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チーム力としてはスペインは日本よりも明らかに上だ。しかし、しっかりとしてゲームプランを準備して、守る時間帯は割り切って守り、攻めに出る時間にエネルギーを集中して投入した日本。スペイン戦もやはり“必然の勝利”だったと言っていい。
チームの状況と相手との実力差を考えてゲームプランを決めて、それを実行させる……。戦術的にも森保監督は見事な仕事をした。
最近まで、僕は森保監督はチーム作りはうまいが、ゲームプランや試合中の采配には不満を抱いていた。「大変、申し訳ない」としか言いようがない。1986年のワールドカップでアルゼンチンが優勝した後、カルロス・ビラルド監督を批判し続けていたメディアが監督に送った言葉にひっかけて「ペルドン・モリヤス・グラシアス」と言わなければならない。「森保さん、ごめんなさい。そしてありがとう」である。
ただ、一言だけ付け加えておかなければならない。
コスタリカ戦でターンオーバーを使って消極的な試合をして敗れたことはやはり批判すべきだろう。結果としてスペインに勝てたから良かったものの、スペインとは10回戦って2、3回勝てる程度の力関係だ。
それなら、やはりコスタリカ戦に勝負を懸けるべきだった。
目標のベストエイト実現のために重要なのは4試合目(ラウンド16)をどれだけ良い状態で迎えられるかである。
理想は2試合目までに突破を決めて、3戦目(スペイン戦)では必要な選手に休みを与え、使っておきたい選手を使うことだ。こうして、コンディションを合わせて大事な4戦目に臨むというのが理想のシナリオだ。
ただ、グループリーグでドイツとスペインが一緒になったことで、それは難しそうに思えた。従って、少しずつ選手を回しながら使いながら3試合を乗り切るのが現実的であり、森保監督もそのために思考を巡らせていたはずだ。
だが、ドイツ戦に勝利したことによって「2試合目で突破を決める」という最高のシナリオが可能になったのだ。この僥倖とも言える状況を生かして、プランを変更。2戦目のコスタリカ戦では、初戦で活躍した選手をそのまま使って一気に勝に行くべきだった。初戦で7失点したコスタリカの心理状態を考えても、早めに勝負を決めるべきだった。
疲労をためるリスクはあるが、スペイン戦で勝利が必要な状況を作るより、コスタリカ戦に懸けた方がリスクは小さかったはずだ。
戦術的には見事な手腕を見せた森保監督だが、さらに戦略的な思考を深めていってほしい。4年後の大会のためにも……。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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