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サッカー フットサル コラム 2021年11月28日

Jリーグ入りを目指す地域クラブ王者の戦い。選手層が勝敗を左右するのは過密スケジュールの弊害

後藤健生コラム by 後藤 健生
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「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2021 決勝ラウンド」という名称の大会が、現在、東京の味の素フィールド西が丘で開催されている。

北海道、東北、関東など全国9地域にある地域サッカーリーグ(第1種、つまり年齢制限のないチームによるリーグ戦)の優勝チームが集まって全国チャンピオンを決めるための大会であり、この大会の上位2チームは日本フットボールリーグ(JFL)の下位チームとの入れ替え戦を行い、それに勝利すれば、来年度からJFLでプレーすることができるのだ。

JFLはアマチュア最高の全国リーグであり、Jリーグの準会員資格を取得したうえでJFLの4位以内に入るとJ3リーグ加盟が認められる。

つまり、将来Jリーグ入りを目指しているクラブにとっては、全国地域チャンピオンズリーグは非常に重要な大会であり、また同時に非常に突破が難しいな大会なのだ。

JFLに入りさえすれば、J3リーグ入りは十分に視野に入ってくる。たとえば、FCいわき(福島県)は、2019年の全国地域チャンピオンズリーグで優勝してJFL入り。そして、2021年のJFLでは現在首位を走っており、すでに来シーズンからのJ3入りが決定している。

だが、逆にJFL入りが何年も実現しないと、地域での盛り上がりも欠けることになり、Jリーグ入りという熱意が冷めてしまう。いつまでも地域リーグでくすぶっていれば、新規スポンサーの開発もままならなくなってしまうだろう。

だから、Jリーグ入りを狙うクラブにとっては、大変重要な関門なのである。

しかも、大会のレギュレーションは複雑で、力があれば勝ち抜けるというものでもない。

各地域リーグは原則としてはホーム&アウェー方式の総当たりリーグ戦なので、実力さえあれば確実に勝ち抜くことができるが、「地域チャンピオンズリーグ」はそうはいかないのだ。勝ち抜くにはかなりの運が必要になる。

参加する12のクラブは、まず4チームずつ3つのグループに分かれて第1次ラウンドの1回戦総当たりを行い、各グループの首位チームと、3位チームの中で最高の成績を残した1チームの合計4チームが決勝ラウンドに臨み、そして再び1回戦総当たりを行って1〜4位を決めるのだ。

地域リーグは9つなのに12チームが参加するのは、全国社会人サッカー選手権(全社)の上位チームにも出場権が与えられることになっているからであり、2021年は新型コロナウイルス感染症の影響によって全社が中止となってしまったため、3つの地域リーグの2位クラブに出場権が与えられたのだ。

この大会が単に地域リーグ所属チームの全国選手権というだけなら、こうした方式もいいだろうが、現実的にはこの大会は将来のJリーグ入りを希望するチームにとっての大きなハードルでもあるのだ。

それなら、地域リーグ2位のクラブがJFL入りしてしまうのはおかしいし、また、9つの地域リーグのうち2位チームが参加できるのはどのリーグかというのも理解しがたい複雑なルールによって決められている。つまり、毎年、どこの地域リーグから“もう1チーム”を出場させるかは「輪番制」によって決まっているのだ(今シーズンは東海、北海道、中国のリーグの2位が参加資格を得た)。

リーグ戦の昇格に関連した大会なのに、リーグ戦の成績ではないことで決まってしまうのはどう考えてもおかしい。

さて、今シーズンの全国地域サッカーチャンピオンズリーグの決勝ラウンドには関東リーグ1位のCriacao Shinjuku(東京都)と、関西1位のおこしやす京都。それに、四国リーグ王者のFC徳島。そして、その輪番制で出場していた東海リーグ2位のFC.ISE−SHIMA(三重県)が出場権を得ている。そして、11月26日の2日目を終わった時点で、SHINJUKUとFC.ISES−SHIMAが勝点4でトップ。それを勝点3のおこしやす京都が追う展開となっている。

もし、FC.ISE−SHIMAがJFL昇格を成し遂げてしまったら、東海リーグの2位チームが並みいる各地域のチャンピオンをかわしてJFL入りを果たしてしまうことになる。

また、SHINJUKUは、第1次ラウンドでは京都に2対3で敗れてグループ2位になりながら、「3位のベスト」で決勝ラウンドに駒を進めたチーム。もし、28日の3日目を終えて、FC.ISE−SHIMAとSHINJUKUにJFL挑戦権が与えられることになったら、何か釈然としないものを感じるのは僕だけではなかろう(SHINJUKUはかつて柏レイソルや横浜F・マリノスで活躍した小林祐三など、元Jリーガーが多く、実力的には大会随一の力を持っているが)。

そして、試合自体もとてもシビアで必ずしも実力だけで決まるものではない。年間にたとえば20試合戦うようなリーグだったら、順位は実力を反映したものになるが、3試合だけのリーグ戦では各試合での運、不運によって勝負は分かれてしまう。

なにしろ、実力差はわずかなのだから……。

たとえば、11月26日の2日目の第1試合。FC徳島対おこしやす京都戦。ともに、初戦で敗れたチーム同士のサバイバル戦だった。

実力的には間違いなく関西リーグの覇者、京都が上だった。前半の立ち上がりを除いて、京都がサイドから分厚く攻める展開が続いた。だが、徳島も粘り強く戦い、試合はスコアレスのまま進んだ。そのまま引き分けかと思われたが、75分と90+2分の得点で京都が2対0で勝利した。

勝敗を分けた原因は2つ。1つは、67分に徳島の3バックの一角、星出怜央が一発退場となったこと(判定自体もかなり厳しいものだった)。そして、もう1つは京都は75分までに5人の交代枠を使って、前線にはフレッシュな選手を並べて戦ったのに対して、徳島は66分、77分、89分に1人ずつ交代を使っただけだったこと。後半の徳島は完全に足が止まった状態だったのに、交代が使えなかったのだ。

なにしろ、中1日の3連戦という過密スケジュールなのだ(ちなみに、第1次ラウンドは休養日なしの3連戦)。普通の大会以上に選手層が厚いチームに有利な日程なのだ。

過密スケジュールの問題、出場資格の問題など不合理な点も多いこの大会。将来のJリーグ入りを目指すチームのためにも、より合理的な大会形式に改めていってもらいたいものだ。まず、リーグ戦の成績をもっと重視すべきだ(全社経由での参加はなくすべき)。そして、中1日の3連戦という過密スケジュールは避けて、中2日以上の休養日を与えて、持久力勝負ではなくサッカーの技術戦術で勝敗が決するようにしてほしい。

いずれにしても、28日の最終日にはSHINJUKUがFC徳島。おこしやす京都がFC.ISE−SHIMAとそれぞれ対戦するが、引き分けでも2位以内が確定するSHINJUKUの優位は変わらないだろう。そして、京都とFC.ISE−SHIMAはまさに2位以内を懸けた直接対決で雌雄を決することになる。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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