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決勝のカードはチェルシー(イングランド)対パルメイラス(ブラジル)。欧州王者対南米王者の順当な顔合わせだった。55分にロメロ・ルカクのヘディングシュートが決まってチェルシーが1点を先制するが、64分にはパルメイラスがヴェイガのPKで同点として試合は延長戦にもつれ込んだ。そして、そのままPK戦突入かと思われた延長後半117分にチェルシーのカイ・ハフェルツがPKを決めてチェルシーが勝利した。
パルメイラスの同点ゴール、チェルシーの決勝点ともに、VARが介入してハンドによるPKという判定となったものだった。つまり、こちらも審判が勝敗を決める結果となった。
大問題とならなかったのは、どちらのハンドも肉眼でも確認できるようなハンドだったからだ。どちらも、問題の場面で攻撃側の選手は「ハンドだ!」とクリストファー・ピース主審にアピールをしている。
これが、誰もが気が付かなかったような(攻撃側の選手さえハンドを主張しなかったような)場面でVARが介入して、肉眼では確認できないような微妙なハンド、あるいはプレーする意図なく、体に付けていた腕に当たったような微妙なハンドをPKにしてしまったのだとしたら、大きな問題に発展していたことだろう。
サッカーではビデオ判定の導入が他のスポーツに比べて大幅に遅れたが、今ではVARはなくてはならないものとなった。選手にとっても、サポーターにとっても「さっきの判定は誤審だったんじゃないか?」という疑念を抱いたまま試合が続行されるよりも、映像を使って確認を済ませた方がいい。J2リーグではVARは導入されていないが、やはり「VARがあったらよかったのになぁ」と思うことがしばしばだ。
だが、本当に微妙で些細なファウルやハンドに対してVARが介入して、それが試合の結果を左右するとなると、やはり興醒めとなってしまう。
これも、ジャンプのスーツ違反判定と同じで、VARの介入の仕方によって改善できるような気がする。つまり、多くのスポーツで採用されている「チャレンジ制」をサッカーのVARでも取り入れてみたらどうだろうかと僕は思うのだ。
「ボールがゴールに入ったかどうか」についてはVAR(あるいはゴールライン・テクノロジー)で判定すべきだろうし、オフサイドも完全にVARに任せてもいい。
だが、ファウルやハンドによるPKの判定は「チャレンジ制」にするのだ。そうすれば、誰も気が付かなかったような微妙なファウルをPKと判定されて、それで勝負が決まってしまうという後味の悪い結末は減らせるのではないだろうか。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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