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サッカー フットサル コラム 2022年4月28日

寡黙なストライカー。FC東京U-18・熊田直紀はゴールで自らの価値を雄弁に語る 【NEXT TEENS FILE.|高円宮杯】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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熊田直紀

開幕から4試合で既に5ゴール。素晴らしいスタートを切っていることは間違いないが、本人はその結果に満足しているはずもない。ハットトリックを達成した前橋育英高校戦の試合後に語った言葉が、何よりもそのことを証明している。

「ゴールは獲れるだけ獲って、その試合に勝てればいいので、『その試合で何点獲る』という目標は作っていないです」。

FC東京U-18の攻撃陣を牽引する、才能豊かなレフティストライカー。勝負の1年に挑む熊田直紀は、ゴールを獲れるだけ獲り尽くし、数字という最大にして唯一の結果を出し続けることで、自らの価値を周囲に認めさせる決意を固めている。

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「正直もったいない1年だったというか、あまりチームのために戦えていなかったという想いがあります」。2021年シーズンを熊田はこう振り返る。2年生ながら9番を託されたものの、プレミアリーグでは4試合に出場してノーゴール。夏のクラブユース選手権でも得点を挙げることは叶わなかった。

もともとは福島県の出身。「プロサッカー選手になる」という大きな目標を携え、中学進学時にFC東京U-15むさしへと加入した。最高学年になった2022年。さまざまなジャッジを下されるアカデミーラストイヤー。飛躍の萌芽はプレシーズンにも現れていた。

3月の前橋。2022プーマカップ群馬でも、地元の強豪校でもある尚志高校相手に、熊田は力強く3発を叩き込む。今シーズンからはチームのシステム変更に伴い、4-3-3のシャドーを務めることに。「フォワードだとあまりボールが来ないというのがあって、それで技術が落ちたり、ゴール前に入った時のアイデアがあまり出なくなっていたので、ボールをたくさん触れる位置で『もっとサッカーをうまくなろう』という考えで、今はシャドーをやっています」と自身も前向きに取り組むことで、よりゴールへと直結するプレーが増えている。

プレミアEAST第3節の前橋育英戦。前述したようにハットトリックを披露したのだが、本人はゴール後もクールな姿勢を崩さなかった。左からのクロスをダイレクトで合わせた1点目はファインゴール。2点目も決して簡単ではない左クロスから得点を生み出すも、「アレはストライカーとして決めないとダメなので、そんなに評価するところではないかなと思います」と言い切っている。

 

だが、さすがに最後は感情が爆発した。3-3のタイスコアで迎えた後半アディショナルタイム。FC東京U-18がPKのチャンスを得ると、躊躇なく9番がスポットへ向かう。短い助走から左足で蹴り込んだボールは、左上の“神コース”へグサリ。その直後、ベンチメンバーの元へと走り出した熊田は、あっという間にチームメイトの歓喜の輪に飲み込まれる。「メッチャ嬉しかったし、一番はチームのために点を獲れて勝つことができたのが嬉しかったです」。劇的な決勝ゴールに、高校生らしい笑顔が弾けた。

それでも試合後に報道陣に囲まれたヒーローは、再びクールな表情に逆戻り。「まだ決められたシーンがあったので、惜しいというシーンをなくして、チャンスを全部モノにできるようにしていきたいです」とさらなるゴールへの意欲を口にすれば、「ボールロストすることが多かったので、そこはもっと周りを見て、落ち着いてプレーしていきたいと思います」とも。飽くなき向上心が頼もしい。

実は取材の順番の関係で、熊田と一緒に他の報道陣の囲み取材が終わるのを待っている時間があった。話を聞かれていたのは、1年生ながらスタメン起用で好パフォーマンスを発揮した佐藤龍之介。その様子を眺めつつ、「カワイイですよね」と呟きながら浮かべた微笑みに、彼の持ち合わせている優しさが垣間見えた。

その直後。普段の表情に戻った熊田が、やはり呟くように残した言葉がとにかく印象に残っている。「今年はマジで得点王、狙ってます」。

何かを起こしそうな雰囲気は、今までもずっと漂わせていた。ようやく何かを起こし始めてはいるが、きっとまだまだこんなものではないはずだ。誰もが想像し得る領域を、さらにあっさりと超えてしまう“何か”を成し遂げそうな期待感が、このストライカーには秘められている。

 

文 土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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