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サッカー フットサル コラム 2023年10月30日

憧れて続けてきた名門を率いる絶対的キャプテン。市立船橋高校・太田隼剛が向かう3年間の集大成 【NEXT TEENS FILE.】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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市立船橋高校・太田隼剛

2年生だった昨シーズンから既にキャプテンマークを託されるなど、そのリーダーシップは際立っているが、ピッチ上での立ち姿には以前より余裕が漂っているようにも見える。頼れる仲間の協力を得ながら、肩の力を抜いて、しなやかに、逞しく、チームを牽引する姿勢が頼もしい。

「形式上はキャプテンマークを巻いていますけど、いろいろな面で今年の代はそれぞれリーダーシップを取れますし、それが今のチームの形に繋がっているのかなと。1人1人が責任を持った行動をできているので、そういうところが今年のチームの良いところなのかなと思います」。

幼稚園に通っていた頃から憧れていた市立船橋高校を束ねる絶対的なキャプテン。太田隼剛はここまで積み上げてきたかけがえのない経験を胸に、3年間の集大成となるシーズンの終盤戦へと突き進む。

1つの狡猾なプレーが大逆転劇を呼び込んだ。首位争いを繰り広げている川崎フロンターレU-18と対峙したプレミアリーグEAST第16節。立ち上がりから圧倒的に攻め込まれた市立船橋は、前半だけで2点のビハインドを負ってしまう。だが、59分に左サイドでFKを得ると、太田は周囲の状況を冷静に見極めていた。

「自分たちのセットプレーはまずセットするというより、相手のスキを突いてクイックで狙っていこうということが決まり事でもありましたし、『郡司ならいける』という信頼関係があったので、良く決めてくれたなという感じですね」。相手の態勢が整う前に得意の左足で蹴り込んだFKへ、素早く反応した郡司璃来がゴールへ流し込む。

この得点でリズムを掴んだチームは、郡司のハットトリックで3点を奪ってスコアを引っ繰り返す。「気持ち良くて、今はとにかく嬉しいですね。本当に選手権に向けて勢いに乗れる良いゲームだったなと思います」と口にした太田の“機転”が、チームに大きな勝ち点3をもたらした。

視野の広さが発揮された試合はまだある。プレミアEAST第3節。自身も小学生時代を過ごした日立台で行われた、柏レイソルU-18との“古巣対決”。0‐1で迎えた終盤の83分に、自陣で前を向いた太田はゴールまで60メートル近い距離からロングシュートにトライすると、前に出ていたGKを飛び越えたボールは、そのままゴールネットへ弾み込む。

「あれは気持ちよすぎましたね(笑)。キーパーもジュニアから一緒だった選手で『やってやったぜ』みたいな感じでした。練習中でもキーパーが前に出ていたら打ったりもしているので、そこは“遊び心”のあるプレーができたのかなと思います」。“ゴール・オブ・ザ・シーズン”があればノミネートされるような衝撃の一発で、強烈にその存在をアピールしてみせた。

1年時の太田。まだ表情にあどけなさが残る

プレミアデビューを飾った1年生の頃から、とにかくアグレッシブな雰囲気を纏っていたのが印象深い。リーグ戦にスタメン出場したある初秋の試合後、まだあどけなさを残した太田は「僕、話を聞いてもらえたりしないですか?」と取材対象に立候補してきた。

「みなさん、コイツに騙されないでください。アピールしかしないので」と波多秀吾監督にツッコまれ、「初インタビューなんです!」と笑顔で返しながら、堂々と言葉を紡いでいく。「1年生でも『自分が中心だ』ぐらいの気持ちでやっていますし、試合では守備でも貢献して、攻撃でも自分がフォワードより点を決めるぐらいでやりたいと思います」。とにかく面白いヤツ、という第一印象は今でもハッキリと覚えている。

その時のことを本人に話すと、「1年生の時は『とにかくやってやろう』とか『とにかく目立ってやろう』とか、自分のことばかり考えていましたね」と苦笑しながら、「2年生でも3年生でもキャプテンを経験して、落ち着いてプレーできるようになったというか、勢いだけではなくて、1回冷静になって周りを見てからのプレーはできるようになりましたね。そのメンタル面の部分が一番の成長かなと思います。もうちょっとガツガツ行きたい気持ちもありますけど」と言葉を続ける。

「ピッチ外でもチームメイトを気に掛けたりしてきたことで、本当に周りが見えるようになってきたので、自ずとピッチ内でも仲間の動き出しが自然と見えるようになったりとか、キツそうな選手に声を掛けられるようになったりとか、いろいろな面での視野が広がって、それをプレーでも精神面でもチームに還元できているのが、10か月キャプテンをやってきた自分の成長かなと思います」。強気なメンタルは相変わらずだが、キャプテンを任されたことで人間的な成長の跡が窺えることも間違いない。

“イチフナ”を意識したのは、まだ幼稚園生の頃だったという。「和泉(竜司)選手が出ていた四日市中央工業との選手権の決勝を国立に見に行って、それで『うわ、イチフナってスゲー!行きてえ!』と思って、その時から決めていました」。だからこそ、1年時と2年時に果たせなかった高校選手権の全国大会出場は、達成すべき義務でもある。

「ここからもやり残したことがないぐらいしっかり練習したいですし、自分の在学時に選手権に行けていないことは本当に心残りで、何のために市船に来たかと言えば、やっぱり選手権で全国に出るためではなくて、全国で優勝するためなので、しっかり選手権で優勝して、気持ちよく引退したい気持ちが強いですね」。

市立船橋の7番を背負った絶対的キャプテン。チームメイトたちと誓い合った日本一だけを見据える太田は、いよいよ“イチフナ最終章”へと足を踏み入れていく。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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