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サッカー フットサル コラム 2021年11月26日

千葉寛汰と渡邊星来のコントラスト。ストライカーはいつでもゴールがすべて【高円宮杯プレミアリーグEAST 青森山田高校×清水エスパルスユースレビュー】

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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千葉寛汰

ストライカーは結果がすべてだ。ゴールを決めるか、決めないか。これだけが評価に直結する。どれだけ他のプレーが上手く行かなくても、1点獲ってしまえば、“チャラ”になる。2点獲ってしまえば、間違いなくヒーローに。3点なんて獲ってしまえば、1か月は威張っていられる。それが、ストライカーだ。

オレンジの9番。千葉寛汰が輝いた。高円宮杯プレミアリーグEAST第16節。勝ち点31で並ぶ両雄、青森山田高校と清水エスパルスユースの首位攻防戦。2-0で勝利したエスパルスの2点は、いずれもトップチーム昇格が内定しているこのストライカーが叩き出す。

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1点目は後半24分。自らが落としたボールを、キャプテンの鈴木奎吾がシュート。DFに当たったボールが目の前にこぼれてくる。「あのシーンはこぼれてきたボールに上手く反応できて、ファーストタッチが凄く良い所に置けて、その時に時が止まったような感じがしたんです。みんなから『凄く冷静だったね』と言われたんですけど、ニアがメチャメチャ空いていて、本当にただゴールに流し込んだだけで、冷静に決められたかなと思います」。完璧なフィニッシュ。貴重な先制弾を、左足で叩き出す。

2点目は後半41分。右サイドから渡邊啓佳の完璧なクロスが、イメージ通りの場所に入ってくる。「いったん相手の視野から外れて、クロスを上げるタイミングで相手の前に入り込むというところは意識していましたし、クロスが100点満点で自分は決めるだけだったので、クロスの質と自分の駆け引きが生んだゴールだったかなと思います」。再び完璧なフィニッシュ。試合を決める追加点を、ヘディングで沈めてみせる。

【Foot!THURSDAY】高円宮杯 プレミアリーグ2021 EAST 第11節 大宮アルディージャU18 vs 清水エスパルスユース|清水エスパルスユース 千葉 寛汰 選手インタビュー

青森山田を率いる黒田剛監督の言葉が印象的だ。「やっぱり千葉寛汰はストライカーですよね。嗅覚を持っているし、一発中の一発をしっかり決めてくるあたりは、さすがだなと」。敵将をも唸らせた得点感覚。ゴールを獲る覚悟を感じさせる強気な面構え。来季からはプロの世界に飛び込んでいくこのストライカーの未来が、今から楽しみでならない。

【Foot!THURSDAY】高円宮杯 プレミアリーグ2021 EAST 第7節 清水エスパルスユース vs 青森山田 青森山田 渡邊 星来 選手 インタビュー

緑の17番。渡邊星来は唇を噛み締めた。負けられない大一番のホームゲームもベンチスタート。チームメイトの負傷もあり、後半からピッチに解き放たれたが、3度訪れたチャンスをいずれもモノにできず、チームも手痛い黒星を突き付けられる。

とりわけ後半38分の一撃はスーパーだった。藤森颯太のフィードから、小湊絆が頭で落としたボールを胸でトラップした渡邊星来は、右足でマーカーを外しながら反転すると、左足で豪快にボレー。枠を捉えていた軌道は、しかし相手GKのファインセーブに阻まれる。その一連は、まるでトヨタカップのミシェル・プラティニ(わかる人はわかるはず!)。だが、得点には至らなかった。

今シーズンはリーグ開幕から2トップの一角として定位置を確保し、インターハイの優勝も主力として経験した渡邊星来だが、ここに来てスタメン落ちする試合も多く、なかなか結果も付いてこない。本人が抱える悔しさや焦りは十分に想像できる。

彼を見ていると、ある“先輩”の存在を思い出す。3年前。やはり11月に青森で行われたプレミアリーグの首位攻防戦。シーズン序盤はスタメンで活躍しながら、徐々にベンチスタートが増えていったその“先輩”は、重要な一戦にも出場機会を与えられなかった。試合後。偶然歩いていた姿を見つけ、声を掛ける。元来がポジティブな性格。「諦めないで頑張ります!」。力強くは言い切ったものの、おそらくは空元気。ストライカーが、その状況に納得しているはずもなかった。

その1か月半後。“先輩”は埼玉スタジアム2002でチームを救う。高校選手権準決勝。1点ビハインドの後半41分にピッチへ送り込まれると、その1分後に相手のクリアを自分の体に当て、こぼれ球をゴールに泥臭く流し込む。土壇場で追い付いた青森山田は、PK戦の末に決勝へと進出。大舞台で“ジョーカー”が煌めいた。

そして、決勝だ。2-1でリードした後半のラスト10分で投入された“先輩”は、後半43分に決定的なチャンスを迎える。GKとの1対1。それまで何度もそういうシーンを外し、頭を抱える光景を繰り返していた“先輩”は、冷静にゴールを陥れ、チームの日本一を決定付ける。11月の青森で複雑な感情を押し殺していたストライカーは、一番大事な2つの試合で、強烈な結果を残すことに成功した。小松慧。『炎のストライカー』である。

諦めるのは簡単だ。投げ出した方が楽になれる。ただ、その選択からはきっと何も生まれない。何より3年間に渡って努力を積み重ねてきた自分を、裏切ることになる。

渡邊星来の姿が、小松のそれと重なる。ストライカーは結果がすべてだ。ゴールを決めるか、決めないか。これだけが評価に直結する。ならば、ゴールを決めればいい。これからやってくる大事な試合で、特別なゴールを決めればいい。それだけの力が、青森山田の17番には間違いなく備わっている。

渡邊星来

 

文 土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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