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首都圏各地で開催されている全日本大学選手権大会は12月18日に準決勝が開催され、関西学生リーグ4位の阪南大学と関東大学リーグ2位の駒澤大学が決勝進出を決めた。
東西のリーグの代表が見事に決勝に駒を進めたわけだが、関東の優勝校である流通経済大学は準決勝で阪南大学と対戦して延長戦の末に涙を呑み、一方、関西リーグ優勝の関西学院大学は2回戦で同じ関西の阪南大学に敗れて姿を消した。
関東リーグ優勝の流経大は、阪南大との準決勝でも優勢に試合を進めていたが、両チームとも決定機を作れないまま時間が経過し(延長戦まで戦いながら、シュート数が流経大が6本、阪南大が5本という数字にもそのことが示されている)、カウンターでチャンスを作り続けていた阪南大が71分に先制。直後に流経大がPKで追いついたものの、延長前半に阪南大がCKからのボールを交代で出場していた津野ジュウリオ心がヘディングで決めて勝利した。
一方、駒大と明大の関東勢対決は立ち上がりの10分間を除いて明大に良いところがなく、駒大が前半26分にロングボールを前線の選手がうまくつないで先制すると,その後も着実に得点を重ねて3対0で快勝した。
こうして、東西の優勝校が姿を消したのだが、とくに関西勢同士の対戦となった2回戦で関学大が敗れたのは、一つの番狂わせだったといえよう。関学大は、関西リーグで19勝4分1敗。2位の京都産業大学に勝点16もの差を付けてぶっちぎりで優勝していたからだ。
一方、関東リーグは大混戦だった。
11月13日に行われた関東大学リーグの最終日(実は第17節延期分)では、第1試合で駒澤大学が筑波大学を破って勝点を40まで伸ばして暫定首位に立ち、第2試合で流経大と明大が引き分ければ駒大の優勝という状況になったが、第2試合で明大を破った流経大が最終的に優勝という劇的な幕切れだった。
そもそも、優勝した流経大は一昨年のリーグで2部降格。昨年は現在京都サンガFCを指揮しているチョウ・キジェ監督をコーチに迎えて2部リーグで優勝し、1部に返り咲いたばかりで一気に優勝を飾ったのだ。関東は、あらゆる意味で“混戦”だった。
例年、関東リーグ優勝チームの勝点は40点台の後半から50ポイントを超えるあたりなのだが、今シーズンは優勝した流経大の勝点が41ポイント(22試合)だった。一方、最下位となって2部降格が決まった慶応義塾大学は勝点24だったが、これは例年なら10位以内に入れる数字だった。
そして、大学サッカー界の今シーズンを締めくくる大学選手権(インカレ)でも東西のリーグ優勝校が姿を消し、大学サッカー界の混戦状況は最後まで続くことになった。
そもそも、大学サッカー界は新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けていた。それが、最後まで混戦が続いた最大の原因だろう。
この数年、大学勢は天皇杯全日本選手権大会でJリーグ勢を倒しジャイアントキリングをたびたび起こしてきた。コロナ禍で変則的な形式となった昨年は別としても、一昨年の天皇杯では法政大が東京ヴェルディ、ガンバ大阪に完勝して準々決勝に進出。2017年度には筑波大がYSCC横浜、ベガルタ仙台、アビスパ福岡を倒してラウンド16まで進んでいた。
だが、今シーズンは千葉県代表の順天堂大学(関東大学リーグ8位)が2回戦でFC東京に食い下がったものの延長の末に敗れ、東京代表の駒沢大はJ2降格のSC相模原に、茨城代表の流経大もやはりJ3で8位のYSCC横浜に敗れてしまった。
今シーズンの大学勢は、ここ数年に比べて強化が進まなかった印象がある。
当然のことである。新型コロナウイルス感染症の影響が大きかったからだ。
コロナ禍の影響はあらゆるカテゴリーのチームにもあるはずだが、学校単位のチームの方が大きな影響を受ける。
選手たちの多くは寮で合宿生活をしている場合が多いから、当然集団感染が生じやすい。そのため、実際に集団感染が起こって試合日程が変更になるケースが何度もあった。そのため、関東リーグは第17節が延期になり、おかげで最終日に劇的な幕切れとなったのだし、関西リーグの日程変更は関東以上に多かった。
そして、そうした集団感染の発生を防ぐために厳しい行動制限を課さざるを得なかったのも事実だ。
今シーズンの大学リーグは、開催場所が一般には公開されない試合が多かった。一般観客を入場させなかったからだ。試合の開催を優先して、試合は関係者だけで行われた。取材の報道陣も入場できなかった試合もあるし、取材やスカウトが入場する場合にも、他のカテゴリーの大会に比べてはるかに厳格な問診票の提出を求められた。
選手たちの日常生活やトレーニングなどにも、当然、制限が加えられる。
学生スポーツでは、毎年卒業生を送り出し、新入生を迎え入れて、新しいチームを作る作業の繰り返しだ。春先には無名だった選手が急成長したり、弱小チームが強化されて、秋口には優勝争いにも絡んでくるようなこともよく見かける。
ところが、新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、新チームを立ち上げてから指導者の計画通りにトレーニングを重ねる機会が与えられなかったのでチーム強化はなかなか進まなかった。大学でも、高校でも指導者にとっては手探りでのシーズンだったことだろう
そして、試合の日程も変更の繰り返し。自チームで感染が起こらなくても、対戦相手に集団感染が生じたら試合は中止となってしまう。トレーニング → 試合 → トレーニング → 試合という繰り返しがチームを強化するのだが、これのリズムも順調に進まないのだ。
そんな状態にあったからこそ、今シーズンの大学サッカーでは圧倒的な力を示すチームが生まれず、大混戦となったのだろう。
日本のサッカー界においては、大学というのは選手育成のうえで大きな役割を果たしており、最近の日本代表でもメンバーの3分の1ほどを大学出身者が占めている。
川崎フロンターレの下部組織出身で筑波大学に進み、卒業後川崎に戻って旋風を巻き起こしてヨーロッパに羽ばたいた三笘薫のように、Jクラブの下部組織で育っても、すぐにトップ登録せずに、大学で出場経験を得て成長してクラブに戻ってくる選手も多い。
その大学での強化が、新型コロナウイルス感染症の影響で進まなかったとしたら、日本サッカー全体にとってマイナスの影響を残しかねない。
大学だけではない。2021年にはU−18年代のプレミアリーグEAST、同WESTは延期試合はあったものの無事に終了したが、東西の勝者同士が対戦する「プレミアリーグファイナル」は中止となった。
また、若手の育成にとって重要な国際大会も次々と中止になってしまった。2021年に開催予定だったFIFA主催のU−20とU−17のワールドカップも中止となり、SBSカップのような招待大会も中止。この年代で国際大会を経験できなかったことは、将来のフル代表の強化にも影響してくるはずだ。
もちろん、悩みは世界各国共通なのではあるが、やはり日本代表の将来の強化のためには日本サッカー協会として、今後、若い選手たちの経験値を上げるためのあらゆる方策を採る必要があるだろう。さまざまな問題を抱える新型コロナ問題ではあるが、とくに若い世代へケアには全力を尽くしてほしいものだ。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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