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サッカー フットサル コラム 2022年12月7日

なぜ、そこまで「ベスト8」にこだわるのか? 準々決勝のステージで見えてくるものとは?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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ブラジル代表

ワールドカップで5回の優勝歴を誇るサッカー王国、ブラジル

カタール・ワールドカップに出場していた日本代表はラウンド16でクロアチアと対戦。試合は1対1で引き分けに終わり、PK戦の末に日本は敗退。森保一監督が就任当初から目標として掲げていた「ベスト8進出」にはあと一歩のところで届かなかった。

日本のグループリーグ突破は今回で4回目だが、いずれもベスト8まであと一歩のところで敗れている。

カタール大会に臨んだ日本代表は負傷で長期間離脱していた板倉滉や浅野琢磨などがメンバー入りしたが、メンバー決定後にも負傷者が続出という非常事態の大会となった。

クロアチア戦では冨安健洋と遠藤航がそろってプレーできる状態になったが、今度は久保建英が体調不良でベンチにも入れない状態に。“満身創痍”の中でドイツ、スペインを下してラウンド16まで残ったことは高く評価してよい。

だが、そんなやり繰りの中でたどり着いたラウンド16では、選手たちに疲労が溜まっており、動きの鋭さが欠けてしまった。もちろん、相手のクロアチアも疲労による大きな影響があったように見えたが……。

コスタリカ戦に敗れたことが影響した。

もし、コスタリカに勝って2戦目でグループリーグ突破を決めることができていたら、スペイン戦では必要な選手に休養を与えることができたし、板倉の出場停止もなかったはずだ。

そして、スペインに敗れて2位通過となっていたらラウンド16までは「中3日」ではなく「中4日」で戦えたのだから、コンディションはかなり回復できていたはずだ。

返す返すもコスタリカ戦の敗戦が惜しまれる。

いつもサッカーを観戦していない方にとっては、「なぜそれほどベスト8にこだわるのか」不思議に思われるかもしれない。ベスト8とベスト16は何がそんなに違うのか?

先日、メインメディアセンターで仕事をしていたら、イスラエル人記者に話しかけられた。日本サッカーの現状について聞きたいというのだ。その記者は、僕の前にも日本のテレビクルーと話をしたらしいのだが、かなりネガティブな話を聞いたらしい。

「少子化の影響で競技人口は減りつつあり、観るスポーツとしての人気も一時より衰えている」というのだ。

だが、今の日本のサッカーはそんなネガティブな側面ばかりではない。なにしろ、ワールドカップ本大会でドイツとスペインを連破したのだ。

日本の育成組織から優れた若い選手が育ってきたからこその躍進だ。

かつては、日本人選手が欧州のクラブに移籍するといっても、いわゆる「プロヴィンチャーレ」ばかりだったが、今では各国リーグで上位争いをするチームでも日本人選手が活躍している。その結果が、ドイツ戦、スペイン戦の成功につながったのは間違いない。

僕は、そんな話の最後に「日本チームは男女を通じてすべてのカテゴリーの大会でグループリーグを突破している」という事実を伝えた。年齢制限のない男女のワールドカップや各年代別の各ワールドカップ。さらに、フットサルやビーチサッカーのワールドカップでも、日本はノックアウト・ステージに駒を進めている。

200を越える国が加盟しているFIFAの中でも、そんな国は日本だけだ。

「ついでに」と、僕は話を続けた。「日本はラグビーのワールドカップでも、準々決勝に進出したんだよ」と。つまり、日本は世界有数の“フットボール・ネーション”なのだ。

ただし、僕はネガティブな事実も正直にそのイスラエル人記者に伝えた。

「ノックアウト・ステージに進んでも、ほとんどその初戦で敗れてしまっているのだけどね」と。

昨年のビーチサッカーのワールドカップや、この夏のU-20女子ワールドカップでは日本代表が決勝進出を果たし。東京オリンピックでも男子のU-23代表は準決勝進出に成功した。しかし、他の大会ではほとんど準々決勝またはラウンド16での敗退に終わっているのである。

そして、カタール・ワールドカップでもノックアウト・ステージ初戦突破はならなかった。

従って、これはワールドカップ、あるいは森保監督のチームだけでなく、日本サッカー界全体の現在の課題なのだ。一度でも、その壁を敗れれば、相乗効果で他のカテゴリーでも次々とベスト8あるいは準決勝に進めるようになるだろう。

ベスト8に進んだら、何がまっているのか。

たとえば、もし日本がPK戦でクロアチアに勝利して次のラウンドに進んでいたとしよう。

準々決勝で待ち受けているのは韓国に4対1と大勝して準々決勝進出を決めたブラジルだった。

ワールドカップで5回の優勝歴を誇るサッカー王国である。今大会でも豪華な攻撃陣を擁するが、守備の組織もしっかりして降り、イングランド、フランスと並んで優勝候補の筆頭と言っていい。

そのブラジルが本気になるワールドカップの準々決勝で戦えたとしたら、これまで戦ってきた親善試合のブラジルとはまったく違うはず。

優勝を狙う国々が本気での戦いを始めるのがノックアウト・ステージなのだ。とくに今年は11月開幕となり、開幕1週間前まで各国リーグが行われていた。だから、今大会には準備不足のまま参加したチームが多かったが、グループリーグで3試合を戦ったことで、各国ともチーム作りも進んでいるはずだ。

僕は、大会開幕前からドイツには勝つイメージを持っていた。攻撃されてもしっかり守れば大量失点はない。そして、ドイツの守備および中盤でのパス回しには問題があり、前田大然がプレスをかけ続ければ、いつか相手のミスが生まれる……。つまり、「勝利するならこんな形で」というイメージが頭に浮かんだのだ。

だが、今の総合力の高いブラジルが本気で臨んできた時、それを跳ね返すのは至難の業だ。ドイツやスペインに勝ったのは、「必然の勝利」であり、けっして“奇跡”などではない。だが、本気のブラジルに勝利できたとしたら、これは本当に「奇跡」と呼ぶしかないだろう。

そんな景色を一度でも見ることができれば、選手たちの意識も大きく変わり、日本のサッカーはさらに進歩を続けていくことができるだろう。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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