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悔し過ぎる“敗退”から1か月。過程を重ねる柏レイソルU-18は勝っても負けても前を向く【高円宮杯プレミアリーグEAST 柏レイソルU-18×横浜FCユースマッチレビュー】
土屋雅史コラム by 土屋 雅史花松隆之祐
もちろん勝てたなら、それに越したことはなかっただろう。悔し過ぎる“敗退”からちょうど1か月経って、再び迎えた公式戦の舞台。あの経験をどう消化し、どう成長の糧に変えてきたかを、証明するために迎えた最初の90分間だったのだから。ただ、勝つことだって、負けることだって、それこそ引き分けることだって、サッカーにはある。その結果を重ねていくことが、日常を生きていくということだ。
「クラブユースに引き続き、みんなで練習から1つになって準備してきただけに、負けてしまったので悔しい面もあります。ただ、リーグ戦ではここで下を向いても意味がないですし、また来週の土曜日に試合があるので、自分を中心に気を引き締めて、そこに向けて火曜日から準備していきたいと思います」(柏レイソルU-18・西村龍留)。
“抽選負け”からのリスタート。逞しさを纏いつつある柏レイソルU-18の選手たちは、もうとっくに前を向いて、明日への一歩を踏み出している。
「僕たちはいろいろな攻撃の形を作りながら、何回も何回も攻撃をして点を獲りに行くようなチームなので、そういう面では今日は何もやらせてもらえなかったなという印象です」。チームの副キャプテン。スタメンで登場し、83分までプレーした瀧澤一心はそう語る。7月以来のリーグ戦となったプレミアリーグEAST第13節。横浜FCユースをホームで迎え撃った柏U-18は、0-2で敗戦。勝ち点を積み上げることはできなかった。
躍進したこの夏のクラブユース選手権。太陽王子を待っていた結末は、残酷なものだった。日本一まであと一歩に迫った準決勝。横浜F・マリノスユースに2点を先制されながら、前半の内に2点を返し、追い上げムードだった柏U-18だったが、ハーフタイムに差し掛かる少し前から雷が鳴り出してしまう。雨脚もどんどん強くなり、試合は中止が決定。最後は“抽選”という形で、横浜FMユースが決勝進出。柏U-18は負けることなく、大会を去ることとなる。
柏レイソルU-18のムードメーカー、副キャプテンの瀧澤一心
「間違いなく忘れられない出来事です。一昨日も雷が鳴って、紅白戦が1本なくなったので、自分たちには雷が付いているのかなと思いましたけど(笑)、クラブユースの経験というのは、スタメンで出た人も、ベンチだった人も、ベンチ外だった人も、もちろんスタッフも、映像を見て応援してくれていた人たちも、各個人の頭の片隅には絶対に残っていると思いますし、自分たちの特徴はここだなということが明確にわかりましたし、チームが1つになるとどれだけ強いのかがわかったんですよね」と話すのは、キャプテンを託されている西村龍留。当然悔しい想いは残ったものの、それと同じくらいの自信も得られたのが、真夏の全国大会だったことは間違いない。
3年生は今年がアカデミーで過ごすラストイヤー。来年からはトップ昇格者以外は通い慣れた日立台を飛び出し、それぞれが新たな道へ進んでいくことになる。クラブユース選手権が終わると、進路のことも現実的な問題として浮上。これが選手たちに与えた影響を、チームを率いる酒井直樹監督はこう語る。
「彼らはちょうどクラブユースが終わった後に進路活動がメインだったので、リーグ戦までの間にセレクションに行ったり、練習参加に行ったりして、大学に決まる決まらないという、そういう時期だったんです。彼らは真面目なので練習はするんですけど、友達同士で『オマエどうなった?』『オマエどうする?』みたいなことをずっと話している感じだったので、本当の意味で集中できていないところで、練習中に何回か僕がビシッと言ったこともありました」。
瀧澤もその空気を敏感に感じていたようだ。「今週の初めの練習で『ちょっとぬるいな』というところがあって、プレミアが始まることはわかっているんですけど、ちょっとボヤッとしているというか、『始まるなあ』ぐらいのチームの雰囲気だなということは感じていました。そこでキャプテンの西村選手と『ちゃんと雰囲気を変えていこう』という話をして、そこからはちょっと雰囲気が良くなっていって、チームとしても結構モチベーションが上がっていったと思います」。
柏レイソルU-18を牽引するキャプテンの西村龍留
やはりそこは高校生。いろいろな要素がピッチ上のパフォーマンスに乗ってくる。この日のゲームに敗れた陰には、前述した進路のことや、あるいは他の理由があって、いつものような集中力を保てなかった選手がいたのかもしれない。ただ、勝つことだって、負けることだって、それこそ引き分けることだって、サッカーにはある。大事なのはそこに至る過程の部分。クラブユース選手権での躍進を振り返る、瀧澤の言葉が印象深い。
「自分たちは大きな大会で上まで行ったことがなくて、ああいう経験は初めてだったんです。でも、2年生の時から酒井監督と藤田(優人)コーチの体制になって、結構厳しい練習を積んできたので、『やってきたことはしっかり結果に出るんだな』ということがわかったのは凄く大きくかったですね。クラブユースが終わった後も、結構キツい期間があったんですけど、その時も『またここを乗り切れば強くなれる』というチーム全体の認識があったので、あの夏の経験は『自分たちがやっていることは間違いじゃないんだ』という気持ちにさせてくれました」。
もうみんなと一緒にプレーできる機会も、短くなってきていることは否めない。残された仲間との時間に向けて、西村はこう想いを紡いでいる。「残りの活動日数も少ないですし、1日1日の練習をどれだけみんなで濃くできるかというのも、自分たちの練習の雰囲気に懸かってくると思います。あとは、自分たちから後輩へどういうものが還元できるのか、どういうものを残していけるかということもみんなで考えながら、1人1人が行動や発言を後輩に示していきたいですね」。
“抽選負け”からのリスタート。みんなで濃厚な過程を積み重ねてきた今年の柏U-18が、チームとして、またそれぞれが個人として、ここからさらにどういう成長を遂げていくのか、今から非常に楽しみだ。
文:土屋雅史
高円宮杯 JFA U-18 サッカープレミアリーグ2022 EAST 第13節-2
【ハイライト動画】柏レイソルU-18 vs. 横浜FCユース
土屋 雅史
1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。
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