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6月に行われるキリンチャレンジカップなどに向けた日本代表のメンバーが発表された。
招集されたメンバーは28名。通常の活動時より少しばかり多い人数のスクァッドである。「4試合あるから」というのも一つの利用なのだが、「28人」というのはワールドカップ本番を見据えての数字でもある。
従来、ワールドカップ本大会では23人が登録されていた。だが、正式にはまだ決まっていないが、カタール大会では26名が登録できることになるといわれている。そうなれば、本大会では26名の登録メンバーとバックアップ数名の約30人程度で活動することになる。
さて、招集メンバーを見ての最初の印象は「変わりばえしない」だろう。メンバー発表記者会見の席では森保一監督自身も冒頭で「変わりばえしないと思われるかもしれないが……」と発言した。
森保監督は「俺のやり方に文句あるのかっ!」というタイプではない。サポーターやメディアの声をいつも気にかけている。だが、気にはしても、それに引っ張られることはない。「まずは戦術の浸透を図って完成度を上げ、その上でオプションを作る」という方針は揺るがない。
なにしろ、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で予選が後ろ倒しとなったため、予選突破から本大会開幕までの時間が短いのだ。ワールドカップの最終的なメンバーを決定する前に戦えるテストマッチは6月の4試合に加えて9月の2試合しかない。
しかも、ヨーロッパのシーズン中に行われる今年の大会では、事前合宿もほとんどできない。つまり、6月に「新戦力のテスト」をしている余裕はないのだ。
最初に「28人は本大会を見据えたものではないか」と書いたが、6月の4連戦はスケジュール的にも本大会のシミュレーションだ。
つまり、「中3日の4連戦」という日程である。
今年のワールドカップは11月から12月、つまりヨーロッパのシーズン真っ盛りの時期に行われるため、大会の期間も11月21日から12月18日までの28日間。従来の大会より若干短くなる。そのため、グループリーグの間は全チームが中3日で試合を行う。日本は11月23日に初戦のドイツ戦があり、27日にニュージーランドまたはコスタリカ、12月1日にスペインと戦う。そして、もしグループEの2位で突破したとすれば、中3日でラウンド16を迎えることになる(1位通過だと中2日でラウンド16)。
「ベスト8進出」を目標とする以上、4連戦の4試合目までを戦い切る必要があるのだ。「グループリーグ突破後のラウンド16でもしっかり戦う」。これは、日本にとってはかなり難しいタスクであり、男女のあらゆるカテゴリーの世界大会で日本チームは決勝トーナメントの最初の試合(ラウンド16または準々決勝)で敗れている。
2018年のロシア大会では、4試合目をしっかりと戦うために、西野朗監督はまだグループ突破が決まっていないにも関わらず、最終ポーランド戦でメンバーを大幅に変更した。そのおかげで日本はラウンド16で強豪ベルギーと互角で渡り合うことができたのだ。
今回は、前回よりもはるかに厳しいグループに入っただけに3戦目(対スペイン)でメンバーを落とすことなどできないかもしれないが、やはり4試合を戦うための準備はしておくべきだろう。5試合目以降は日本にとっては(トルシエ元監督の言葉を借りて言えば)「ボーナス」のようなものだが、4試合目まではしっかり戦いたい。
6月シリーズも、本大会と同じく中3日の4試合という日程である。ブラジルという強敵相手の試合も含めて3試合を戦いぬいて、4試合目(キリンカップ決勝または三位決定戦)でも最高のパフォーマンスを発揮する。それが、6月の4試合の目的である。
だから、4試合の途中で“総取り換え”のような試合はすべきではない。
新しい選手、久しぶりの選手、あるいは新しいシステムを試すにしても、チームの骨格は残しながら、ポイント、ポイントで新戦力、新戦術を当てはめるようなテストの仕方にすべきだろう。
攻撃陣ではテストの範囲はかなり大きい。大迫勇也がメンバーをはずれたからだ。大迫の代わりのトップで誰を使うのか。その結論を得ることが最大のテーマだ。
Jリーグで素晴らしいゴールを量産している上田綺世なのか、長い離脱後に復帰してからもセルティックで多くのゴールを決めた古橋亨梧なのか、それともこれまでにも「控え」としてたびたび起用されてきた浅野拓磨なのか……。4試合を通じて、さまざまなテストが繰り返されるだろう。
アジア最終予選で苦況から抜け出せたのは、遠藤航、守田英正、田中碧のトライアングルがはまったからだ。
カタール大会でもこの3人がベースになるのは当然だが、人が変わっても同じようなパフォーマンスを示す必要がある。フランクフルトのヨーロッパリーグ優勝に貢献した鎌田大地が久しぶりに招集されたが、鎌田をどのように起用するのか。守田または田中の代わりにインサイドハーフとして鎌田を入れて4−3−3を継続するのか、それともかつて日本代表で鎌田がプレーしていた時のように4−2−3−1に変更するのか。
4試合の中のどこかで、2つのやり方(鎌田のインサイド起用か、4−2−3−1への変更か)を試すことになるだろう。
攻撃に比べて守備は組織が大事だから、守備陣ではそれほど大きな変更はないだろう。吉田麻也と冨安健洋のセンターバック。酒井宏樹の右サイドバック(今回は欠場だが)。これがベースで、後は左サイドを長友佑都にするか、中山雄太にするかである。
だが、ポジション柄、警告の累積で出場できないこともあれば、負傷で欠場のリスクもある。したがって、センターバックも吉田−冨安のコンビだけでなく、板倉滉や谷口彰悟、あるいは初招集の伊藤洋樹を起用してさまざまな組み合わせを試しておきたい。また、今回は酒井が不在なので、冨安をアーセナルでのようにサイドバックでテストするためには絶好のシチュエーションとなった。
つまり、守備陣は基本形は崩さずにコンビネーションを上げながら、毎試合1人、2人ずつ選手を入れ替えてみる。一方、攻撃陣ではさまざまな新戦力候補を大胆にテストして、“ポスト大迫”の攻撃の形を作り上げなければならない。
4試合を通してしっかりと戦い抜いて、4試合目でも勝つ。それが、2022年ワールドカップに臨む日本代表の目標だ。6月のテストマッチでも、ブラジルのような難敵とも戦いながら3試合目のガーナ戦までに勝点5以上を取って、さらに4試合目(キリンカップ決勝または三位決定戦)を勝ち切りたい。
つまり、6月シリーズは“模擬ワールドカップ”なのである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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