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サッカー フットサル コラム 2022年4月1日

J2で得点を重ねる小川航基。故郷、横浜でシュートの才能が開花?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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3月30日に第7節までを終了したJ2リーグでは横浜FCが6勝1分と無敗を堅持して首位を走っている。ホームのニッパツ三ツ沢球技場で行われた第7節でも、横浜FCはモンテディオ山形に2対1と競り勝った。

昨シーズンはJ1残留に失敗したものの、リーグ終盤戦では内容的には非常に良いサッカーをしていた横浜FC。J1で活躍した選手たちがそろっており、戦力的にも充実。四方田修平監督が就任して今シーズンは、早くも前線からプレスをかけていくアグレッシブな守備が確立され、また、昨シーズンまで絶対王者の川崎フロンターレで準レギュラーとして活躍していた長谷川竜也が加わって、シャドーのポジションで攻撃の組み立てとして活躍している。

一方、アンジェ・ポステコグルー監督の下、横浜F・マリノスでアシスタントを務めていたピーター・クラモフスキー監督(その後、清水エスパルス監督)の下で新しいスタイルを確立しつつある山形。第7節を終えて19位と結果は出ていないが、内容的には悪くない。横浜FC戦でも2点目を奪われた後、すぐにFKの後の流れから1点を返すと、その後は猛攻を仕掛け、シュート数でも12本対6本と横浜FCを上回り、終盤には「あわや同点」の場面を何度も作っていた。

横浜FCとしては、小川航基が決めた貴重な2ゴールを守り切った形だ。

横浜FCはワントップのフェリペ・ヴィゼウの下、左のシャドーに長谷川、そして右のシャドーに小川という布陣だったが、小川はこの日も2ゴールを加えて7試合で6ゴール。1試合1ゴールに近いペースで得点を決め、J2の得点ランキングでも首位に立っている。

前半の19分。横浜FCにはゴール前でFKのチャンスがあったが、手塚康平のシュートがゴールポストをかすめてはずれたが、小川のスーパーゴールが生まれたのはその直後だった。自陣深い位置の手塚からパスを受けた小川は、まず山形の加藤大樹のチャレンジに耐えると、南秀仁もかわす。そして、小川が約25メートルの距離から右足を振りぬくと、ドライブがかかったボールがGK後藤雅明の頭上を抜けてゴールネットに突き刺さったのだ。

2点目は、65分のことだった。山形のゴールキックの場面でボールを受けたDFの野田裕喜がドリブルで前に持ち運ぼうとしたところを、交代で入ったばかりの横浜FCの伊藤翔が体を当てて強引にボールを奪い取り、DFとGKを引き付けてから小川にパス。小川は、慌ててシュートコースに入ろうとしたDFのタイミングをはずして冷静に流し込んだ。

2点とも、小川の好調ぶりを示す得点だった。

1点目の場面。相手2人をはずして前を向いた瞬間、小川にはいくつかの選択肢があったはずだ。だが、そこでまったく迷うことなくシュートを選択したのだ。点が取れないで迷っている選手だったら、まずパスコースを探してしまったことだろう。だが、ノッているFWはそこで思い切ってシュートを選択できるのだ。

迷いがないからこそ、自然な振りで力みなくシュートを撃てたのだろうし、だからこそ強烈なドライブがかかった美しい軌道のシュートとなったのだ。

2点目は、もちろん半分以上は伊藤のゴールだ。相手からボールを奪い取った場面は、多少、荒っぽいところのある伊藤らしいプレーだったし、ペナルティーエリア内に持ち込んでからシュートを撃つ姿勢を見せて相手の中位を完全に引き付けてから出したパスはテクニックのある伊藤ならではのもの。

小川にとっては、GKがいないゴールに流し込むだけではあった。だが、シュートコースを消そうとしていた相手DFの動きもしっかりと見ながら、冷静に狙ったコースに流し込んだあたりは、やはり小川の好調さを示している。

1点目のミドルシュートでも分かるように、小川航基は高校時代(神奈川・桐光学園)からシュート技術の高さでは定評のある選手だった。しっかりと振り切って、美しい軌道のシュートを蹴ることができるのが、小川の最大の魅力だ。

当然、将来は日本代表のエースとして成長するかと期待は高かった。しかし、2017年に韓国で開催されたU-20ワールドカップでは初戦で得点を決めたものの、2戦目のウルグアイ戦の前半に前十字靭帯損傷という大怪我をしてチームを離脱してしまった。

その後も、2020年の東京オリンピックを目指すチームにも招集され、また2019年のE-1選手権(東アジア選手権)ではA代表(国内組のみ)入りも果たし、香港戦でハットトリックを決めた。

だが、高校を出て加入したジュビロ磐田では、なかなか結果を出せず、出場機会も十分に与えられなかった。2019年には水戸ホーリーホックに期限付き移籍してJ2で7得点。翌年は磐田には復帰して9得点と、いよいよ完全復活間近かと思われたが、2021年にはFWの座をルキアンに奪われて、J2リーグ戦でわずか1得点に終わってしまった。

その小川が、今シーズンから横浜FCに完全移籍。生まれ故郷である横浜のクラブでその才能を発揮し始めたのだ。

横浜FCではワントップではなく、シャドーの位置でプレーすることが多くなったが、小川の最大の魅力は山形戦で見せたような距離のあるところからの美しいシュートなので、シャドーというポジションは小川の適性に合っているのかもしれない。

ついに待望の小川のシュート技術が生かせる日が来たのだろうか。

“得点力のあるFW”は、現在の日本代表にとっても必要とされる最後のピースである。

オーストラリア戦でもベトナム戦でもあれだけ多くの得点機会がありながら、シュートが決まらない。世界の強豪と対戦するワールドカップ本大会では、それほど多くの得点機は作れないだろう。少ないチャンスに確実に決めきるには、やはりシュート技術のあるFWがほしいのだ。

もちろん、大迫勇也が負傷を克服して完全復活してくれるかもしれないし、上田綺世が才能を発揮するようになるかもしれない。点取り屋候補としては前田大然や古橋亨梧もいる。だが、小川にだって挑戦する資格はある。

高校時代から期待が高かった選手だから、もうベテランのようにも感じるが、小川はまだ今年の夏で25歳を迎える、東京オリンピック世代の選手なのだ。今からでも、決して遅すぎることはない。

とくに、「点取り屋」というのはサッカーの世界の中では特殊能力の持ち主ということになるので、年齢とは関係がないポジションとも言える。たとえば、あのレスター・シティーのミラクル優勝の立役者の1人だったジェイミー・ヴァーディーがイングランド代表に初招集されてデビューしたのは28歳の時だった。

そして、小川の場合にはオリンピック代表でもE-1選手権での日本代表でも、すでに森保一監督の下で選出された経験もあり、いわゆる「ラージグループ」の一員ではあるのだ。J2リーグといえども、これからも素晴らしいゴールを決め続けていけば、ワールドカップ本大会でのサプライズ選出の可能性はゼロではない。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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