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サッカー フットサル コラム 2023年6月12日

久保建英にとって最高の1年となった22-23シーズンを振り返る

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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久保建英

久保建英にとって最高の1年となった22-23シーズン

久保建英にとって最高の1年となった22-23シーズンは2つのピリオドに分けられる。
前半の[4-4-2]の左FWの久保、後半の[4-3-3]の右FWの久保である。

開幕前、同じ攻撃的MFであるシルバやブライス・メンデスとのポジション争いが予想されたが、アルグアシル監督は驚きのFWに抜擢した。

これは久保の最大の武器を最大限に活用するためのポジションだった。ドリブルにはボールロストが付き物であり、彼の課題はロスト時の守備だったわけだが、この新ポジションなら穴が開きにくい。物理的にロスト位置が前になって、味方のカバーリングが間に合うからだ。

ロストを恐れずドリブルを仕掛けよ、という状態にしてもらった久保は、定位置をつかむと二度と手放すことはなかった。ドリブルもロスト後の対応も久保個人に投げっ放しだった昨季までのチームと、チーム戦術として久保をサポートするソシエダとの姿勢の差は明らかだった。

監督の思惑通りに、久保は得点とアシストを伸ばしていくわけだが、その陰で、チーム戦術の前からの激しいプレスをこなすことでフィジカルのレベルを上げ、守備のスキルを磨いていた。

それが明らかになったのが、後半の[4-3-3]の右FWの久保である。ブライス・メンデスとセルロートの不調による得点不足にオヤルサバルの復帰が重なり、システム変更を余儀なくされたアルグアシル監督が選んだのが、この並びとこのポジションだった。

久保の守備の負担増は明らかだった。MFの数が4人から3人に減り、彼にはサイドを背走して味方SBをサポートする必要が出てきた。体力も集中力も切れやすい苦手な守備に力を割きつつ、いかに攻撃のレベルを下げないか、が試されたわけだ。

久保の守備の強度アップを前提としたシステム変更──アルグアシル監督にとっても賭けだったと思うが、期待以上のものを見せてくれた。チームとしてのポゼッション力が下がり相手ボール時間が増えたのだが、走り負けることも当たり負けることもなく、ドリブル、シュート、ラストパスのキレはむしろ上がった。結局、久保の背後を突かれてカウンターを喰い失点した、というシーンを目にすることがないまま、ゴールとアシストを積み上げていく姿だけを見続けてシーズンが終わった。

前半のパフォーマンスは「守備の負担減による活躍」と見なせるかもしれないが、後半のパフォーマンスは「レベルアップによる活躍」と呼ぶべきだろう。今はもう、守備が苦手というレッテルは剥がすしかない。アタッカーとしてだけではなく、攻守両面で評価される選手に成長を遂げた、ということだ。

こうして残ったのが、公式戦9ゴール、6アシスト(リーガで9ゴール、4アシスト)という数字と、ファンが選ぶソシエダのシーズンMVPという栄誉、TVコメンテーターが選ぶマン・オブ・ザ・マッチでリーグ最多の9試合──グリーズマンとレバンドフスキの7試合を上回る──という高評価である。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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