人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

サッカー フットサル コラム 2022年8月14日

狙い通りの内容でオランダに快勝 U−20女子日本代表(ヤングなでしこ)のW杯連覇に期待

後藤健生コラム by 後藤 健生
  • Line
J SPORTS

J SPORTS

FIFA U−20女子ワールドカップが中米コスタリカで開幕。初戦でオランダと対戦したU−20女子日本代表(ヤングなでしこ)は1対0で快勝。大会連覇に向けて好スタートをきった。

オランダの女子サッカーはこのところ発展を遂げており、7月に行われた女子EUROでもグループリーグを突破。準々決勝では強豪フランスと対戦して、延長戦の末に0対1で敗れている。体の大きな選手やスピードのある選手がいるチームだけに、日本にとってはやりにくい相手かとも思われた。

とくに、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で日本の各カテゴリーの代表チームは海外勢との対戦経験が少ないので、初戦ということもあって不安もあったことだろう。

しかし、日本チームはキックオフ直後からゲームを完全に支配した。

何より素晴らしかったのは中盤での組織的な守備だ。

ボールを持ったオランダ選手に、たえず複数の選手がアプローチをかけてパスコースを消してしまう。そのため、オランダはボールを下げるしかなくなってしまう場面が何度もあった。日本チームはオランダにボールを持たせながら外に追い出し、3−5−2のU−20日本代表はタッチライン際でボランチとウィングバック、そしてセンターバックが連携して数的優位を作ってボールを奪い取った。

しかも、奪ったボールを正確につなぐこともできていた。狙いをもってボールを奪えば、その瞬間にパスコースができているのだ。そのため、奪ったボールを再び奪い返されるような場面はほとんどなく、早いタイミングで変化のあるワンタッチ、ツータッチのパスがつながってオランダ守備陣を崩すことができていた。

アンカーの位置にいた大山愛笑がうまくボールを散らし、1トップ+2シャドーに直接預ける形とサイドに開く形のバランスもよかった。

こうして、ゲームを支配した日本は、開始直後の藤野あおばのミドルシュートを皮切りに、オランダ・ゴールに向けて90分間合計で27本ものシュートを放ち続けた。攻撃をシュートで終わらせることができたことで、カウンターを浴びる危険も回避できたわけだ。

前半の20分を過ぎると、右センターバックの田畑春菜が高い位置を取ってサポートできるようになったため、右サイドでシャドーの天野紗やウィングバックの杉澤海星が絡んで分厚い攻撃を仕掛ける時間を作った。

そして、23分、その田畑から早いタイミングで中盤にボールが送られた瞬間にスイッチが入ったようだった。田畑から天野紗、そして浜野まいかに素早くボールがつながり、浜野が相手DFの裏のスペースにアウトサイドで転がした。そして、その瞬間、相手DFとオフサイドの駆け引きをしながら、山本柚月が裏のスペースに走り込んでフリーとなってファーサイドに決めた。

浜野にボールが渡った瞬間にベンチの池田太監督から「背中取れ!」という声が上がり、同時に山本は裏のスペースを指さしながらオフサイドぎりぎりのタイミングで走り込んだ。つまり、選手たちや監督が共通のビジョンを描いていた鮮やかな1点だったのだ。

その後はオランダがフィジカル的な優位を生かして日本のゴール前に迫る場面も出てきたが、前半は日本が完全にコントロールしたまま終了した。

日本は前半だけで13本ものシュートを放っていた(オランダはわずかに1本)。だが、枠内シュートはたったの2本。これだけ、チャンスを多く作ったのだから、前半のうちにもう1点は決めておくべき試合だった。入る入らないは別として、せめて枠内にシュートを飛ばしたかった。

こういう流れで、点が取れないまま時間が経過すると、ミスなどで失点して勝点を失うこともサッカーではよくあることだ。

事実、後半に入るとオランダはロングボールを蹴ってフィジカル勝負をしかけてきたので、押し込まれる時間帯もあった。

もっとも、オランダの決定機は、雨の中の−プレでGKの福田史織がボールをつかみ損ねた場面を含めてもほんの数回。日本の守備陣もしっかりと対応していたし、最終ラインは体を張って(時にはイエローカード覚悟で)体の大きなオランダの攻撃を跳ね返し続けた。

後半も、さらに14本のシュートを放ち、そのうち6本を枠内に飛ばした日本。追加点こそ奪えなかったものの、最後の時間では最終ラインでボールを回したり、前線でボールをキープしたりと、うまく時間を使ってゲームを終わらせることもできた。

もちろん、早めに2点目を奪って、もっと楽に試合を終わらせておくべきだったが、それでも初戦で狙い通りの試合ができたことの意味は大きい。あとは、シュートをもう少し正確に蹴るだけだ。

日本は8月14日(日本時間15日)のガーナ戦に勝利すれば、決勝トーナメント進出に大きく近づく(アメリカ対オランダ戦の結果によっては、早々に日本の勝ち抜けが決まる可能性もある。

U−20女子ワールドカップは、2020年大会が新型コロナウイルスのパンデミックのため中止になってしまい、今回は4年ぶりの大会となった。

その4年前の大会で日本は素晴らしい内容で優勝を遂げている。

4年前の大会ではグループリーグ初戦でアメリカに苦戦しながらも1対0で勝利したが、2戦目ではスペインに敗れてしまった。しかし、パラグアイに大差(6対0)で勝って準々決勝進出を決めると、その後はドイツに3対1、イングランド2対0、スペインに3対1と強豪相手に複数得点差を付けて連勝して、このカテゴリー初の世界タイトルを獲得することとなった。

連覇を狙う今年のU−20女子ワールドカップでも、初戦に勝ったことで今後はさらに落ち着いてプレーできるはず。

新型コロナウイルスの陽性者も出てチーム事情は苦しい中での連戦だが、もし2戦目でガーナに勝ってグループリーグ突破が決まれば、最終戦では休ませたい選手を休ませることができる。

日本の女子サッカーの将来のためにも、4年前と同じようにしっかりと勝ち切って再び優勝トロフィーを掲げてもらいたいものだ。

文:後藤健生
 

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

人気ランキング(オンデマンド番組)

J SPORTSで
サッカー フットサルを応援しよう!

サッカー フットサルの放送・配信ページへ