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世界を驚かせる一戦になるか 世界ランク1位のスペイン戦へ〈FIFA フットサル ワールドカップ リトアニア 2021〉
サッカーニュース by 河合 拓FPオリベイラ・アルトゥール
「ノー。インポッシブル。インポッシブル」
大きく手を広げ、首を振りながらそう語ったのは、2009年6月から2016年3月まで、フットサル日本代表監督を務めていたミゲル・ロドリゴ氏だ。今大会、FIFAのテクニカル・スタディー・グループの一員として、大会を視察している彼に日本がスペインで勝つ可能性を聞いた時の答えである。
前回のコラムにも書いたように、ベルギーの情報サイト「Futsal World Ranking」が掲載している世界ランキングでは、スペインが1位、日本は14位となっている。世界トップと日本の差は、まだまだそれくらいの開きがあるのだ。
フットサル日本代表は14日に行われたアンゴラ戦を8-4というスコアで勝利した。序盤から試合の主導権を握りながらも、なかなか得点を挙げられない嫌な展開を払拭したのは、2020年12月に日本国籍の取得が認められたFPオリベイラ・アルトゥールだった。W杯の直前に行われた欧州遠征で、日本代表初キャップを刻んだアルトゥールは、キャリア最初のW杯の試合で4ゴールを叩き出し、勝利の立役者となっている。
5度目のフットサルW杯出場で、初めて初戦に勝利した日本だが、気がかりな部分も少なくなかった。ブルーノ・ガルシア監督も「4つの失点は、割合は相手のメリットが光ったよりも、私たちの問題が出てしまった失点だった」と認めたように、ここ数試合の親善試合では見られなかったようなエラーによる失点があった。失点シーン以外にも、GK関口優志のセービングによって帳消しとなったエラーは散見された。
アンゴラより、はるかにゴール前の決定力があるスペインを相手に、この試合同様の割合でエラーを起こせば、待っている結果は大敗になる。初戦でせっかく得たプラス4の得失点差のアドバンテージを、少しでも保つためにも、ブルーノ監督が就任して以来、ずっと磨きをかけてきた守備は40分間強度を保ち続ける必要がある。また、ボールを奪ってからのボールコントロールには細心の注意が必要であり、ボールを持っていない選手がパスコースを作る動きも不可欠だ。
ソラーノ(スペイン代表)
世界トップレベルの選手がそろうスペイン代表だが、特に警戒が必要なのがピヴォの2選手だろう。2019年に行われたスペイン遠征の第2戦で、日本代表から4ゴールを挙げて、日本でも一気に知名度を高めた左利きの大柄ピヴォのソラーノは、今大会初戦のパラグアイ代表戦でも、スペイン代表の大会初ゴールを決めた。自身に入った縦パスを収め、サイドに流れたボールがゴール前に折り返されると、ゴールを背に向けたままヒールで決めたゴールは、世界最高峰の舞台に向けて得点感覚を研ぎ澄ましていたことを示すに十分なものだった。
ラウル・ゴメス(スペイン代表)
もう一人のピヴォであるFPラウル・ゴメスは、どっしりと前に構えるソラーノとは異なり、前線を幅広く動くタイプ。テクニックに長けており、強烈なシュートを放てることは、初戦のパラグアイ戦でのゴールでも示した。大きな国際大会に出るのは初めてになり、今大会のスペイン浮沈のカギを握る存在とみられている。
この2人にボールを供給する選手として注目したいのは、バルセロナでプレーするFPアドルフォ。16歳の頃からスペインのトップカテゴリーでプレーし、現在はスペイン1部リーグのバルセロナで中心選手として活躍する。フリーランニングの質が極めて高く、ピッチにいることでチームに連動性をもたらせる存在だ。現在キャリアのピークを迎えているが、若い頃は点取り屋だったこともあり、得点感覚にも秀でる。
もう一人は、昨シーズンまで日本代表のFP森岡薫とチームメートだったレフティのFPアドリ。突出したテクニシャンであり、世界最高峰のドリブラーだ。右サイドでボールを持ってからの仕掛けは脅威。キレのあるボールさばきで相手の逆を取り、突破を図ってくる。ピヴォにボールを通させないということが、一つ日本のポイントになることを考えると、彼らをどう抑えるかも注目したいところだ。
相手のレベルを考えても、初戦のアンゴラ戦とは、全く別物の試合になる可能性が高い一戦だ。本大会前の直前となる8月31日に行われた国際親善試合では、日本の守備が通用するところを示し、セットプレーからの2失点に抑えて0-2という結果だった。この時に互いの力を把握できたはずだが、それは日本以上にスペインにメリットがあるだろう。実際に2019年の遠征時には、第1戦で日本の力を図ったスペインは、第2戦で日本を9-1というスコアで下している。
現在、総得点でスペインを抑えてグループEの首位に立つ日本。この試合に勝ったチームは、2位以内になることが確定するため、1次ラウンド突破が決まる。日本が不可能を可能にして、世界を驚かせるか。世界トップレベルとの距離感が、示される一戦を迎える。
文:河合 拓
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河合 拓
1980年生まれ、出身地のない転勤族。
フットサル情報サイト「Futsal X」発起人。大学在学中の2002年よりフットサルの取材を開始。フットサル専門誌、サッカー専門誌の編集者を経てフリーランスに。
民間大会からワールドカップまで、幅広く取材。個サルで減量を試みる。
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