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サッカー フットサル コラム 2021年10月15日

【高円宮杯プレミアリーグEAST 浦和レッズユース×横浜FCユースレビュー】 『彼らと栄光を掴みたい』。浦和レッズユース・池田伸康監督と“彼ら”が流した涙

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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「みんなが涙を流していて。その時に『オレは何をやっているんだというのが凄くあったんだよね。この学年には思い入れがあって、今年は『彼らと栄光を掴みたい』というところから始まってきているんです」。“彼らとの再会”は、浦和レッズユースを率いる池田伸康監督の赤き情熱を、さらに燃え上がらせてきた。

苦しいシーズンの幕開けだった。高円宮杯プレミアリーグEASTの開幕戦。浦和駒場スタジアムに青森山田高校を迎えたゲームは、0-4の大敗。以降もあと一歩で勝利を掴めそうな試合も、終了間際の失点で勝ち点を逃す試合が続く。前期の8試合を終えた段階で、3分け5敗の未勝利。「何か変えなきゃと思うんですけど、何かを変えてもまた負けるという感じでした」とはキャプテンの大野海翔。チームは負のスパイラルに陥っていた。

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転機は夏のクラブユース選手権だ。初戦のカマタマーレ讃岐U-18戦は、0-3とまさかの惨敗。リーグでの流れを引きずるかのような苦境に陥り、ようやく選手たちにスイッチが入る。「ノブさんに熱いミーティングをやってもらって、そこでチームとしてもっとやろうという意識が高くなりましたし、気持ちが変わりました」(伊澤壮平)「ノブさんからも喝を入れられて、そこで本当にみんなのスイッチが入って、変わったと思います」(堀内陽太)。

“ノブさん”の想いに、選手が応える。2連勝でグループステージを突破すると、ラウンド16では難敵のガンバ大阪ユースを2-0で撃破。準々決勝のFC東京U-18戦も、終了間際に追い付かれながらもPK戦で粘り勝ち。どん底まで落ちたチームは、力強く蘇生する。そのFC東京U-18との激闘を終え、取材に応えてくれた池田監督は、こみ上げてくる涙で言葉が続かなかった。「一生懸命やっている姿を見られたのは久しぶりだったし、感動しました…少なくとも僕の心は動きました…」。

準決勝では名古屋グランパスU-18相手に、延長戦まで持ち込みながら惜敗したが、試合後の指揮官はこう話している。「楽しかったあ!悔しいけど、楽しかった。ワクワクさせてもらったし。また新しいチームをプレミアで見ていただければと思います」。

10月3日。プレミアリーグ再開初戦は、大宮アルディージャU18と対峙するさいたまダービー。浦和ユースは88分に伊澤が決勝ゴールを叩き出し、とうとう9試合目にしてリーグ初勝利を手に入れる。開幕戦と同じ駒場のピッチには、“新しいチーム”の形が確実に浮かび上がっていた。

結果的にこの日の横浜FCユース戦は、0-1で敗れてしまう。だが、連勝とはいかなかったものの、チームの雰囲気は以前と明らかに変化している。「オレはそんなに悪いゲームじゃなかったと思っているので、負けはしたけれども成長はしているというふうに伝えたいし、下を向く時間はないので、十分次に繋がるゲームではあると思う」と話した池田監督は、続けてあることを教えてくれた。

「僕は今年の3年生を途中で“投げ出して”いるんですよ。彼らが中学2年で、一緒にデンマーク遠征へ行っている時に、『3日後にトップへ合流してくれ』という電話が掛かってきたんです」。2017年8月。トップチームの監督交代に伴い、ジュニアユースの監督からトップのコーチへと“配置転換”されることになる。

「もう『彼らには言わないで行こう』と思ったの。でも、『言わないといけないな』と。しかも、そのデンマークの大会で優勝しちゃったんです。優勝して、でも、トップに行くことを伝えたら、みんなが涙を流していて。その時に『オレは何をやっているんだ』というのが凄くあったんだよね。本当に大好きな学年だったので、毎日一緒にサッカーをやることが楽しかった時に、オレはこの学年を途中で投げ出した。その時の涙が忘れられなくて」。

だからこそ、ずっと抱えてきた想いをユースに上がってきた彼らには、改めてぶつけてきた。「この学年には思い入れがあって、今年は『彼らと栄光を掴みたい』というところから始まってきているんです」。ここまでは思っていたような結果こそ付いてきていないかもしれないが、クラブユース選手権の試合後に涙をこぼした池田監督のスタンスは、きっとあの日のデンマークから何も変わっていない。

「本当に勝たせてあげられないことはオレ自身の反省だし、本当に申し訳ないなって。ただ、オレの仕事は勝たせることだけじゃなくて、彼らが本当に成長して次のステップに上がっていくことでもあって、今は非常にチームとして活気があるし、いい循環はしているのかなとは思っています。やっぱり負けると下を向くものなので、自信を持たせてやりたいなって」。

彼らも“ノブさん”の想いは、十分過ぎるほど分かっている。“ノブさん”も彼らの想いは、十分過ぎるほど分かっている。それでも、その答えを出す場は常にピッチの上にしかない。残された時間は2か月あまり。それぞれの涙を知る男たちに、再びたぎり始めた赤き情熱の行方は、如何に。

文 土屋雅史

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土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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