人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2022年10月26日

疾風怒濤のサイドアタッカー。流通経済大柏高校・大川佳風が携えてきたリーダーの自覚 【NEXT TEENS FILE.|高円宮杯】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
  • Line

自分がキャプテンに向いているのかどうかは、今でもわからない。個性派揃いのチームをまとめることの難しさは容易に想像できていた。でも、やるしかない。自分のために。スタッフのために。何より3年間苦楽をともにしてきたチームメイトのために。とにかく、やるしかない。

「自分たちは去年と違ってノリと勢いが大事な代なんですけど、この代のキャプテンをやらせてもらえるというのは、自分の人生の中でも良い経験になると思うので、サッカーを一番楽しんでやりたいなって。基本的なところで『サッカーを楽しむ』ということを忘れてはいけないチームなので、そこは常に良い雰囲気に自分が持っていけたらなと思っています」。

どの年代を見ても、強烈なキャラクターを有したタレントが居並ぶ流通経済大柏高校。その強豪校で2022年度のキャプテンを任されているのが大川佳風だ。昨年から右サイドバックでレギュラーを張り続け、年代別代表や高校選抜にも選出されるなど、貴重な経験を積み重ねてきた男にとっても、この集団を束ねていくことは並々ならぬパワーが必要だ。

ここまでのシーズンは、苦しい時間の方が長かったと言っていいだろう。練習試合でも勝利が続き、自信を持って向かったプレミアリーグでは思ったように白星を挙げられず、インターハイの千葉県予選も準決勝で敗退。結果が付いてこない日々に、チームの中にも温度差が生まれがちだったという。

だが、この夏を越えたあたりから選手たちの間にも、間違いなくポジティブな競争意識が芽生えてきている。大川も「夏前ぐらいまではやる選手とやらない選手が分かれていたんですけど、そこからは各々が危機感を持ってやれているかなと。上に行きたい選手はどんどん突き上げて行けばいいですし、試合に出たい選手はもう這いつくばってでも上に付いていかないとダメだと思うので、それはチーム全員で意識できているのかなと思います」と確かな手応えを口にする。

リーグ後半戦は30番台や40番台という、大きな背番号を付けている選手の躍動も目立っている。彼らはいずれもシーズン序盤にプレミアでの出場機会を得られない時期を経ながら、ここに来て台頭してきた選手たち。「試合に出られるのは11人ですけど、競い合える選手はいっぱいいた方がいいですし、試合に出る気持ちがあるヤツが出れば、それが一番強いですよね。ウチには“雑草魂”を持っているヤツらがいっぱいいるので、彼らはメンタルも強いのかなと思いますし、そういう選手たちがここからプレミアにどれだけ食い込んで来れるのかが勝負ですね」。キャプテンも激しい競争は大歓迎だ。

大川自身も夏を過ぎると、“コンバート”という大きな変化を迎えていた。サイドバックから、サイドハーフへ。「サイドバックの方が前向きでプレーできて、組み立てにも関われますけど、もともと攻撃面には自信を持っていますし、他の人以上に経験してきたことややってきた練習量は絶対に多いので、前でやれる自信はあります」。新たなポジションにも意欲的に取り組んでいる様子が窺える。

数字という結果も、もちろん頭の中では常に意識している部分だ。「攻撃は好きなので、やりたいようにやればとは言われていますし、サイドバックから1つポジションが上がったからこそ、結果がより求められると思うので、そろそろゴールは獲りたいですね」。第4節では素晴らしい直接FKを沈めているが、以降はまだノーゴール。この男の得点がチームの雰囲気を一層盛り上げることに、疑いの余地はない。

もうこの仲間たちと一緒にプレーできる時間も、決して長くはない。「高校生活も最後ですよ。2年の時に一気にいろいろなことを経験して、そこからの記憶はそんなにないんですよね(笑)。ここまでが早過ぎます」と笑いながら、シーズンの終盤戦に向けて紡いだ大川の決意が力強く響く。

「去年の選手権は先を見過ぎたというか、目の前のことに集中できなかったんですけど、今年はチームメイトとも一戦必勝というのはずっと言っているので、先のことを見るのも大事ですけど、自分が目の前のことに集中できれば、自ずとチームも同じ方向に向かうと思います」

「本当に夏は苦しい思いをしましたけど、今はそれをプラスに捉えていますし、そこは自分たちが強くなるために必要な苦しい時期だったと感じているので、残された時間で今までやってきたことを思い切ってやれば、結果は出てくるかなと思います。不安はないです。力は絶対にあるので。あとはチームが1つになるだけですね」。

悩んで、もがいて、苦しんできた分だけ、その時間は大きなエネルギーに変わっていく。今年の“リュウケイ”を牽引してきたキャプテン。大川の真価が発揮されるのは、むしろここからの一番シビアなステージだ。

文:土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ