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【両サイドを制圧せよ!日本の翼・吉永夢希と柴田翔太郎がバンドンで羽ばたく! FIFA U-17ワールドカップ インドネシア2023 日本×セネガルマッチプレビュー】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史吉永夢希選手
痛恨の敗戦となってしまった。FIFA U-17 ワールドカップ インドネシア 2023の2戦目。FIFAランキング1位のアルゼンチンと対峙したゲームは、開始8分までに2失点を献上。苦しいゲームの立ち上がりを強いられる。
だが、森山佳郎監督から「勇気を持って前を向こう」と後半のピッチに送り出された選手たちは、アグレッシブさを取り戻す。50分には右サイドを柴田翔太郎がえぐり切り、マイナスの折り返しを高岡伶颯がダイレクトでプッシュ。11番の2試合連続ゴールで、1点差に迫る。
64分には守護神の後藤亘が相手の決定的なシュートを2本続けてファインセーブで凌ぐと、87分には柴田の右CKから最後は途中出場の川村楽人がこぼれ球を押し込み、同点かと思われたが、主審の判定はオフェンスファウルでノーゴール。攻勢の時間を作り出しながら、どうしても1点が遠い。
最後は後半アディショナルタイムに3点目を奪われ、ファイナルスコアは1-3。「後半は完全にこっちのゲームができたので自信を持って行きたい」と森山監督は90分間をポジティブに振り返ったが、これで1勝1敗の3位となった日本は、次の一戦にグループステージ突破を懸けて挑むこととなった。
必勝を期して臨む3戦目の相手は、アフリカのタレント集団・セネガル。初戦でアルゼンチンを2‐1で退け、2戦目でもポーランド相手に4-1と快勝を収めたため、勝ち点6を積み上げたことで早くも決勝トーナメント進出を決めている。
既にグループステージを勝ち抜けていることもあって、3戦目のメンバー構成はやや不透明ではあるものの、ここまでの2試合で際立ったパフォーマンスを披露したのが10番を背負うアマラ・ディウフだ。9月に史上最年少でフル代表デビューも果たした15歳は、キャプテンマークを託されているチームの絶対的中心であり、アルゼンチン戦では個の力で2ゴールを記録。サイドで仕事のできる大会屈指のタレントだろう。
また、センターフォワードを務めるイドリサ・ゲイェも17歳にしてフル代表に招集されており、ポーランド戦ではハットトリックを達成。3ゴールすべてをペナルティエリア内でのワンタッチゴールで決めるなど、ポジショニングに優れたストライカーという印象で、日本戦に出場してきた場合にも警戒が必要であることは間違いない。
セネガルは4-3-3のシステムを敷いているが、攻撃性の高い両ウイングはプレスバックの意識も低く、中盤のスライドやDFのラインコントロールも徹底はされていないため、相手のファーストラインを越えてしまえば、サイドは比較的自由に攻め込む余地があるように感じる。その相手の特性も踏まえて、今回の試合では2人のサイドアタッカーをフィーチャーしたい。
1人目は、ここまでの2試合はいずれも左サイドハーフでスタメン出場している、レフティの吉永夢希だ。初戦では再三に渡ってサイドを駆け上がり、アシストが付いてもおかしくない好クロスを連発。だが、2戦目はなかなか思うようなプレーを出し切れず、後半途中で交代を命じられた。
所属している神村学園高校でも、今シーズンから参戦しているプレミアリーグで7アシストをマークしている吉永は、昨シーズンの夏前にチームでレギュラーを掴むと、すぐさまU-16日本代表の代表招集を受け、そこから飛躍的に成長を遂げたことで世代有数の左サイドバックとしての評価を確立。来季からはベルギーの強豪・ゲンクへの入団が決まっている。
最大の特徴はトップスピードから繰り出せる、“七色”とも形容したくなるようなバリエーションあふれるクロスの質。本人も「『突破してクロス』しか代表に還元できるものはないと思っている」と言い切るように、スピード、コース、強さを自在に操る左足から放たれたクロスは、常にゴールの匂いを漂わせる。
大会前には「世界中も注目している大会だと思うので、そこでしっかり結果を残して、世界の人から見られるような選手になりたいと思います」と力強い意気込みも。ここ2試合はサイドハーフ起用が続いているが、どうしても得点の欲しい時間帯には吉永をサイドバックに下げて、川村楽人と縦関係を組ませる超攻撃的布陣に踏み切る可能性も十分。吉永の“魔法の左足”にはとにかく期待したい。
柴田翔太郎選手
2人目は強気なメンタルも頼もしい柴田翔太郎をご紹介しよう。所属の川崎フロンターレU-18では左サイドバックを主戦場に置いているが、自身も「両サイドバックと両サイドハーフの4つのポジションができるというのは自分の強みとして持っています」と口にする通り、代表の中でも指折りのポリバレントさを誇っている。
アルゼンチン戦では右サイドバックで試合開始からピッチへ解き放たれると、序盤こそやや動きに硬さが見られたものの、時間を追うごとに縦への推進力を発揮。2点のビハインドを負った後半には、右サイドを強引な突破でこじ開け、正確なクロスで高岡のゴールをアシスト。世界の舞台でもその実力を証明してみせた。
セットプレーのキッカーも任されるほど右足のキック精度が高いことと、4つのポジションでプレーが可能というキャラクターを考えると、試合が進むにつれてポイントになりそうなポジションに、攻撃の切り札として途中投入されることも想定される。
W杯に向けて「アシストの数は自分がこだわっているところですし、アジアカップは2アシストだったので、それは超えたいなと思っています」と明言していたことも印象深い。アルゼンチン戦で1アシストは記録したが、目標とする数字を次の試合で一気に超えていってほしいところ。ポーランド戦のセネガルは4ゴールすべてをサイドアタックから挙げているだけに、両翼勝負がカギを握りそうな大一番では、日本が有する吉永と柴田の“2枚の翼”の躍動が、チームを決勝トーナメントへと軽やかに導いてくれるに違いない。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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