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世界への扉をこじ開けていくのは誰だ 川崎フロンターレU-18×大宮アルディージャU18マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグEAST第12節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史川崎フロンターレU-18・柴田翔太郎
プレミアリーグEAST連覇を狙うのは川崎フロンターレU-18。今シーズンのここまでは6勝4分け1敗で3位。首位の青森山田とは勝ち点4差と、まだまだ逆転可能な好位置に付ける。また、29得点はリーグ最多で、10失点はリーグ最少と、攻守のバランスも抜群。安定した試合運びも光っている。
ただ、初優勝を目指したクラブユース選手権では、難敵の揃うグループステージこそ首位で通過したものの、ラウンド16ではFC東京U-18に1-2で惜敗。夏の日本一に届かなかった悔しさを、ここから始まるリーグ後半戦に繋げたいところだろう。
対する大宮アルディージャU18は、苦しいシーズンインとなった。いきなりの開幕5戦未勝利。2節からは4連敗を喫してしまい、なかなか調子が上がらない中で、第6節の旭川実業高校戦に3-1で勝ち切って、ようやく初白星を手にすると、以降の5試合は2勝2分け1敗と好調に転じ、順位も8位まで上げてきた。
とはいえ、こちらもやや予想外の局面を迎えている。今季のキャプテンであり、ディフェンスリーダーとしてチームを牽引していた市原吏音が、7月からトップチームのレギュラーに定着。J2リーグでも持ち味を遺憾なく発揮するなど、日に日に存在感を高めており、おそらくプレミアに帰ってくるのはもう少し先のことになりそうだ。
約2か月ぶりのリーグ戦再開。ここから改めてアクセルを踏み込みたい両者が激突するこの一戦では、11月に開催されるFIFA U-17ワールドカップへの出場を目指すタレントたちの競演に注目したいと思う。
川崎フロンターレの元気印といえば柴田翔太郎だ。リーグ前半戦最後のゲームとなったホームのFC東京U-18戦では、終了間際の90+4分に自らが蹴ったCKから決勝ゴールが生まれると、「喜んだらなんかオレのゴールになるかなって(笑)」と真っ先にベンチへ向かって猛ダッシュでアピール。公式記録上はオウンゴールになったものの、浦上壮史GKコーチも「キックが良かったですからね」と認める“一撃”で、チームに劇的な勝利をもたらしてみせた。
主戦場は左サイドバック。元木湊大とプレミア有数のハイレベルなポジション争いを繰り広げているが、柴田の大きな特徴は左右のサイドバックとサイドハーフ、4つのポジションでのプレーが可能だということ。本人も「それぞれ景色の違いというのは全然なくて、右でやっても左でやっても同じクオリティが出せるというのは自分の特徴です」と言い切っている。明るいキャラクターも含めて、この男のエネルギッシュな仕事ぶりは川崎U-18にとって欠かせない大事な武器になっている。
厳しい競争を勝ち抜き、右サイドハーフの定位置をがっちり掴んでいる加治佐海も、世界へと挑戦する権利を十分に有しているタレントだ。縦にも中にもパワーを持って突き進めるアグレッシブさが魅力的。今季はここまでプレミアで4得点を記録するなど、決定力も持ち合わせており、大宮U18と対峙した第3節では左足で豪快なゴラッソを叩き込んでいるだけに、今回の試合を前に本人も相性の良さを感じているかもしれない。
4月にはU-17日本代表候補合宿に追加招集で参加。トレーニングマッチでは右サイドハーフ起用で、右サイドバックに入った柴田と縦関係を組む一幕もあったようだが、そのステージで受けた刺激から大きなモチベーションを得ているはず。9月のフランス遠征は選外とはいえ、プレミアでのパフォーマンス次第ではワールドカップのメンバーに食い込んでも何の不思議もないだろう。
一方の大宮U18で、フランス遠征のメンバーに入ったのは右サイドバックを務める斉藤秀輝。初めての年代別代表招集となった昨年7月のU-16日本代表トレーニングキャンプは、ケガのために無念の不参加となったものの、12月のパラグアイ遠征で再招集を受け、その後のU17アジアカップにも出場した選手たちと切磋琢磨する時間を過ごした。
8月にはBalcom BMW CUPにU-17日本代表の一員として参加。そこでのパフォーマンスが認められたことで、フランス行きの切符を逞しく勝ち獲ったことになる。178センチと恵まれた体格を誇り、攻守に堅実なプレーぶりがチームに確かな安定感を与えることに疑いの余地はない。誰が出てきても強烈な突破力を誇る川崎U-18の左サイドを抑える意味でも、13番を背負う右サイドバックの躍動は、この試合で大宮U18が勝利を収めるための必須条件と言っていいだろう。
もちろんここで名前を挙げた選手以外にも、“大外”からの代表入りを狙い得る若きタレントが両チームにはズラリと顔を揃えている。世界への扉を自らの力でこじ開けるのは誰か。この試合の90分間を戦う彼らの一挙手一投足は、間違いなくワールドカップの舞台へと繋がっている。
川崎フロンターレU-18・加治佐海
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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