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サッカー フットサル コラム 2022年4月5日

こじ開けた歴史の扉。川崎フロンターレU-18が挑んだプレミアデビュー戦 【高円宮杯プレミアリーグEAST 大宮アルディージャU18×川崎フロンターレU-18】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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温厚な指揮官が煽ったのをきっかけに、選手とスタッフが次々に最高の笑顔を浮かべながら、ハイタッチを交わしていく。新たな船出を勝利で飾ったのだ。その喜びは十分過ぎるほど理解できる。

「フロンターレは昔から、『トップで活躍できる選手を育てよう』ということで、ジュニアからユースまでスタッフで協力しながらやってきたんですけれども、やはりユースが一番上のレベルでやらないと、現状が分からないということで、『選手を育てながらその舞台まで行こう』という目標で常にやってきました。その結果、去年の選手たちが頑張って、この場所へ連れてきてくれたんですけど、プレミアで戦うことで、ここからどういうふうにフロンターレのサッカーが通用していくのかも分かりますし、逆に改善点も見えると思うので、ここから新しいフロンターレアカデミーの歴史がスタートするという想いですね」。

長橋康弘監督の言葉が、彼らの今を過不足なく表わしている。まさに新しい歴史のスタート。短くない時間を地道に積み重ねてきた川崎フロンターレU-18が、とうとうプレミアリーグという世代最高峰のステージに解き放たれた。

「凄く楽しかったです。思っていたより緊張もあまりしなかったですし、『楽しくできたなあ』という感じでした」とキャプテンマークを巻いた大関友翔が話せば、決勝ゴールを挙げた川口達也も「自分は楽しめましたね。ボールを持てる回数も多かったですし、やっぱり点を獲れて、チームに勝ちを持ってこれたことが良かったなと思います」と同じような感想を口にする。楽しみにしていたプレミアの舞台。とにかくこの日が来るのが待ち遠しかった。

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「プレミアの最初の試合というところで、チーム全体としてどれぐらい通用するのかが凄く楽しみだったんですけど、自分たちのサッカーが結構できたなという手応えはありますし、個人としても自分のプレーは見せられたかなと感じています」と語る大関、大瀧螢、由井航太で構成された中盤のトライアングルは、トップチームのそれと同じような機能性を保ち、止めて、蹴って、運んで、ボールを動かしていく。

最終ラインでは松長根悠仁と信澤孝亮の3年生センターバックコンビが安定感を発揮した中で、興味深いパフォーマンスを披露したのは左サイドバックの元木湊大だ。右利きの左サイドバックという特性は、トップチームで定位置を掴みつつある佐々木旭と同じ。右足でオープンに持ちつつ、機を見て中にも縦にも正確なボールを付けられる技術は、いわゆるサイドバックのそれではない。こういう2年生がプレミアの開幕戦で出てくるところに、チームとして積み上げてきているものの厚みが垣間見える。

先制点であり、決勝点となったPKの際には、面白いシーンがあった。最前線でスタメン起用された尾川丈がファウルを受け、主審がPKを指示。蹴る気満々だった大関がラインの外へと転がっていったボールを拾い、スポットに向かおうとすると、既に川口達也がボールパーソンから違うボールを受け取り、キックの準備を始めていたという。

「蹴りに行こうと思ったんですけど、達也がもう新しいボールを持っていたので、『ああ、自分じゃないか』と(笑)。『達也が決めてくれればいいや』と思って、そこは引きました」(大関)「PKになった瞬間に、みんなファウルを受けた選手のところに行ったんですけど、自分だけボールを取りに行ったんです。いつもは(五木田)季晋が蹴っているんですけど、今日は欠場だったので、自分が蹴ろうと思いました」(川口)。

結果的に川口がきっちり沈め、貴重なゴールを記録。「自分も蹴りたかったですけど、達也が凄く決めそうな雰囲気も出していたので、『決めてくれる』とは思っていました」と大関。この2人の言葉を聞いても、彼らがそれぞれのチームメイトに対して感じている信頼が透けて見えて、面白い。

先日のW杯アジア最終予選・オーストラリア戦でも、川崎のアカデミーで育った田中碧と三笘薫が躍動。カタール行きの切符獲得に大きく貢献した。「やっぱり選手たちもそういう活躍に刺激をもらったのか、次の日のトレーニングに取り組む姿勢もだいぶ変わりましたね。『単純だなあ』と。『毎日やってくれ』という感じですけど(笑)、意識はしてくれていますし、凄く良い感じだと思います」と笑った長橋監督も、OBが与える影響をひしひしと感じているようだ。

そんな先輩たちも立つことの叶わなかったプレミアのピッチは、彼らの成長曲線をより急角度で伸ばしてくれるだけのステージであることは間違いない。指揮官が発した言葉に、教え子たちへ寄せている自信が滲む。「まだまだ選手たちはできると、私は思っています。選手たちとも『やるからには優勝を目指そう』ということで、プレミアは初めての挑戦になりますけれども、優勝を目指してやっていきたいです」。

水色と黒のエンブレムに受け継がれてきた、歴史と伝統の到達点であり、出発点。ようやく辿り着いたプレミアデビュー。川崎フロンターレU-18が自分たちでこじ開けた扉の先には、先人たちをさらに超えていくための大きな希望が、果てしなく広がっている。

 

文 土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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