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選手権への試金石!両雄が見据える全国制覇への道 昌平高校×尚志高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第17節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史昌平高校・鄭志錫(15番)はプレミア初ゴールに渾身のガッツポーズ
好調から一転して、ここ2試合は悔しい敗戦が続いている昌平高校。等々力陸上競技場で開催された第15節の川崎フロンターレU-18戦は、後半こそ盛り返す反発力を見せたものの、0‐3の完敗。流通経済大柏高校とホームで戦った前節の一戦も、決して悪い内容ではなかったが、1‐3と競り負けている。
キャプテンの石川穂高が長期離脱中という状況の中で、後半戦はキャプテンマークを巻いている佐怒賀大門が「穂高のためにも勝利しないといけないので、そこは自分も責任感を感じています」と語れば、長準喜も「穂高自身がケガした時に一番辛そうだったので、自分たちが下を向くことは許されないと思います」ときっぱり。今こそ想いを1つにして、連敗脱出に向かいたい。
現在リーグ戦で9戦無敗を続けている尚志高校は、絶好調と言っていいだろう。仲村浩二監督も「各ポジションに3人ぐらいはライバルがいて、レギュラーを奪われないようにというチーム内の競争が激しいので、それが功を奏しているのかなと思います」とポジション争いの激化がもたらす好影響に言及。グループのポジティブな空気感も窺える。
後半戦はここまで6試合を戦って、5勝1分け。前節の前橋育英高校戦も前半のうちに3ゴールを奪い、後半は少し相手に持たれる時間も作られながら、きっちり無失点で乗り切って3‐0と快勝。U-19日本代表に選出されている神田拓人も「本当に攻守においてバランスが取れていて、点も獲れますし、失点も少ないですし、かなり完成されてきたかなと思います」と自信を口にしており、真剣にリーグ制覇をその視界に捉えている。
ホームで必勝を期す昌平のキーマンには、2年生ストライカーの鄭志錫を推したい。第13節の柏レイソルU-18戦以降は一貫して先発起用。基本的には最前線に入ることの多い選手だが、パートナーを組む選手のタイプによっては、1.5列目を任されることも。幅広いプレーで攻撃の基点を作り出す。
第14節のFC東京U-18戦では、右サイドから1年生の長璃喜が入れたグラウンダーのクロスにいち早く反応し、プレミア初得点も記録。ようやく手にしたゴールの味を噛みしめるようなガッツポーズも印象的だった。まだ2年生ということもあって、ここからの成長も楽しみなストライカーがもう“一化け”できるか否かは、ここからのチームの勝敗を左右するはずだ。
2人目のキーマンは、ポリバレントさが際立つ前田大樹。流通経済大柏戦でも右サイドハーフで先発出場しながら、後半はドイスボランチの一角へとスライド。「守備面ではどちらのポジションでも球際やセカンドの拾い合いに負けない意識でやっています。少し役割が変わってくるだけで、どっちがやりやすいとかは特にないですね」と言い切るように、2つのポジションを遜色なくこなしていた。
昨シーズンまでは2列目起用が続いていたが、強力なライバルが居並ぶ中で、新チームになってから練習でボランチを試された際に、「『これはチャンスだな』と思って、結構頑張ったら『大樹、ボランチあるんじゃないか』みたいになったんです」とのこと。今ではその積極的な姿勢がコンスタントな試合出場に繋がり、チームの大事なパーツを担っている。
FC LAVIDAから5年半の時間をともに過ごしてきた、同学年のチームメイトに対する熱い想いが口を衝く。「自分はLAVIDAが大好きで、面白いヤツが多いですし、みんな仲が良くて、高校になったらそのメンバーとは学校も一緒じゃないですか。だから、今は練習も練習以外もとにかく楽しいので、このメンバーで絶対に勝ちたいという思いはメチャメチャあります」。LAVIDA愛と昌平愛にあふれるマルチプレーヤー。ボランチでも、サイドハーフでも、前田の献身的なプレーはいつだって変わらない。
尚志でフィーチャーしたいのは、10番を背負うレフティの若林来希だ。ここまでのリーグ戦では、全17試合に出場して4得点を記録。持ち前のアグレッシブさで存在感を示してきた。見逃せない特徴としては“左利きの右サイドハーフ”にもかかわらず、縦への突破にも果敢にチャレンジするところが挙げられる。
「縦突破してのクロスも上げたいと思っていて、右足は常に練習しているので、同じ精度で蹴れると思います」と本人も話している通り、右足もきっちり使えることが自身の選択肢を増やしており、カットインと縦突破の両方をチラつかせるドリブルは、対峙する相手にとっても厄介極まりない。その上、90分間走り切れる運動量も兼ね備えることで、攻守でチームに貢献できる10番からは、1秒たりとも目が離せない。
リーグで2番目に失点の少ない守備陣を束ねる高瀬大也も、尚志においては欠かせない大黒柱。リーグ戦全試合にスタメン出場を果たし、第9節からは6試合連続無失点を下支えしつつ、攻撃面でも既に4得点をゲット。前橋育英戦でもCKから豪快なヘディングでゴールを陥れ、渾身のガッツポーズを披露した。
「今年はプレミアでも1点差のゲームが多くて、そういう経験から“耐える力”がものすごく付いたと思うので、そこはもう尚志の弱みから強みに変わったと思います」という高瀬の言葉は興味深い。プレミアの舞台で着実に経験を積み上げてきたことで、“耐えられる”チームになってきたという自信を、このセンターバックは携えているわけだ。
最終ラインの中央でコンビを組む左利きの市川和弥は、ビルドアップや正確なフィードに特徴を持ち、対人や空中戦に威力を発揮する高瀬との補完関係も十分。3番を託されている尚志のファイター、高瀬大也が発するパワフルなエネルギーにも是非注目したい。
明確に日本一を見据えながら臨む選手権予選を控えたタイミングで、この両雄が激突することになった一戦は好バトル必至。勝利の凱歌を上げるのは、昌平か、尚志か。この90分間、要チェック。
尚志高校のファイター、高瀬大也
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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