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鳥栖の戴冠か。磐田の意地か。正真正銘のWEST頂上決戦。サガン鳥栖U-18×ジュビロ磐田U-18マッチプレビュー【高円宮杯プレミアリーグWEST第22節】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史楢原慶輝
最終節を目前に控えたプレミアリーグWEST第21節の結果は、両チームにとって対照的なコントラストを描いた。
前半戦から首位を独走してきたサガン鳥栖U-18は、苦しんでいた。17節の清水エスパルスユース戦で後半アディショナルタイムに追い付かれ、3-3という打ち合いの末に引き分けてから6戦未勝利。しかもそのうちの5試合に先制しながら、終盤に逆転を許して負けたゲームが3度もあり、チームは負のサイクルに入っていた。
前節は東福岡高校と対峙したアウェイゲーム。デザインされたセットプレーから、大里皇馬が先制ゴールを叩き出したのが前半9分。以降も押し気味の展開は作り出すものの、最近続いていた逆転負けの嫌な記憶が、頭の片隅によぎらなかったはずはない。ただ、終盤にはU-19日本代表のスペイン遠征から帰国したばかりの、バイエルン・ミュンヘンへの移籍が決まっている福井太智を投入し、1-0で逃げ切りに成功。実に7試合ぶりの白星を逞しく手繰り寄せる。
前田遼一監督が今シーズンから指揮を執っているジュビロ磐田U-18は、いきなり3連勝スタート。最高の開幕ダッシュを決めると、それからも着実に勝利を積み重ね、鳥栖U-18と激しい首位争いを繰り広げる。だが、後半戦はやや勝点を取りこぼす試合も増加。直近の2試合はいずれもリードしていた後半アディショナルタイムに同点弾を叩き込まれ、“勝点2”ずつを失うことになった。
竹田優星
聖地・ヤマハスタジアムにリーグ5連勝と絶好調を続ける大津高校を迎えた前節の一戦は、舩橋京汰のゴールで幸先良く先制したものの、ワンチャンスを決められて同点に。後半にも竹田優星の華麗なループシュートで勝ち越したが、終盤に3点を奪われて万事休す。1試合を残して鳥栖U-18との勝点差が4に開いたため、この敗戦で優勝の可能性が消滅した。
これで覇権の行方は2チームに絞られた。首位の鳥栖U-18と、2位のヴィッセル神戸U-18は勝点40で並んでいる上に、得失点差もわずかに鳥栖が1点上回るだけ。お互いに最終節は勝利することはもちろん、得点もできるだけ多く獲ることが求められる一戦となる。
優勝の懸かる大一番に挑む鳥栖U-18と、最後の1試合で意地を見せたい磐田U-18。この両者の対峙では、まずポリバレントな2年生の存在をご紹介したい。
堺屋佳介
鳥栖U-18のマルチプレーヤーは堺屋佳介だ。先日までU-17日本代表のクロアチア遠征に参加していた9番は、前節の東福岡戦では中盤のセンターで出場。ボランチの松岡響祈、1.5列目気味に構えた楢原慶輝のちょうど中間、いわば“2.5列目”的な位置で全体のバランスを監視しながら、攻撃にも積極的に顔を出すクレバーさを披露し続ける。
加えて、とにかくいろいろなポジションでプレーできる。今シーズンは右サイドハーフでのプレーが一番多い印象があるが、前述した中盤のセンターではボランチもインサイドハーフもお手の物。最前線に配置されることもあれば、時にはサイドバックで起用されることも。この男の存在がチームの戦い方の幅を広げていることに疑いの余地はない。まずは堺屋がピッチのどこに立っているかも、この一戦の気になるポイントだ。
磐田U-18では竹田優星が重宝されている。3-4-3を採用した前節の大津戦では左のウイングバックで起用され、サイドを果敢に上下動。1-1で迎えた後半には、前述したようにGKとの1対1でループシュートを選択し、勝ち越しゴールを鮮やかに奪っている。
また、攻守に渡ってかなり流動的なポジショニングが要求される3トップの一角として出場した経験もあり、4-4-2の布陣を採用した際には、両サイドハーフでもプレーが可能。与えられた役割をきっちりこなせる上に、大津とのアウェイゲームではとんでもないミドルシュートでゴールを陥れるなど、アグレッシブさも十分。この12番の立ち位置も、まずはキックオフ時のお楽しみとして挙げておきたい。
もう1つの注目点は、ゴールを生み出すことのできる双方のトップスコアラーだ。鳥栖U-18で最も多く得点を重ねてきたのは、7番を背負う楢原。攻撃的なポジションならどこでもこなせるアタッカーは、抜群の運動量とスピードを武器にチャンスを創出。10月以降は4戦連発なども記録しながら、ここまで8ゴールを積み上げてきた。
同じ勝点で優勝を争う神戸U-18との得失点差を考慮しても、この一戦での得点は何点あっても足りないくらい。ここに来てストライカー起用の増えてきた大里皇馬の好調も喜ばしいが、得点もアシストも大いに期待できる楢原が、どれだけエリア内で仕事をできるかは、そのままチームの勝敗に直結してくる。彼のパフォーマンスからはやはり目が離せない。
伊藤猛志
磐田U-18の絶対的なストライカーは伊藤猛志だ。前半戦は開幕から5戦連発と凄まじいペースで得点を量産。とりわけ第7節の神戸U-18戦で沈めた“ドライブシュート”は、年間ベストゴール候補にもノミネートしたくなるようなスーペルゴラッソ。なかなか止まなかったヤマハスタジアムのどよめきが、今でも耳に残っているほどである。
夏過ぎからは3か月近く負傷離脱していたが、第19節の履正社高校戦で戦列に復帰すると、いきなり途中出場でゴールをゲット。続くガンバ大阪ユース戦でも得点を奪い、現在は12ゴールで得点ランキング5位に付けている。ランキング首位との得点差は3。今シーズンの伊藤のクオリティを見ていれば、最終節でのハットトリックが絶対にないとは誰にも言い切れないはずだ。
泣いても、笑っても、プレミアリーグWESTに残されたのはあと1試合のみ。鳥栖の戴冠か。磐田の意地か。2022年シーズンのリーグを牽引してきた両雄の頂上決戦を堪能したい。
文:土屋雅史
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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