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欲するのは勝利に繋がる自身の結果一択。川崎フロンターレU-18・岡崎寅太郎はとにかくゴールを狙い続ける。 【NEXT TEENS FILE.】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史川崎フロンターレU-18・岡崎寅太郎
ゴールを奪うのは大前提。今はもうそれが生み出す価値に目が向いている。つまりはどれだけ得点を重ねても、勝利というチームの結果に結び付かないのであれば、そこには何の意味もないと、自身の中に明確な定義を刻んでいるのだ。
「9番というのは点を獲らなきゃいけない番号だと思っているので、そこは責任を持ってしっかりチームを勝たせられる点を獲らなきゃいけないと思っています」
プレミアリーグEASTの連覇を狙う川崎フロンターレU-18のストライカー。岡崎寅太郎は勝負の懸かった最後の3試合と、その先にあると信じている1試合でも、とにかくチームに勝利をもたらすゴールだけを狙い続ける。
滑り出しは上々だった。昨シーズンの躍進を経て、優勝候補として迎えた今シーズンのプレミアリーグ。前橋育英高校と対峙した開幕戦で、岡崎はいきなり2ゴールを記録。どちらもペナルティエリアの中で勝負するような形だったことに、今シーズンの決意が窺えた。
「去年はボールを受けてから勝負することが多かったんですけど、今年は強力なパサーというか、ゲームをコントロールする選手がそこまで多くない中で、サイドからのクロスとか、そういうこぼれてくるボールが多くなってくるなとは感じていましたし、練習でも長橋監督から『そこをやれば点数が増えてくる』と言われていたので、普段から意識していました」。
以前から好きだったのは、今季からバルセロナでプレーしているジョアン・フェリックス。本人も「ドリブルで剥がせて、有利な状況を作り出せる選手が昔からアイドルですね」と言い切るように、1.5列目あたりでボールを引き出し、そこからの仕掛けでゴールやアシストに関わっていきたいタイプだ。
ただ、今年のチームの特徴を考えた時に、サイドに強力なアタッカーが揃っていることは明らか。ならば、得点を獲ることを期待されているのだからと、自分の仕事場をよりゴールに近いエリアへ絞って、結果を出すことにこだわってきた。
リーグ前半戦は全11試合に出場して、10ゴールをマーク。順調に得点を積み重ねていったものの、夏のクラブユース選手権のあとにケガに見舞われ、戦線離脱を余儀なくされる。その期間にフォワードに入った高橋宗杜や、1トップ下を任された岡田泰輝がきっちり結果を残したことで、良い刺激を受けながらも、危機感も生まれたという岡崎は、復帰戦となった前橋育英戦で途中出場からチームの3点目を記録。2度の決定機を外したあとに、ようやく生まれたゴールを喜ぶ安堵の表情が印象的だった。
10月に味わった2つの敗戦は、どちらも違う悔しさを9番に突き付けた。8日に行われたアウェイの青森山田高校戦。この首位攻防戦もベンチスタートだった岡崎は、2点のビハインドを負った後半開始から投入されるも、ノーゴールに終わり、チームも手痛い黒星を喫してしまう。
だが、試合後に相手のキャプテンが「やっぱり9番の岡崎選手が前期も凄く厄介でしたし、後半に出てきたら、やっぱり一番嫌な選手でした」と言及すれば、青森山田を率いる正木昌宣監督も「やっぱり9番は仕事をするし、ボールへの嗅覚はずば抜けていますよね。本当に(松木)玖生みたいな感じで。『なんでオマエ、またそこに来ちゃったの?』みたいなタイプですよ」と高評価を口に。対戦相手も認めるパフォーマンスは披露したが、もちろんそれで満足するはずもない。
25日に開催されたアウェイの市立船橋高校戦は、チームにとっても痛恨の90分間となった。スタメンで出場した岡崎のゴールもあって、川崎U-18は前半だけで2点をリード。そのまま勝利すれば、首位を走る青森山田との勝ち点差を1まで詰められる状況の中で、後半に入ると相手のエースにハットトリックを達成され、悪夢の大逆転負けを強いられる。
「前半で2-0というところで、後半に入る時に『0‐0の気持ちで、もう1点獲ろう』と話していたんですけど、自分たちでゲームを壊してしまいました」とうつむいた岡崎は、それでも必死に前を向く。
「正直なことを言うと、チームを勝たせる点というものが自分にとっては一番価値の大きなものだったので、そこが獲れなかったというのは自分に実力が足りないと思いますし、今日のことはまた反省して、次は勝ちに繋がるようなゴールを自分が獲れたらいいなと考えています」。
残されたリーグ戦はわずかに3試合。首位の青森山田には勝ち点で4ポイントの差を付けられており、双方の結果次第では次節で連覇の可能性が絶たれてしまうこともあって、とにかくここからの川崎U-18は1つも負けられないシビアな試合が続いていく。
だからこそ、狙い続ける。ただ、ひたすらに、勝利に結び付く自らのゴールを。川崎フロンターレU-18の9番を託されたストライカー。岡崎がこれまで以上に躍動し、これまで以上に得点という結果を残すことは、チームが逆転優勝を成し遂げるためには必要不可欠だ。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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