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サッカー フットサル コラム 2022年12月1日

『銀ちゃん』が踏み出すネクストステージ。横浜FCユース・池谷銀姿郎のいままでとこれから【NEXT TEENS FILE.|高円宮杯】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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池谷銀姿郎

それは2年前の晩夏。中止が決まったプレミアリーグの代替として開催された『プレミアリーグ2020関東』の開幕戦だった。横浜FCユースのホーム、LEOCトレーニングセンターへ視察に訪れていたU-16日本代表の森山佳郎監督が、ユニフォームを着ていないある選手に声を掛ける。「銀ちゃん、メンバーに入ってないじゃん」。

それに対する答えが振るっていた。「大丈夫です!ピッチの外からオレが盛り上げますから!」。思わず森山監督も大爆笑。周囲の人々もつられて笑い声を上げる。「面白いヤツがいるんだなあ」というのが、“銀ちゃん”の第一印象だった。

2年生になると、横浜FCユースとして実質の初参加となったプレミアリーグではほとんどの試合に出場し、最終ラインで存在感を放っていく。昨年のチームを率いていた重田征紀・現ヘッドオブコーチが当時、「本当に見てもらった通りの性格なので、良くも悪くも“銀ちゃん”って感じですね(笑)。今年1年の中では本当に良く成長した選手の1人で、攻撃の部分も積極的になってきましたし、守備もだいぶ対応力も上がったかなと。気持ちの良い子ですよ。江戸っ子みたいな子ですね」と言及していた言葉は、彼のキャラクターを過不足なく表わしている。

今年の2月。最終学年への進級を間近に控え、新シーズンへの想いを尋ねると、落ち着いた口調でこう話を紡ぐ。「去年も2年生の中では一番多く試合に出たんですけど、その中で感じたものをピッチ内でもピッチ外でも自分が伝えられればもっともっと良いチームになれるし、日頃の練習から成長はできるので、自分が去年の3年生からもらったものを、これからの1,2年生に伝えていければと思っています」。

「今年のチームはずっとベンチやベンチの外から試合を見ていた選手ばかりで、『オレも出たい』という気持ちの選手がたくさんいるので、そのやる気を自分がうまく引き出して、チーム全体が良い方向に行けたらなと思っています」。実に頼もしい発言に「キャプテンをやるんだね」と水を向けたところ、「おそらく(笑)。まだ決まっていないですけど」と笑顔でサラリ。こういうところも実に“銀ちゃん”らしい。

実際にキャプテンに就任すると、シーズンが進んでいく中で、グループ全体の成長を感じることも少なくなかったという。「ジュニアユース時代は間違いなく自分が先頭に立って引っ張ってきたチームでしたけど、ユースになったらみんなが頼れる存在になってきましたし、このチームは一体感を持てれば本当に強いので、その矢印の方向を正していくのが自分の役目ですね」。仲間と勝利という目標に向かい、切磋琢磨する日々がとにかく楽しかった。

夏のクラブユース選手権で、クラブ最高成績のベスト4進出を成し遂げたことは、忘れられない大きな成果だ。「自分たちの1つ上の世代は中学の時に関東リーグで優勝していて、2つ上の世代もプレミア関東を優勝していて、僕たちも何かを残したいという話をずっとしていて、もちろん優勝はしたかったですけど、そこでクラブユースのベスト4まで進めたことは凄くポジティブに捉えています」。実際に中断明けからは、粘り強く勝点を重ねる試合が増えていったことも見逃せない。

ただ、個人としては悔しい現実を突き付けられる。ずっと目指してきたトップチームへの昇格は、叶わなかった。「本当に上がりたかったですし、少し上がれるだろうという気持ちも出てしまっていました。そこは詰めの甘さもあったと感じますけど、高卒でトップに上がれなかったとしても、サッカー人生が終わるわけではないですし、これからの道でしっかり前を向いて、本当に『逃がした魚は大きかったな』と思ってもらえるようにしたいですね。このクラブに戻ってくるかもしれないですけど、他のクラブで活躍するかもしれないですし(笑)、この経験をステップにして、これからも頑張っていきたいです」。大学での4年間は、プロサッカー選手になるために改めて自分を見つめ直す時間。もう気持ちはすっかり切り替えている。

キャプテンという重責を背負って戦ってきた1年間。きっと自分のことも、チームメイトのことも、今まで以上に深く考えながら、ピッチに立ち続けてきたに違いない。それでも、その苦労を感じさせない明るさと軽やかさが、“銀ちゃん”の最大の特徴だ。「あまりキャプテンとしての難しさはなかったです。普段も自分からいろいろなことを動かしていくタイプなので、そこを変えたりすることはなくて、これが当たり前のスタンスなので、みんなも付いてきやすいのかなって(笑)」。

「トップ昇格の選手が決まってからは反骨精神じゃないですけど、『やってやるぞ』みたいな感じで、逆に『自分には何が足りないか』とか、『もっとこういうストロングを伸ばしていこう』とか、自分を客観視することもできましたし、信義さん(小野監督)とも『相当成長できたね』という話もできたので、自分の選手としての価値をもっと上げていきたいなと思います」。

ここから踏み出していくのは、未来へと続くネクストステージ。池谷銀姿郎の新たなチャレンジも、きっと多くの笑顔の中で力強く前進していくことに、疑いの余地は微塵もない。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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