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8月22日に行われたAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフで、浦和レッズが香港の理文(リーマン)を3対0で破ってグループステージ進出を決めた。2022年度のACLで優勝してACL出場権を獲得した浦和だったが、リーグ戦は9位に終わったため、プレーオフからの出番となったのだ。
香港は、遠い昔はアジアのサッカー大国で、アジアで初のプロリーグが作られたという歴史があるが、今ではすっかり弱体化してしまった。香港プレミアリーグ準優勝という「理文足球隊」も、実力的には日本の地域リーグレベル。浦和にとっては、「間違いなく勝てる試合」だった。
実際、勝負の行方は6分で決まってしまった。
理文は、本来の4バックではなく5バックで守備を固めてきたが、試合開始とともに、浦和は一気にプレッシャーをかけた。そして、右サイドで相手のパスをカットした大久保智明が中島翔哉とのワンツーで抜け出してクロスを入れると、左サイドから走り込んできた小泉佳穂があっさりと決めて先制。前半3分のことだ。
3分後には右サイドで再び大久保、中島とパスがつながり、オーバーラップしてきた右サイドバックの酒井宏樹が入れたクロスを、今度は興梠慎三が頭で決めた。
両チームの実力差を考えれば、残り時間が80分以上残っているとはいえ、2点差は浦和にとっては「セーフティーリード」と言ってもよかった。
すると、浦和はすぐに“省エネ・モード”に切り替えた。
なにしろ、夏場の連戦である。すでに疲労はたまっている。そして、プレーオフを終えれば、25日にはJ1リーグ第24節の湘南ベルマーレ戦が控えている。中2日の連戦だ。だから、ボールを保持する時間を長くして相手を走らせてスタミナを奪っていく……。浦和は、そんな戦い方に切り替えたのだ。
その結果、浦和は追加点を奪えず(無理に奪いに行かなかった)、関根貴大による3点目が入ったのは後半のアディショナルタイムだったのだ。
マチェイ・スコルジャ監督は65分に3枚目のカードとして関根を投入した。
普通だったら関根がアウトサイドで、それまで左サイドにいた小泉をトップ下に入れるはずだ。だが、小泉のポジションは変えず、中央に関根を入れた。これも、「相手のDFに対してプレッシャーをかけるためにフレッシュな選手を中央に置きたかった」のだそうだ。
なかなか3点目を取れなかったのは、チーム全体が“省エネ”に徹したためだ。
ただ、“省エネ”ではあっても、決定機がまったくなかったわけではない。チャンスは作りながら、ゴール前でパスの精度を欠いたり、シュートのタイミングが遅れたりしていたのだ。“省エネ”であっても、決めるべきところは決めて早めに3点目、4点目を奪って相手の戦意を失わせることができていれば、浦和にとってはもっと楽な試合になったはずだ。
こうして、浦和が無事にプレーオフを突破したため、2023/24シーズンのACLグループステージには、日本からはJ1リーグ優勝の横浜F・マリノス、同準優勝の川崎フロンターレ。そして、天皇杯で優勝したJ2リーグ所属のヴァンフォーレ甲府に加えて、前回優勝の浦和と合わせて4チームが出場することになった。
今シーズンのACLは従来の「春秋制」から「秋春制」に移行して行われる。
8月24日には組分け抽選が行われ、9月19日にはグループステージが開幕し、12月上旬までホーム&アウェーでの戦いが繰り広げられる。そして、2024年に入ってからノックアウトステージが行われ、ホーム&アウェーによる決勝戦は同5月に行われる。
2020年からは新型コロナウイルス感染症の拡大のために集中開催の形で行われていたACLも、今シーズンからは従来のホーム&アウェーの形式に戻り、そして、秋春制が実施されるのである。
かつて32クラブ参加で行われていたACLは2021年から40クラブ参加に拡大したが、前述のとおり新型コロナウイルス・パンデミックのため集中開催方式となっていた。従って、40クラブ参加でホーム&アウェー方式で開催されるのも今シーズンが初めて、そして今シーズンが最後となる。この方式で行われるのは今シーズン限りなのである。
来シーズン(2024/25シーズン)から、AFCは従来の“拡大路線”から“エリート化路線”に転換する。従来のAFCカップと統合して参加クラブは76に拡大し、それを3つの階層に分けてトップの「ACLエリート」に参加するのは24クラブだけとなるのだ(詳細は未定)。
まさに「朝令暮改」。あまりにもレギュレーションの変更が多すぎるのではないか?毎年のように大きく大会方式が変わるのでは、参加クラブも対応が難しくなってしまう。
“エリート化”の目的は、強豪クラブ同士の試合を増やすことなのだろう。たしかに、浦和対理文のような試合が多くなっては、大会に対する興味すらも失われる。“エリート化”は必然の流れなのだろう。
ACLを3つのカテゴリーに分けるというのは、欧州サッカー連盟(UEFA)がチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、カンファレンス・リーグの3大会を主催していることを真似たものだ。
UEFAがカップ戦(クラブの大会)でビジネス的に大成功したのを見て、AFCもそれに倣ってテレビ放映権料でひと儲けしようと、AFCの理事たちはUEFAの真似をしているのだ。
だが、クラブの大会のレベルが非常に高く、世界のどこに行っても有料テレビ局のキラーコンテンツとなりうる欧州のカップ戦と、アジアのカップ戦とでは競技レベルも、またファンの関心度も雲泥の差だ。
はっきり言って、ACLでは自国のクラブ以外の試合を見る人はそれほど多くないはず。そんな中で大会方式だけ欧州を真似しっとしても、あまり意味があるとは思えない。大会方式をコロコロと変えて大儲けを狙うのではなく、「いかにしてアジア全体の競技レベルを上げるか」を地道に考えてほしいものだ。
いずれにしても、現行方式最後となる今シーズンのACLで日本を代表して戦う4チームの検討に期待したい。
この数年、J1リーグでは川崎フロンターレと横浜F・マリノスの両クラブがパスをつなぐ超攻撃的スタイルで圧倒的な成績を収めてきた。
だが、今年は川崎が中位に低迷しており、一方、横浜は首位に立っているが、昨年までのような相手を圧倒する内容で勝っているわけではない。
ヴィッセル神戸や名古屋グランパスのように、激しいアグレッシブな守備を仕掛け、カウンターを狙ってくるチームが増えたからでもある。「守備力の強化」。それは、Jリーグにとって進歩なのか、それとも攻撃サッカーの低迷期と見るべきなのか、判断が難しいところだ。そういう意味で、ACLでの“他流試合”をぜひ見てみたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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