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サッカー フットサル コラム 2023年4月11日

「Viva Reysol!たとえセレクションに落ちようとも」。昌平・田中瞭生が待ち侘びていた“心のクラブ”との対峙 高円宮杯プレミアリーグWEST 昌平高校×柏レイソルU-18マッチレビュー

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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昌平高校・田中瞭生

その男は慣れ親しんだグラウンドで戦える、この日の一戦を心待ちにしていた。だって、対戦する相手は小さな頃から家族でスタジアムへ駆け付け、声援を送ってきた“心のクラブ”のユースチームなのだから。

「自分も気合いが入っていて、もちろん勝ちたかったですけど、レイソルが強かったのはちょっと嬉しかったです。やっぱりレイソルは好きなので(笑)。でも、メッチャ勝ちたかったので、複雑な気持ちですね」。

昌平高校の右サイドバックを務める、チームきってのムードメーカー。田中瞭生はプレミアリーグという世代最高峰の舞台で、憧れ続けてきたユニフォームを纏うライバルたちを向こうに回し、真剣に勝利を目指す90分間を存分に味わった。

昨年末のプレーオフを勝ち上がり、プレミアへと初昇格を果たした昌平。ホーム開幕戦となった第2節の相手は柏レイソルU-18。前節は青森山田高校に0-5と大敗を喫したものの、2014年からこのステージで戦い続けている“先輩”だ。

リーグデビュー戦となった昌平の開幕節は、アウェイでFC東京U-18と激突。開始早々に先制したものの、前半のうちに追い付かれると、結果は1-1のドロー。今回のホームゲームにはプレミア初勝利という、サッカー部にとっての記念すべき記録も懸かっていた。

立ち上がりからリズムを掴んだ昌平は、幸先良く先制点を奪うも、初戦に続いてスタメンで登場した田中が「(長)準喜が前を向いてボールを受ける回数が少なかったので、自分も準喜に入れようと思っていたんですけど、結構消されていて、なかなかリズムを作れなかったなと思います」と話したように、アタックがフィニッシュで締めくくれないうちに、同点弾を献上してしまう。

田中はこの2試合で、対峙した相手のレベルの高さを実感したという。「やっぱり相手が1対1も強いので、前を向かれてもかわされない対応をしたいんですけど、サイドハーフの選手だけではなくてサイドバックの選手も出てくるので、そこが大変です」。昨シーズンのプリンスリーグ関東も経験はしてきたが、プレミアのアタッカーもやはりタレント揃い。もちろん楽しいが、対応するのは大変なタスクだ。

それはこの日の柏U-18も例外ではない。「相手はカウンターが速かったので、左サイドの5番が持った時にもうちょっと良い対応があったかなと反省しています。左利きだったので縦を消して、中に行かせれば、もっと取れたかなと思いました」(田中)。収穫と課題を常に高いレベルで突き付けられるのが、このリーグの醍醐味でもある。

田中にとって、このホームゲームは少し特別な感情を抱かざるを得ない90分間だった。何しろ相手のレイソルはいわゆる“心のクラブ”。「レイソルはもともと好きなので、この間のルヴァンカップのアントラーズ戦も見に行きましたし、今日もレイくんがプリントされているレイソルの“パンツ”を履いて試合をやっていました(笑)」と笑顔で明かすあたりに、性格の良さが滲む。

実は中学進学時に、レイソルU-15のセレクションも受けていたという。「2次セレクションで落ちました。受かりたかったですけど、正直『受かるのは厳しいな』とは思いましたし、レベルが高かったですね。悔しかったですけど、小学生の頃もそこまで実力があるわけではなかったので、仕方ないかなと思いました。それでLAVIDAのセレクションを受けたら、受かったんです」。

結果的に入団したFC LAVIDAでは、2度に渡ってピッチの上で黄色いユニフォームと“再会”している。「レイソルとは中1と中3の関東リーグで対戦しました。中3の頃はLAVIDAが勝ちましたね」。セレクションで落とされたチームと、別のチームに入って対戦した上に勝利を収めるというのも、サッカーの面白さの1つであることは間違いない。

昌平に入学してからも、一歩ずつ足元を固め、一歩ずつ前に進んできた。「高1で自分でもビックリするくらい早いタイミングでトップチームに上げてもらえたので、プロに行った(平原)隆暉くんや(井野)文太くんとも一緒にプレーできて、去年は(荒井)悠太とも一緒にやれましたし、やっぱりレベルの高い人たちと毎日練習できていることが自分の成長に繋がっていると思いますね」。そして、今はプレミアの舞台に堂々と立っている。

同点で迎えた後半45分。CKのこぼれ球が田中の目の前へ転がってくる。思い切って右足で振り抜いたシュートは、惜しくもクロスバーの上へ。「入ればいいなと思って蹴ったんですけどね。ちょっとスターになるイメージはあったんですけど、なり損ねました(笑)」。結果は1-1のドロー。“心のクラブ”との決着は、アウェイゲームへ持ち越しとなった。

次の対戦は9月9日。会場は日立柏総合グラウンドの人工芝グラウンド。田中にとっては因縁の場所になる。「中1の前期のリーグ戦はあそこでやりましたけど、久しぶりな感じですね。次はアウェイなので負けたくないです。あそこでセレクションも落ちてますし(笑)」。負けたくない理由が、はっきりとあるわけだ。

FC LAVIDAからずっと一緒にプレーしている土谷飛雅は、田中のことを「瞭生は盛り上げ役ですね。チームを盛り上げるタイプで、メッチャ良いヤツです」と評しているが、その自覚は本人にもあるらしい。「まあ意識しているというか、自然とですね。みんなもノリがいいので、一緒にふざけているだけです」。

チームを盛り上げてきたムードメーカーにとっても、FC LAVIDA時代からのチームメイトにとっても、今年は6年間の集大成。「プレミアリーグのレベルの高さはこの2節で結構痛感したので、昌平としても自分としても勝ちにこだわってやっていきたいなって。大学やプロに行く人もいると思うんですけど、この先はみんな違うチームになるので、1つでも多く勝ちを獲りながら、みんなで楽しくサッカーしたいですね」。

このチームで、みんなと、楽しくサッカーしたい。簡単そうでいて、難しいトライに身を投じる田中の高校ラストイヤーは、まだまだ始まったばっかりだ。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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