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5月20日に開幕を迎えるFIFA U-20 ワールドカップ アルゼンチン 2023。厳しいアジアの予選を勝ち抜き、ワールドカップへの切符を手繰り寄せたU-20日本代表は、明確に世界一を目指してアルゼンチンへ乗り込んでいる。そんなチームでディフェンスラインを統率するセンターバック、田中隼人選手が大会へ向けて今の想いを語る。
――改めてU-20ワールドカップのメンバーに選ばれた率直な感想から聞かせてください。
「凄く嬉しい気持ちが大きかったのが第一にあります。今までずっと呼んでいただいていましたし、自分もアジア予選に出させていただいたので、このワールドカップに懸ける想いは誰よりも強かったですし、まず選ばれたことが嬉しいです。また、結果を残さなければいけないという責任も感じています」
――ご家族も喜んでいたんじゃないですか?
「喜んでいましたね。『選ばれてるじゃん!』みたいな感じで、特におばあちゃんは喜んでくれました」
――おばあちゃん孝行ですね。
「少しでもそれができて良かったです」
――アジア予選を勝ち抜いて、自分たちの力で世界の扉を開いた手応えはいかがでしたか?
「自分もワールドカップの出場権が懸かった試合まで出させてもらっていましたけど、そこまで大差で勝っていたわけでもないので、その時には良い感触もあったんですけど、『このままではワールドカップでは勝てない』という感覚が自分の中にありました。冨樫さん(冨樫剛一監督)からも大会が終わった後に『自分たちはまだまだだぞ』ということも、『自チームでの日常が大事だ』とも言われていたので、ワールドカップまでの準備期間が2か月ちょっとあった中で、自分もそうですし、周りの人もこの2か月でワールドカップに向けて、足りないものを準備できたのかなと思います」
――具体的に言うと、この2か月で取り組んだのはどういうことですか?
「パスやキックといった攻撃のところは自分の特徴ですし、強みなんですけど、やっぱり自分は守備者なので、守備力を上げようと思ってきました。ワールドカップの出場権は獲得しましたけど、相手はまだアジアなので、自分が目指している世界はもっとレベルが高いと思いますし、この2か月でオフ・ザ・ボールの時の自分の対応だったり、相手選手との駆け引きや先に身体を当てることや、守備能力を見直さないと、と思って改善してきました」
――今回は開催地がアルゼンチンへ変更になりましたが、アルゼンチンという国にどんなイメージを持っていましたか?
「南米なのでブラジルも近くにありますし、サッカー文化が根付いている印象です。モロにタックルも足に来るというか、ボールにも行きながら、相手の身体も削りながら、というサッカーをしてくるなという印象もありますね。そういうサッカーとの対戦はあまり自分もしてこなかったので、アルゼンチンのような環境でやれるのは、自分のこれからにとっても大きいのかなと思います」
――南米に行くのは初めてですか?
「初めてですね」
――相当フライトも長いですよね。
「今まで一番遠くてヨーロッパまでしか行ったことがないので、長くて20時間ぐらいのフライトですし、全部で30時間ぐらい乗ることに対する不安もあると思いますけど、それも適応していかないと世界に出ていけないので、時差対策は自分の中でも少しずつ行っていますし、やるしかないという感じです」
――田中選手にとって初めて臨む世界大会という意味での、このU-20ワールドカップに臨む思いはいかがですか?
「自分が16歳の時に、1個上の代のU-17ワールドカップがありましたけど、自分も呼ばれていないですし、世界大会自体が初めてなので、U-17の大会に行けなかった分、このU-20の大会で絶対に結果を残して、世界に名前を売るということは自分でも思っていました。絶対にこの大会は自分の価値を高める大会にしたいですし、チームとしても上に、上にと、自分が導ければなと思います」
――田中選手はU-15からずっと年代別代表に選ばれていますが、その中で初めて迎える世界大会という意味での特別な想いはありますか?
「特に自分の代の代表には、U-15からU-20まで5年近くずっと呼んでもらっているので、自分たちの代でできる最後の大会ですし、集大成という中で絶対に世界一を獲りたいです。仲間と同じ年代でできるのもラストだということも感じながら、絶対に勝ちたいなと思います」
――同年代と一緒のチームでプレーするのは楽しいですか?
「楽しいですね。同い年もそうですし、今回のワールドカップのメンバーも半分以上は年下なので、1個下からも負けられないという刺激をもらえますし、自分も負けられないですよね。チームにはいろいろな刺激があって、玖生(松木玖生・FC東京)だったり、高井(幸大・川崎フロンターレ)だったり、Jリーグの試合に絡めている選手もいる中で、自分は試合に出られていない悔しさもありますけど、いろいろなことを刺激し合える仲間なので。特別な存在かなと思います」
――ちなみに田中選手はこのチームの中でどういうキャラクターですか?
「どういうキャラクターだろう……(笑)。もちろんずっと呼んでもらっているので、ピッチに入ったらチームを引っ張っていかなくてはいけないことは監督からも言われていますし、自分としては引っ張れているかわからないですけど、引っ張りたいなと思っています。ピッチ外ではいろいろな人にちょっかいを掛けながら、声を掛けながら、という感じですね。チームワーク的にもいろいろな人と喋りたいですし、ほとんどの人は一緒にやったことがありますけど、いろいろな人と会話することも大事なのかなと思って、いろいろな人と喋っています」
――特に仲の良い選手はいます?
「菊地脩太(清水エスパルス)ですね。同じポジションですけど、この間のオフシーズンも一緒にディズニーランドに行きました(笑)。この間も電話しましたし、脩太は凄く仲が良いですね」
――ディズニーランドに一緒に行くのは相当仲が良いでしょ(笑)。
「相当良いですね。2人なのに楽しかったです(笑)」
――熊田直紀選手(FC東京)も仲の良い選手に菊地選手の名前を挙げていました。いろいろな選手とコミュニケーションが取れるタイプなんですね。
「特にこの間のアジアカップでは、食事会場が円卓になっていて、8人ぐらいで一緒に食べるんですけど、脩太と熊田と僕は毎回同じ席で食べていました。熊田はあまり喋らないですけど(笑)、いろいろなことを引き出せば喋ってくれるので、特に脩太がいればみんな和んで、雰囲気も自然と良くなりますし、脩太が熊田の良さを引き出していましたね。チームにとって大事な存在です」
――今回の代表を率いている冨樫監督はどういう方ですか?
「一番は選手の意見を尊重してくれる監督だなと感じています。あまり怒らないと言ったら変ですけど、選手の意見や気持ちを一番に優先してくれる監督なので、必ず勝ちたいなと、世界一を獲りたいなと思わせてくれるような、凄く好きな監督です」
――冨樫監督も会見では世界一という目標を明言されていましたが、改めてU-20ワールドカップに向けての意気込みをお願いします。
「2年前にこのチームが立ち上がった時から、世界一という目標を掲げてきたので、絶対に世界一を獲りたいと思っていますし、獲らなければいけないとも感じているので、自分の価値も高めながら、チームを世界一へ導ければなと思っています」
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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