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サッカー フットサル コラム 2022年11月30日

現在のスペインは10年前とは違う ドイツとの試合を生温いまま終わらせた影響も考えられる

後藤健生コラム by 後藤 健生
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ルイス・エンリケ監督 セルヒオ・ブスケツ

ドイツ戦でセルヒオ・ブスケツに指示を出すルイス・エンリケ監督

ワールドカップ本大会の組み合わせが決まって以来、ドイツ代表とスペイン代表の試合はなるべくチェックするようにしていた。

すると、両チームとも10年ほど前の全盛時代ほとの強さがないことは明らかだった。とくに、9月に行われたネーションズリーグではそれぞれの課題が明らかになった。

ドイツの弱点は、ドイツ・メディアからも再三指摘されていたようにDFラインの脆さだった。守備力にも問題があるし、最終ラインから中盤までのパスのつなぎにもミスが多かった。

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だから、ドイツ戦の後半、日本代表が攻撃的布陣にシフトしてからの展開は、ある意味予想通りだった。むしろ、日本は前半を抑えすぎたというのが僕の感想だ。前半からもっと前からのプレスを仕掛けるべきだった。さすがにドイツの選手の技術レベルも高く、仕掛けてもかわされる場面もあったが、それでも仕掛け続けることで相手にミスが生まれたはずだ。前半終了間際の“2点目”が取り消されたからよかったものの、2点差だったら逆転は難しかっただろう。

では、スペインのウィークポイントはどこにあるのか。それは「得点力不足」だろう。

スペイン代表のパスをつなぐ技術は間違いなく世界最高峰のレベルである。

日本が前からプレッシングを仕掛けていっても、そう簡単にはボールを奪えない。行きすぎたらかわされてピンチにつながりかねない。相手のパスコースを少しでも制約するために、強度をコントロールしながらプレッシングを仕掛ける。かなり難しい作業だが、これを繰り返すしかないだろう。

従って、パスをつながれることは覚悟しなければならない。スペインがボールを握って攻撃を続け、日本の全選手が守備で完璧な動きをして耐え続ける。そんな時間が長くなることは間違いない。

昨年の東京オリンピックの準決勝でも、日本はスペインと対戦した。オリンピックの試合とはいえ、オーバーエイジも含めて多くの選手がワールドカップにも出場している。

オリンピックの試合でも、やはりスペインの攻撃を日本が耐える時間が続いたが、それでも日本は延長後半まで無失点で乗り切ったのだ。

両チームはオリンピック直前の準備試合でも対戦しており、そういう意味では互いを十分に知っているチーム同士の戦いなのだ。そして、もちろん両チームともワールドカップ開幕後の2試合については徹底的に分析しているはずだ。

とにかく、オリンピックの準決勝のような戦いを繰り広げることが日本代表の最初のタスクとなる。

ただし、オリンピックでの対戦と違うことが2つある。

まず、グループリーグの戦いなので延長戦はないこと。つまり、90分を終えてスコアレスドローに持ち込むことは、日本にとって十分に可能なことだ。オリンピックでは疲労で足が止まって延長後半に失点してしまったが、今回は90分を耐えればいい。

コスタリカ戦をせめて引き分けで終わらせておけていたら、引き分けでのグループリーグ突破も考えられたので、「敗戦」は返す返すも残念な結果だった。その結果、日本はスペインに勝たなければグループリーグ突破が不可能な状況にあるのだ(引き分けた場合にも可能性は残るが、ドイツとコスタリカの試合で引き分け、または1点差でのドイツ勝利というのはあまり現実的でない)。

日本は、守備的な試合をしながらも、なんとか最低でも1ゴールを奪わなければならないのだ。

日本がコスタリカに敗れた同じ11月27日の夜、スペインとドイツの試合が行われた。今大会のグループリーグの中でも“屈指の好カード”なので楽しみにしていたのだが、試合はかなり生温いものだった。

前半は、互いに構えて守っている時間が長く、後半に点を取り合った頃には多少はヒートアップしたが、1対1のまま残り時間10分を切ると互いにあまり攻撃を仕掛けなくなってしまった。

午後の試合で日本がコスタリカに敗れたため、ドイツの選手にもスペインの選手にも「最終戦で日本やコスタリカを破ればグループリーグを突破できる」という意識が働いたのだろう。

もう一つ、分かったのはスペインにも守備の弱点がありそうなことだった。

前半のドイツは、スペインをリスペクトしたのか、あまり前線から仕掛けることなく引いて構えて守っていた。スペイン相手ではプレッシングを仕掛けてもかわされてしまうので、スペインと対戦するチームはこういう戦い方をすることが多い。

ところが、驚いたことにさして強力なプレッシングを受けているわけでもないのに、スペインの守備陣に単純な「アンフォースドエラー」が何回か生じたのだ。なんと、セルヒオ・ブスケツがパスミスをした場面すらあった。

また、以前から様々なところで指摘されているように、スペインの両サイドバック(右がカルバハル、左がジョルディ・アルバ)は攻撃的なサイドバックだが、彼らの裏のスペースは狙いどころの一つとなる。

日本のサイドハーフもしくはウィングバックがここを狙えたら面白い。伊東純也のスピードや、ワールドカップ・レベルでも十分に通用することが証明された三笘薫の独特のリズムのドリブルに期待したい。

スペインのパスの技術を考えると、前線からのプレスでボールを奪うことは難しいだろう。だが、そこで少しでもパスコースを限定出来たり、パスのタイミングを狂わせることができれば、ボールがスペインのMFに渡った瞬間にボールを奪えるかもしれない。

テクニックに自信を持つスペインは、多少無理な体勢からでもロングボールを蹴ったりせずにつないでくる傾向がある。そこを、日本のMFが狙うのである。つまり、コスタリカ戦の失点場面の裏返しの形だ。

守備を完璧に機能させながら、数少ないチャンスを狙って、そのワンチャンスを逃がさずに決める。各選手がそれぞれのタスクをこなした上で、それを90分間続ける。そして、再展開によっては(スコアレスのまま、残り時間が少なくなった場合)ドイツ戦の後半のように超攻撃的布陣に切りかえる必要も生じるだろう。そのタイミングの見極めを誤れば大量失点を招きかねない。タイミングの見極めは、森保一という監督の力量が試される部分である。

僕は大会開幕前にはドイツには勝てる可能性がかなりあるだろうが、スペイン相手に勝つことは難しいと思っていた。だが、先日のスペイン対ドイツ戦を見た後で、日本が勝てるという可能性が上がったような気がした。「最終戦で勝てばいい」とばかりに生温いままで試合を終わらせたことが精神的に影響し、日本戦でのパフォーマンスに影響を与える可能性もある(ドイツ戦の勝利の後、日本がコスタリカ戦で集中を欠いていたのと同じように)。

スペインは明らかに日本より強い。10回試合をしたら、6回か7回はスペインが勝利するだろう。だが、2回か3回は日本が勝つ可能性がある。最近のスペインの出来を見ると、そんな気がするのだが……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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