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サッカー フットサル コラム 2023年4月25日

『ヴィッセル神戸U-18・安部雄大監督が考える「指導者としての振る舞い」 高円宮杯プレミアリーグWEST ヴィッセル神戸U-18×サガン鳥栖U-18マッチレビュー』

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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ヴィッセル神戸U-18・安部雄大監督

「1つ1つの試合にメッチャ執念があるというか、目の前の1つのことに向き合うという感じの人なので、それに付いて行くのは大変ですけど、自分たちもその期待に応えないといけないと思っています。自分の経験からいろいろなことを話してくれる人だと思いますし、安部さんは1人1人に対して言ってくれるので、それで気合が入る感じはあります」。今シーズンのヴィッセル神戸U-18のキャプテンを務める坂本翔偉は、“安部さん”についてこう語っている。

就任2年目。神戸U-18を率いる安部雄大監督が選手に向ける言葉には、熱量がある。3月のサニックス杯。東海大福岡高校と対峙した一戦のハーフタイムに、指揮官は選手たちへ厳しい口調で何かを訴えかけていた。結果的には2点のビハインドを跳ね返して、3-2で逆転勝利を収めたのだが、試合後にそのハーフタイムのことを尋ねると、こういう答えが返ってきた。

「我々Jクラブの課題という部分で、やっぱり高体連の彼らをリスペクトするべきで、『絶対に上から目線でナメてはいけない』『彼らがアップから元気良くやるのをしらけた目で見るなよ』という話をしたんですけど、そういうところは我々が高体連から学ばなくてはいけないところですし、実際にこういうゲームになったわけですから」。

安部監督は山口県の多々良学園高校(現・高川学園高校)の出身で、高卒ルーキーとしてサンフレッチェ広島へと入団。現役引退後は地元のアミザージFCで指導者の道へ入り、2005年からは現役引退時のクラブでもあるヴィッセル神戸で、アカデミーを中心に20年近く指導を続けている。

自身はいわゆる高体連の環境下でサッカーの力を磨き、指導者としても高体連のチームと肌を合わせてきたからこそ、双方の違いや共通項は知り尽くしている。「Jクラブと高体連も力の差がないのが現状だと思います。高体連の選手は頑張れますし、守備をすることに対してもアレルギーがない部分もあって、そういうものはまだまだJクラブの方が劣っているなと」

「もちろんたくさんの選手の中から這い上がってくるような競争も、その中で試合に出られない仲間を背負ってプレーすることも、我々にはできないことですし、僕自身はJクラブにいる彼らに変な意識を持たせないようにすることが大事かなと思っています」。常に他者へのリスペクトの精神を携えながら、広い視野で物事を捉える人だということは、この一連の話からも窺えるはずだ。

この日の鳥栖U-18との試合は、先に2点を奪われる苦しい展開に。2失点目はセットプレーからの失点だったが、安部監督には気になることがあったという。「ちょっと軽率だったなと。あれは間接FKだったと思うんですけど、それに対してカベに人数をかける必要があったのかというのは、反省材料かなと思います」。失点の流れはスポットに立った1人が小さく蹴り出し、それを浮き球パスでエリア内に送られ、ファーでフリーになった選手にヘディングで決められた形。ワンプレーへのこだわりも、紡いだ言葉に垣間見える。

最後は坂本が後半アディショナルタイムに劇的な同点弾を叩き込み、勝ち点1を手にしたものの、だからこそ気にしておきたい課題も明確に共有する。「最後まで諦めずに追い付いたことは、3-0で負けた先週から半歩前進した部分はあるんですけど、選手たちに伝えたのは『劇的な同点ゴールで課題をごまかさないようにしましょう』と。『そうなる前に、そうならないようにしなくてはいけない部分があるんじゃないか』と。試合の入りも悪かったですし、ちょっとしたセットプレーの隙は改善していきたいと思います」。

「やっぱり去年もそうでしたけど、苦しい時に我慢することを受け入れることは大事です。特に“時間”のところは結構うるさく言っているんですけど、今日は1失点目(2分)と2得点目(90+3分)で両面が出たかなと。あの時間って本当にサッカーではスコアが動く時間帯なので、そこは勝ち点3にするのか、勝ち点1になるのかの1つのポイントかなと思っています。“勝ち点1”はその日はダメージがあるんですけど、のちのち効いてくるというのは去年感じたので、これが引き分けで良かったと思えるように、今日は悔しいですけど、また巻き返していきたいなと思っています」(安部監督)。課題を振り返りながら、前向きなフレーズが滲むあたりも、この人の多面的な魅力を現わしているようで面白い。

テクニカルエリアをせわしなく動き回るタイプではない。もちろん選手たちへと声は掛け続けているが、どっしりとした雰囲気を醸し出している。本人にその印象をぶつけると、少し笑いながら想いを明かす。

「いえ。『どうしようかな?』ってずっと考えていますよ(笑)。ただ、去年で得たいろいろな経験は自分の中に財産としてあるので、自分が選手たちに対してどう振る舞うのかは、結構大事なのかなと思っています」。

ここまでのプレミアは4試合を消化して、1勝2分け1敗で7位。あと一歩で優勝を逃した昨シーズンを考えると、思ったより勝ち点を伸ばせていない現状はあるが、シーズン前に指揮官は今のシチュエーションを見越しているような発言を残している。

「若い選手が多いだけに、勢いに乗ればいいところまで行くんじゃないかなと思いますけど、反面脆さが出てしまうこともあるでしょうし、そこで僕があたふたしちゃったり、イライラしちゃうのは選手に伝わると考えているので、選手たちも我慢しないといけない部分もありますけど、夏ぐらいまでは僕自身も我慢しなくてはいけないのかなと何となく思っています」。

選手に対してどう接していくかが、指導者にとっても永遠の命題であることは言うまでもない。だが、『目の前の1つのことに向き合うという感じの人』と選手も感じる安部監督の振る舞いは、きっと柔らかい高校生の心をしなやかに、ポジティブに、力強く束ねていくはずだ。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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