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サイドハーフは誰だ!?フォワードは誰だ!?両雄の激化するポジション争いがアツい! 川崎フロンターレU-18×昌平高校マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第15節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史川崎フロンターレU-18・岡田泰輝がドリブルで仕掛ける
好調が続いている。前年のEAST王者、川崎フロンターレU-18のことだ。開幕から着実に勝ち点を積み重ね、今季も首位争いを好演。尚志高校、青森山田高校に続く暫定3位ではあるものの、勝ち点差はほとんどなく、前節も前橋育英高校にアウェイで3-0と快勝。すべて無失点勝利での4連勝を達成した。
連覇に向けてチームも個人も成長を続けている中で、川崎U-18がここまでの14試合で唯一土を付けられた相手が、今回の対戦相手となる昌平高校だ。アウェイで挑んだ一戦は先制を許し、一時は柴田翔太郎のPKで追い付いたものの、セットプレーから突き放され、1-2で敗戦。開幕6試合目にして黒星を突き付けられただけあって、このリターンマッチに選手たちの気合が乗っていることは想像に難くない。
プレミア初昇格のシーズンを戦っている昌平は、ここまで5勝4分け5敗と五分の星で、暫定5位に付けている。開幕から3試合は結果が付いてこなかったが、第4節で大宮アルディージャU18相手に初勝利をもぎ取ると、前述の第6節では川崎U-18からも白星をゲット。大きな自信を得ることに成功した。
後半戦に入ってからの3試合も1勝2分けと負けなし。とりわけ前節のFC東京U-18戦では攻撃陣が爆発し、ホームで6-0と大勝。キャプテンマークを巻いた佐怒賀大門も「気持ちのいい勝ち方でしたね。監督からも『1点だけじゃなくて、2点3点獲っていこう』と言われていたので、無失点で抑えて6-0で快勝できたので、チームの雰囲気も良いと思います」ときっぱり。今節のアウェイゲームを最高の形で迎えることになる。
前橋育英戦に臨んだ川崎U-18の前線の顔ぶれを見てみると、右サイドハーフには名賀海月、1トップ下に岡田泰輝が入り、左サイドハーフに岡野一恭平、最前線に高橋宗杜が起用されていた。なお、同じ前橋育英と対峙した開幕戦を振り返ると、1トップには岡崎寅太郎が立ち、2列目は右から加治佐海、尾川丈、志村海里が並ぶ布陣。実に4人全員が入れ替わっていたのだ。
尾川がボランチへとコンバートされてからは、岡崎が1トップ下の位置にスライドし、1トップには香取武が配される試合が続いていたが、その2人の欠場を受けて、長橋康弘監督は後半戦の初戦となった大宮U18戦で岡田と高橋の起用を決断。すると、その2人が揃ってゴールを決めて3-0で快勝を収め、以降の2試合もスタメンに定着している。
「今回はトラがケガで途中出場だったんですけど、宗杜も大宮戦で決めたりしていて、誰が出ても点は獲れると思うので、自分も決めていかないといけないなと思っています」と話す岡田は前橋育英戦でもゴールを奪ったが、これで発奮したのが後半から登場した岡崎。終盤にダメ押しとなるチーム3点目を挙げるなど、先発復帰をアピールしてみせた。また、右サイドハーフはU-17日本代表の活動で欠場した加治佐海に代わって、名賀海月がスタメンに指名されたが、正確なプレースキックも含めて存在感十分。さすがのクオリティを見せ付けている。
さらに、左サイドハーフは腰痛と膝の大ケガで1年近く戦線離脱していた岡野一が、後半戦に入って3試合連続で先発出場。流通経済大柏高校戦、前橋育英戦と2試合連続ゴールを叩き出して存在感を示している。だが、この2シーズンの大半で左サイドハーフを務めてきた志村海里もハイレベルなアタッカー。岡野一も「ケガの焦りもありましたけど、とにかく海里は上手いので、チームとしては心配ないなと思っていました」と言い切るなど、良好なライバル関係が築かれていることが窺える。
長橋監督は「とにかくチャンスを掴もうとする良い競争ができてきたなと思います。メンバー選考がものすごく苦労します。正直一番したくない作業です。それぐらいみんな良いです」と笑顔で語っており、今回のホームゲームもスタメン予想は困難を極めるが、誰が出場しても『我こそが主役に』と張り切る姿が目に浮かぶ。
昌平高校・長璃喜
一方の昌平も前線のポジション争いが熾烈を極めている。FC東京U-18戦は、前線の工藤聖太郎が1.5列目気味の鄭志錫と並び、右サイドハーフに長璃喜、左サイドハーフに長準喜と、“長ブラザーズ”が両サイドに入ったが、やはりFC東京U-18と対峙した開幕戦では、前線に小田晄平が、その少し下には大谷湊斗が送り込まれ、右サイドハーフには前田一樹を配置。10番を背負う長準喜だけが、その試合でも左サイドハーフで先発起用されていたものの、この2試合の比較からも厚い選手層が垣間見える。
2番を背負う工藤は左サイドバックでの起用こそあったものの、フォワードでのスタメンはFC東京U-18戦が今季初。それでも「小学校からずっとフォワードをやっていて、その頃からシュートを打ちまくっていた」と明かしたように、今年の1月まではフォワード1本で勝負してきた選手であり、その“本職”でピッチに解き放たれると、圧巻の2ゴールを記録。勝負強さを発揮した。
前節の際立ったパフォーマンスが印象深いのは長璃喜だ。アザールを参考にしているという15歳は、右サイドハーフの位置で前半からとにかくドリブル勝負。今季2度目のスタメンとは思えないアグレッシブさでチャンスを創出し続け、前半終了間際には鋭い縦突破から鄭志錫のプレミア初ゴールをアシストする、完璧なグラウンダークロスを通してみせる。
さらに、後半にも右サイドから中を窺うと、「持った時にメッチャフリーで、選択肢がメッチャあったんですけど、その中でも一番良いところにいたので、出しました」と左を走る長準喜へと丁寧なパス。「弟からのパスを外すわけにはいかないなと感じていました」と豪快なゴールを決めた“兄”へのアシストも記録するなど、1年生らしからぬプレーを連発。「意外とドリブルでは行けるなと思いました」と一定の自信も掴んだようだ。
FC東京U-18戦ではベンチ入りしながら出番のなかった小田と、U-17日本代表候補の山口豪太も、チームメイトの活躍を目の当たりにして、いまの好調に乗り遅れまいと奮起しているはず。川崎U-18同様に、昌平にも誰が出ても楽しみなアタックを大いに期待したい。
今節の舞台は今シーズン初開催となる等々力陸上競技場。川崎U-18のキャプテンを任されているGKの濱崎知康も、前節の試合後に「やっぱり自分も目指している場所ですし、プロの選手が活躍している場所なので、等々力のピッチに立てるということは楽しみです。今日の試合も大きな声や手拍子でサポーターが後押ししてくれましたし、等々力ではもっと大きな声を出してもらえるのかなと思います。それが力になるので、引き続き応援をお願いしたいです」と語っていた。
リベンジか、それとも返り討ちか。プレミアでも屈指の技巧派集団がぶつかり合う90分間は、アグレッシブな攻め合い必至。秋分の日に繰り広げられる、“アキ”の等々力決戦を見逃すな!
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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