節までに勝点47を稼ぎ出して首位を走っていた青森山田高校は、21節の昌平高校戦に勝てば2年ぶりの優勝が決まっていたが、結果は2-2のドロー。勝点は48にとどまったことで、覇権の行方は最終節へと持ち越された。
運命のリーグ最終節。首位に立つ青森山田に用意されたのは、FC東京U-18とのアウェイゲーム。そして、等々力陸上競技場では2位の川崎U-18と3位の尚志が、直接対決に逆転優勝を懸けることとなった。
改めて優勝条件をまとめておきたい。まず、青森山田(勝点48、得失点差+27)はFC東京U-18戦に勝利すれば、他会場に関係なく優勝が決まる。青森山田が引き分けた場合、川崎U-18(勝点46、得失点差+41)は勝利で優勝、尚志(勝点46、得失点差+25)は得失点差と総得点の関係で、3点差以上の勝利を収めれば優勝に手が届く。
青森山田が負けた場合は、川崎U-18と尚志の試合で勝った方が優勝。なお、等々力のゲームがドローで終わった場合は、青森山田がタイトルを獲得する。つまりは川崎U-18と尚志のどちらも、勝利する以外に歓喜を味わう方法はないということだ。
この重要な一戦に挑むホームチームのキーマンには、江原叡志を挙げたい。昨シーズンのプレミアリーグは全22試合に加えて、ファイナルにも右サイドバックでスタメン出場。さらに今シーズンもここまでの21試合すべてに先発で登場しており、実に“プレミア”と名の付くコンペティションには44試合連続でスタメンに指名され続けているのだ。
参考にしている選手はマンチェスター・シティのカイル・ウォーカーだと言うが、その理由が振るっている。「三笘(薫)選手にみんなで話を聞いた時に『カイル・ウォーカー選手が一番嫌な選手だった』と言っていて、カイル・ウォーカーを超えられれば、三笘さんも止められると思うので、そこを目指してやっていきたいと思います」。この夏にチームの練習を訪れたアカデミーのレジェンドの話を聞くだけではなく、その先を見据える想いを抱くような言葉が頼もしい。
尚志の左サイドにはプレミア屈指のドリブラー、安齋悠人が控えている。右サイドバックの江原にとってマッチアップは不可避。「自分はどっちかと言うとディフェンスが好き」と言い切るように守備には絶対の自信を有しているだけに、この1対1に負けるわけにはいかない。“45試合目”の江原が披露する安定感あふれるパフォーマンスには、この試合でも大いに注目したい。
川崎U-18の攻撃陣でフィーチャーしたいのは、EAST得点ランキングトップの17ゴールをマークしている岡崎寅太郎だ。ここ2シーズンで奪った通算25得点は、プレミアリーグ全選手の中で最多の数字。常にゴールを意識したプレーは、相手ディフェンダーを悩ませ続けてきた。
振り返ってみれば昨シーズンのファイナルでも、今シーズンの開幕戦でも、岡崎はゴールネットを揺らしている。節目となるゲームでの勝負強さも、このストライカーの特徴。「チームを勝たせる点が自分にとっては一番価値の大きなもの。勝ちに繋がるようなゴールを自分が獲れたらいい」。等々力のスタンドを沸かせる9番のゴールが、チームが期す逆転優勝には間違いなく必要不可欠だ。
尚志ではやはり安齋悠人の存在を語り落とすわけにはいかない。U-19日本代表にも選出されている世代有数のスピードスターが繰り出す、その推進力あふれるドリブルの威力は、プレミアリーグ全体を見ても指折りのレベル。首位攻防戦となった第18節の青森山田戦では、その鋭いドリブルから圧巻の1ゴール1アシストを記録して、快勝の主役を堂々とさらう。
前所属は福島ユナイテッドFC U-15。チームの中では数少ない福島出身者でもあり、自身も「地元の人に応援される選手になりたい」と語っている。逆転でのプレミア制覇を狙う尚志において、地元・福島を愛するこの7番の圧倒的な突破力はチームに大きな勇気を与えるはずだ。
そして、守備のキーマンにはキャプテンの渡邉優空を推す。今季の尚志は高さと強さを合わせ持つ高瀬大也と、正確なキックに定評のあるレフティの市川和弥で組むセンターバックコンビが鉄板。190センチの体躯を誇る渡邉は、試合終盤に3バックに移行して逃げ切りを図る時の“クローザー”起用や、時には点が欲しい時のフォワード起用が主だった。
だが、リーグも終盤戦に差し掛かったタイミングで高瀬が負傷離脱。一番重要な局面で渡邉にスタメン出場の機会が巡ってきた。「自分の特徴は試合に出ていない時でも声を出したり、チームを鼓舞する、雰囲気を上げるという役割もあると思っている」と話していたキャプテンにとって、練習から積み重ねてきた努力の成果を披露するには最高の舞台。川崎U‐18の強力攻撃陣を抑え切るために、渡邉がリーダーシップと屈強な守備力を発揮することはマストの条件。それはそのまま勝敗に直結する、このゲームの大きなポイントだ。
泣いても、笑っても、レギュラーシーズンはこれがラストゲーム。優勝ボードを掲げられるか否か、さらに埼玉スタジアム2002で行われる“もう1試合”を戦えるか否かを懸けた90分間からは、既に激闘の予感しか漂ってこない。
尚志高校・安齋悠人
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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