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サッカー フットサル コラム 2023年7月9日

ポテンシャルの高さを見せた高井幸大 課題も多いが、圧巻のプレーを見せた横浜FC戦

後藤健生コラム by 後藤 健生
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7月8日の土曜日の夜に行われたJ1リーグ第20節で、川崎フロンターレは横浜FCを3対0で一蹴した。

立ち上がりの7分に横浜FCのワントップ、マルセロ・ヒアンがフリックしたボールを受けた小川慶次朗がドルブルで持ち込むチャンスなどもあり、横浜FCとしては非常に良い入り方ができたが、ここは川崎のGK鄭成龍がしっかり守った。

そして、時間の経過とともに前線からのプレスがきき始め、ボールを奪われてからの攻撃から守備への切り替えの速さで横浜FCの攻撃は完全に封じられてしまった。

その後は、川崎らしい短いパスがきれいにつながり、また裏のスペースに走り込む選手を使う長いパスも有効で川崎が攻勢を強めていく。かつての“強い川崎”を思い出させるようなパスワークだった。

そして、13分に川崎の先制ゴールを決めたのは、この試合トップとして先発したルーキーの山田新だった。

左サイド、相手のペナルティーエリアの角あたりでパスをつないで、最後はサイドバックの登里享平が強めのクロスを入れると、DFと駆け引きをしながら走り込んだ山田が足で合わせて決めた。

36分の2点目も、今季、川崎に帰ってきた宮代大聖だった。ゴール自体はPKによるものだったが、ペナルティーをもぎ取ったのも宮代自身だった。

やはり左サイドでつないだ後、脇坂泰斗が入れたスルーパスに反応した宮代が横浜FCのDF山根永遠に倒されたものだ。ボックス内に進入していく宮代の速さが生きた。

この数年間、FWの中軸だったレアンドロ・ダミアンと小林悠がケガで不在のことが多い今シーズンの川崎(横浜FC戦でも2人の姿はベンチにもなかった)。右サイドの家長昭博は“不動の存在”として、トップでは宮代と山田が交互に起用されることが多かった。ともに、2000年5月生まれの23歳。川崎のアカデミー育ちの同期生である。

宮代はたしかに優れたアタッカーだが、タイプ的には「ワントップ」ではない。セカンドストライカーあるいはサイドアタッカーとして才能を発揮できる選手。山田の方が、センターFWタイプだ。

山田が、横浜FC戦のようなポイントでゴールを決めることができるようになれば、中央に山田、サイドに宮代という形で2人の良さを発揮させることができるようになるだろう。

その後も、川崎はボールを握る時間が長く、横浜FCゴールを脅かし続ける。だが、ラストパスの段階でのパスに微妙なズレがあって、なかなか決定的な形は作れないまま時間が経過した。

後半に入って、2点を追って積極的に仕掛けてきた横浜FCに対して、川崎は82分にはDF大南拓磨を投入して5バックにして守り切った。強い時の川崎だったら、早いタイミングで3点目を決めて決着をつけてしまったことだろうが、この日のダメ押し点(瀬川祐輔)は89分を待たなければならなかった。

横浜FC戦じたいは「快勝」だったとしても、まだまだ課題は多そうだ。

この日の川崎は、攻撃面では山田と宮代という若手2人が目についたが、守備面では18歳の高井幸大のポテンシャルの高さが光った。

今シーズン、DFに故障者が続出した川崎。アカデミー育ちの高井がデビューを飾ると、その高さと速さ、テクニックの確かさ、そしてクレバーさを見せつけて大きな期待を集めた。

その高井は5月にアルゼンチンで開催されたU-20ワールドカップに出場した。しかし、U-20日本代表では高井は右サイドバックとして起用され、必ずしも期待通りのパフォーマンスとは言えない大会となってしまった。

しかも、日本チームはグループリーグ最終戦でイスラエル相手にまさかの逆転負けを喫してしまう。

グループリーグ敗退となった日本代表は想定よりも早く、3試合だけで帰国することになった。高井が思ったより早く帰ってくることになったことは、川崎にとってはプラス材料となるかと思われたが、アルゼンチン帰りの高井はフォームを失っており、ワールドカップ前のようなパフォーマンスができなくなっていた。

しかし、横浜FC戦の前半には、高井は素晴らしい守備を見せ続けた。

横浜FCのトップはこれまでエースだった小川航基がナイメヘン(オランダ)に移籍したため、この日はマルセロ・ヒアンが先発だった。188センチの高さがあり、パワフルでスピードもある21歳の選手だ。

だが、高井は192センチという高さを武器に空中戦での競り合いでは完全に競り勝っていたし、スピード勝負でも無理にタックルに行かずに、落ち着いてボールを奪うなど、駆け引きの面でも優位に立ち続けた。

圧巻は、前半のアディショナルタイム47分のプレーだ。

川崎側から見て右サイドで山下諒也のパスを受けたマルセロ・ヒアンがドリブルで仕掛けてきた。そのマルセロ・ヒアンに対して体を当てに行った高井だったが、逆を取られてしまう。そのままゴールに向かうマルセロ・ヒアン。そして、それを後ろから追った高井が深いタックルをしかけ、右足のアウトサイドで完璧にボールを捉えたのだ。

高井がタックルしたボールは味方選手に当たっていわゆる“こぼれ球”になった。だが、スライディングした後すぐに起き上がった高井がこのボールを拾って、前にいた脇坂につないだのだ。

この一連のプレーに、等々力陸上競技場を埋めた2万人のサポーターからは、ディフェンシブなプレーとしては珍しいほどの大きな拍手が生まれた。

こうして、前半はそのポテンシャルの高さ、引き出しの多さを見せつけた高井。ただ、攻撃面ではちょっと遠慮気味だったので、後半には正確なパス能力や中盤まで持ち上がるようなプレーも見せてほしいと思っていた。

ところが、後半に入ると高井に守備面でミスが目立つようになってしまった。

無理にタックルに行ってはずされたり、パスを付けにいってカットされたりして、ピンチになってしまう場面も何度か見られた。

横浜FCが後半に入ってより積極的にプレーするようになり、DFラインの裏を狙い始めたこともあるのだろうが、高井にミスが多くなった最大の原因は疲労なのだろう。

疲労で判断のミスが生まれたのだ。

このように、まだまだ「若さ」や「経験不足」といった課題はいくつも見られるが、前半に見せた守備でのポテンシャルは本物だ。J1リーグという高いレベルの戦いの中で経験を積んでいけば、将来は日本を代表するDFに成長することは間違いない。

逸材、高井幸大の将来に大いに注目したい。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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