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サッカー フットサル コラム 2021年12月28日

センセーションを起こした「メニーナ」の活躍。層が厚くなっている日本の女子サッカー界の現在地

後藤健生コラム by 後藤 健生
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12月27日に行われた第26回全日本U-15女子サッカー選手権大会決勝戦で、日テレ・東京ヴェルディメニーナがJFAアカデミー福島を破って優勝を決めた。

試合会場の東京・味の素フィールド西が丘で、試合終了後に何人かの知人と顔を合わせたが、異口同音にそのプレーのレベルに感嘆の声を上げていた。

「とても、中学生の女の子たちとは思えない」というのである。

「メニーナ」は、日本の女子サッカーで絶対的な存在である日テレ・東京ヴェルディーベレーザの育成部門である。この大会では、そのメニーナの中のU-15年代の選手たちが優勝を決めたのである。

いわば“姉貴分”に当たるベレーザと同じく4-3-3のシステムのメニーナは、試合開始直後から主導権を握った。そして、開始からわずか5分でワントップの新宮さくらがドリブルで相手ペナルティーエリアに切り込んであっさりと先制ゴールを決めてしまった。そして、21分には右サイドバックの新井萌禾がワンツーでのパス交換をまじえてドリブルで攻め上がり、そのまま至近距離まで持ち込んで決めて2対0。

その後、28分にJFAアカデミー福島の右サイドバックの名木野桃嘉がミドルシュートを突き刺して1点差に追い上げたが、後半に入って67分、メニーナのMF梅本恵が左サイドからインフロントにかけてファーサイドを狙うシュートで3対1と突き放し、後半のアディショナルタイムにJFAアカデミー福島の木村未来がロングボールがワンバウンドするところをアウトサイドで浮かせてループ気味に決めて再び差を1点に縮めたものの、そのままタイムアップ。

1点差ではあったものの、90分を通じてメニーナが支配していた時間が大部分だったことを考えれば、メニーナの勝利は順当な結果だった。

アンカーの梅本を中心としたMF陣が次々とポジションを入れ替えながら、スペースを作っては、他の選手がそのスペースを利用する。さらに、左サイドからは小島世里がドリブルで切り崩しを図り、左サイドバックの今野杏凪がオーバーラップをかける。

2点目を右サイドバックの新井が決めたことでも分かるように、両サイドバックの攻撃参加も見事だった。

オーバーラップはもちろん、インナーラップをしかけて積極的に中盤でのパス回しに参加し、敵陣深くバイタルエリアでプレーする場面が何度もあった。

2019年にJ1リーグでアンジェ・ポステコグルー監督の横浜F・マリノスが優勝した時に両サイドバックの攻撃参加が話題になったが、今では多くのチームのサイドバックがそうした動きを実践している。そして「中学生の女の子たち」もそれを当たり前のようにやって見せるようになっているのだ。

個人と集団のバランス。テクニックとスピードのバランス。あるいは、中盤での激しいプレッシャー……。これが、U-15の女子の試合とは思えないような見事なメニーナのパフォーマンスだった。

この試合の2日前には、同じ日テレ・東京ヴェルディメニーナが別のカテゴリーの試合でもセンセーションを巻き起こしていた。

皇后杯全日本第43回全日本女子選手権の4回戦で、メニーナがINAC神戸レオネッサを破ったのだ。INAC神戸は、9試合ずつを終了した時点でWEリーグで首位を独走中のチームなのだ。それを、U-18世代のメニーナが倒してしまったのだ。INAC神戸戦に出場した選手の中の最年少はDFの青木夕菜。2008年7月生まれの13歳の中学生である。つまり、U-15選手権の出場資格のある中学生年代の選手も数人が皇后杯の試合に参加していたのだ。

さらに、同じ日には“姉貴分”のベレーザは、同じWEリーグの長野パルセイロ・レディースを相手に4対0で快勝。まさに、ベレーザ=メニーナの強さをまざまざと印象付ける週末(U-15の決勝は月曜日だが)となった。

皇后杯の4回戦では、なでしこリーグの上位勢もWEリーグに挑戦した。

今年開幕した女子サッカー初のプロリーグであるWEリーグ。昨年まで日本の女子サッカーのトップリーグだった「なでしこリーグ」(日本女子サッカーリーグ)から7チームがWEリーグに参加。なでしこリーグは、いわば2部相当のリーグになったのだが、それでも今シーズンのなでしこリーグはレベルの高い試合を繰り広げていた。それだけ、日本の女子サッカーの層が厚くなっているのである。

その上位チームが、WEリーグ勢にどこまで通用するかが注目された。

実際、なでしこリーグ優勝のFC伊賀くノ一三重は浦和レッズレディースと90分間互角の戦いを繰り広げ、また、なでしこリーグ準優勝のスフィーダ世田谷は大宮アルディージャVENTUS相手に80分過ぎまで1点リードして試合を進めた。最後は、力尽きてしまったものの、日本代表選手を揃える浦和相手にFC伊賀が互角に戦ったことでも示されるように、なでしこリーグ勢の実力は証明された。

そして、なでしこリーグ勢で唯一準々決勝進出を決めたのはセレッソ大阪堺レディースだった。

実は、C大阪堺は昨年のなでしこリーグで3位に入った強豪だったのだが、WEリーグには参加せず、育成型クラブを目指しているクラブだ(昨年のなでしこリーグの1位〜8位のクラブでWEリーグ入りしなかったのはC大阪堺だけ)。

C大阪堺の昨シーズンの中心選手うち、林穂乃香はスウェーデンのAIKストックホルムに、宝田沙織はアメリカのワシントン・スピリットにそれぞれ海外移籍を果たし、この2人と日テレ・東京ヴェルディベレーザに移籍した北村菜々美は東京オリンピックでもメンバー入りを果たした。

そうした主力が数多く流出したC大阪堺は今シーズンも若い選手を中心に戦っており、平均年齢は17歳台というチームなのだ。

皇后杯では、WEリーグ以外でベスト8に進出したのは2チームだが、それが平均年齢17歳台のC大阪堺とU-18年代の日テレ・東京ヴェルディメニーナということになった。

日本の女子サッカーは、トップの日本代表(なでしこジャパン)がかつてのようにワールドカップやオリンピックで優勝争いに絡むことができなくなってはいるが、若手選手が成長していることは間違いない。またWEリーグの上位チームであっても他のカテゴリーのチームを相手に簡単には勝てなくなっている。

日本の女子サッカー全体は底上げされ、層が厚くなっていることは間違いないようである。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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