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伊藤純也
ワールドカップ・アジア最終予選もいよいよ大詰め。3月24日にオーストラリア、同29日にベトナムと対戦する日本代表のメンバーが発表された。
日本が所属する予選B組では、すでに各チームが8試合ずつを終了。サウジアラビアが6勝1分1敗の勝点19で首位に立っており、日本は勝点1の差で2位。オーストラリアが3位となっている。
日本とオーストラリアの差は勝点3。24日に敵地シドニーでの試合で日本が勝てば、日本の2位以内。つまり、予選突破が決まる。
だが、日本がオーストラリアに敗れれば、両国は勝点で並び、得失点差で上回るオーストラリアが2位に浮上する。得失点差では日本が現在+6なのに対して、オーストラリアは+9。従って、オーストラリアに敗れれば、得失点ではオーストラリアが大きくリードすることになる。
もっとも、29日の最終節は日本はグループ最下位のベトナムとのホームゲーム。一方のオーストラリアは強豪サウジアラビアとのアウェーゲームなので「日本有利」なのは確かだが、サウジアラビアは24日の中国戦に勝ってすでに予選突破を決めてしまっている公算が大きいので、そうなるとオーストラリアがサウジアラビアを破る可能性もかなり大きくなる。もし、オーストラリアが1点差でサウジアラビアに勝ったとすると、日本が2位に入るためには6点差以上の大量得点が必要と言うことになる。
日本としては、オーストラリアに勝って自力で予選突破を決めたいところだが、最低限、引き分けでもいい。そうなれば、勝点3差のまま最終戦を迎えるので、日本はホームでベトナム相手に引き分け以上でいいからだ。
もちろん、日本代表としてはオーストラリア戦も勝利を目指して戦うのだが、無理をして点を取りに行く必要はない。日本がゲームを支配していながらなかなか得点が決まらないという試合もよくあるが、今回のオーストラリア戦では優勢に試合を進めてさえいられば、得点が決まらなくても焦る必要はない。逆に、オーストラリアは無理をしてでも点を取りにくるしかないのだ。
一般的には、サッカーでは「引き分けでもいい」立場のチームの方がかなり有利なのは間違いない。ただ、そのあたりを変に意識しすぎて消極的にならないようにしたいのだが、経験豊富な選手も多いのだから大きな問題はないだろう。
今回の最終予選に臨んだ日本は、初戦のホームゲームでオマーンに敗れるという大失態があって苦戦が続いた印象が濃いが、3試合目でサウジアラビアに敗れた後は5連勝。2月1日のサウジアラビア戦には2対0と完勝した。日本代表は次第に安定感を増しており、昨年10月のホームでのオーストラリア相手にも日本は確実に勝利している。
一方のオーストラリアは、10月の試合で日本に敗れた後は、最下位ベトナムにこそ4対0で勝利したものの、サウジアラビア戦、オマーン戦は引き分けに終わっており、予選開幕の頃のような勢いはない。
過去の対戦成績を見ても、日本が最後にオーストラリアに敗れたのは2009年のこと。それからすでに10年以上が経過し、この間に8度対戦して日本の5勝3分となっているのだ。オーストラリアを過剰に警戒しすぎる必要はないだろう。
最大の「敵」はオーストラリア代表でもなければ、アウェーの環境でもない(シドニーの3月は南半球の秋。フットボールをプレーするには絶好のコンディションとなるはずだ)。最大の「敵」は、ずばり「移動距離」だ。
チームの半数以上の選手がヨーロッパのクラブでプレーしている現在の日本代表。ヨーロッパから南半球のオーストラリアまでは約2万キロ。地球のちょうど裏側まで移動しなければならないのだ。
これまでにも、日本チームは長距離移動に悩まされ続けてきた。
今回の予選で苦しんだ原因はオマーン戦での敗戦だったが、敗因は「移動」だった。
ヨーロッパのシーズンが開幕したばかりの9月で選手のコンディションもまだ万全ではない中、長距離移動を経て集合した直後の木曜日の試合だった。そのため、日本のコンディションは最悪で、逆に何日も前に来日してじっくり調整をしたオマーンの方がアウェーであっても、ずっと良いコンディションだったのだ。
その後も、長距離移動の直後に戦う木曜日の試合では、日本代表はずっと苦しんできた。
今回も長距離移動直後の木曜日のゲーム。しかも、日本までの移動よりもさらに長い距離の移動に悩まされることは間違いない。
国内組は3月19日にJリーグの試合を終えてすぐに夜の便で出発して、日曜日の朝に現地に到着する。「中3日」の調整期間があるし、日本とシドニーでは時差はわずか2時間なので調整は難しくない。
だが、ヨーロッパ組は全員がそろうのは試合前々日の火曜日になってしまうのだ。「中1日」の調整では、かなり厳しいだろう。
ただ、ヨーロッパ組でもクラブの試合が土曜日に行われれば、月曜日の午前には現地入りが可能となる。
最近の試合では、日本代表は4−3−3のシステムで戦っており、とくにMFの3人がチームの中心となっている。アンカーに遠藤航。インサイドハーフに守田英正と田中碧という構成である。これが、いわば現在の日本代表の「軸」である。
そして、ヨーロッパ各国のリーグ戦の日程を調べてみると、遠藤の所属するシュトゥットガルト(ドイツ・ブンデスリーガ)、田中の所属するフォルトゥナ・デュッセルドルフ(同2部)、守田の所属するサンタクララ(ポルトガル・プリメイラリーグ)は、いずれも代表合流前直近の試合が3月19日の土曜日に行われるのだ。つまり、チームの「軸」の3人は、月曜日にはシドニーに到着して、十分にリカバリーして試合に臨めるのである。
そのほか、スコットランドプレミアリーグのセルティックに所属する前田大然と旗手怜央、オランダ・エールディビジのズヴォレでプレーする中山雄太も、それぞれ3月19日の試合を終えて合流することができるし、ベルギー・ジュピラーリーグのユニオン・サンジロワーズでプレーする三笘薫は、試合が3月18日の金曜日にあるので、土曜日の朝に出発すれば「国内組」と相前後して現地入りできる。フル代表ではほとんど実績のない三笘だが、現地で中3日のトレーニングが行えるのは大きなアドバンテージとなるだろう。
そして、重要なのはホームで戦うオーストラリア代表も多くの選手がヨーロッパ各国でプレーしているので、コンディション的には日本代表と同じような状態で戦わざるを得ないということ。もちろん、ヨーロッパからオーストラリアまでの超長距離移動に慣れてはいるだろうが、コンディション的には互角と見ていい。
いずれにしても、日本とオーストラリアの実力差はごく僅か。「勝敗は時の運」でもあるし、「引き分けでいい」日本と「勝たなくてはいけない」オーストラリアという、それぞれが置かれた状況にうまく対処できたチームが勝利するのではなかろうか。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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