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【世界と伍するタレントの覚醒間近。名和田我空と佐藤龍之介が期す初戦のリベンジ FIFA U-17ワールドカップ インドネシア2023 日本×アルゼンチンマッチプレビュー】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史名和田我空選手
結果を見れば、最高の滑り出しと言っていいだろう。FIFA U-17 ワールドカップ インドネシア 2023の初戦。ヨーロッパの実力国、ポーランドとの一戦は好リズムでゲームに入ったものの、井上愛簾が決定機を決め切れず、20分過ぎからは「まったくボールが持てなくなった」と森山佳郎監督も振り返ったように、日本は徐々に劣勢を強いられる。
ただ、後半開始からボランチに山本丈偉を送り込むと、中島洋太朗と組んだドイスボランチが機能し始め、日本の攻撃の時間が増加。吉永夢希と小杉啓太が縦に並ぶ左サイドからのアタックを中心に、重心が下がり出したポーランドを押し込む。
すると、20分近い大雨による試合中断を挟み、途中投入されたスピードスターが大仕事。77分に中島の縦パスを道脇豊が残し、高岡伶颯は左足一閃。強烈なシュートが水飛沫の上がるゴールネットを揺らす。終盤には守護神・後藤亘のビッグセーブも飛び出し、試合は1-0で堂々の完封勝利。大きな勝ち点3を手繰り寄せることに成功した。
グループステージ突破へ大きく前進したい2戦目の相手は、最新のFIFAランキングで1位に立っている南米の雄・アルゼンチン。大会前も日本の多くの選手が『最も対戦したいチーム』として名前を挙げていた優勝候補の一角だが、いきなり窮地に立たされている。
セネガルと激突した初戦は立ち上がりから不安定だった右サイドを剥がされ、前半6分に先制点を献上すると、9分と22分に右からサンティアゴ・ロペスが創出した決定機も、それぞれクラウディオ・エチェベリとアグスティン・ルベルトが決め切れない。
以降もポゼッションでは上回りながら、シビアなゾーンには侵入できない中で、38分には信じられないバックパスのミスから2失点目。試合はそのまま0-2で終了し、まさかの黒星スタート。日本との第2戦は、より負けられないシチュエーションで臨むことになる。
2列目に並んだロペス、エチェベリ、レフティのバレンティノ・アクーニャはアルゼンチンらしいテクニックのあるタレントだが、とりわけ右サイドハーフに入っていたロペスには警戒が必要だろう。既に名門のインデペンディエンテでトップチームデビューも果たしている11番は、縦に仕掛けるタイミングが抜群。決定的な仕事ができるタイプだけに、日本の左サイドバックを任されている小杉とのマッチアップは、この試合の1つの見どころとも言えそうだ。
アルゼンチン戦のキーマンには、『初戦のリベンジ』を誓う2人のタレントを挙げておきたい。
1人目はU17アジアカップの得点王であり、MVPも獲得した名和田我空だ。ポーランド戦では4-4-2の右サイドハーフで登場。「どこのポジションでも自分のやることは変わらないと思っていたけど、前半は守備の時間が長くて自分の持ち味を出せなかった」と自身も振り返ったように、ポーランドの左サイドにクリストフ・コランコという攻撃の中心選手がいたため、守備に奔走する時間を強いられ、なかなかボールを呼び込めない。
69分に交代を命じられると、自らに変わって投入された高岡が決勝ゴール。「交代を告げられた時は凄く悔しかったので次にぶつけたい。アイツ(高岡)がやったからには、自分も決めたいという気持ちになった」と話しており、改めてこのワールドカップでの活躍への意欲を深めた様子が窺える。
的確なポジショニングと高精度キックを武器に、チームの中でも得点に関わる力はトップクラス。次戦のポジションはまだ不透明だが、本来得意としている1.5列目起用となれば、よりゴールに近い位置での仕事が求められる。「ここからの主役には自分がなれるようにやっていきたい」と力強く意気込んだ日本のエースが、南米の強国に颯爽と挑む。
佐藤龍之介選手
2人目のキーマンは、このチームを立ち上げ当初から支えてきた佐藤龍之介だ。ポーランド戦はベンチスタート。81分から交代で右サイドハーフに入ると、守備でも高い位置からのプレスで強度を出したものの、終盤の90+5分に小杉のドリブルを基点に巡ってきた決定機では、シュートを打つタイミングを逸し、判断を変えて繰り出したヒールパスも不発。本人にとっても悔しさが募るシーンだったことは想像に難くない。
所属するFC東京とは既にプロ契約を結んでおり、トップチームの活動を経たことで身に付けてきたフィジカルの強さは、アジアの戦いの中でも際立っていた。大会前にはアルゼンチンの印象について「デュエルやテクニックの部分は南米を象徴するチームだと思うので、戦う気持ちだったり、相手の土俵では負けたくないです」と語っていたが、屈強な相手にもデュエルで勝ち切れるだけのパワーを、佐藤も兼ね備えている。
「10番というのはオーラを出していかないといけないと思うので、10番に見合ったプレーというのはしていきたいなと思います」と覚悟を決めてこの大会に挑んでいる日本の10番が、初戦の15分近い出場時間に満足しているわけがない。起用されるポジションやタイミングがどこであろうと、やり切るのは自分らしいプレーの一択。チームを勝たせた上で、世界を驚かせるプレーを披露するだけの実力は間違いなく有しているはずだ。
「FIFAランク1位のアルゼンチンを何とか叩き潰して、勝利を挙げたいと思います」とは森山監督。その難敵撃破のカギは、『初戦のリベンジ』を期す名和田と佐藤が握っている。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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