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ロシアのモスクワで開催されているFIFAビーチサッカー・ワールドカップで日本代表がグループリーグを突破。準々決勝進出を決めている。
日本は開幕から2連勝と“順調なスタート”だった。
もっとも、初戦のパラグアイ戦では第1ピリオドに山内悠誠がPKを失敗。直後にパラグアイにFKから2点を決められ、さらに第2ピリオドにも1点を追加されて0対3とリードを広げられる苦しい展開となった。その後も、日本が追い上げるとパラグアイが突き放す展開で28分(第3ピリオドの4分)に2対4とされた。
だが、その後の日本の追い上げは見事だった。
29分20秒にGKの河合雄介のシュートをゴール前で山内が触ってコースを変える見事なゴールで追い上げを開始すると、5連続ゴールで日本は7対4で勝利を手繰り寄せたのだった。前線で赤熊卓弥がしっかりとボールを保持して、相手をブロックしながら右足で決めたゴールなど、内容的にも素晴らしい攻撃が見られた。
日本はアメリカとの第2戦でも先制を許してしまったが、早々に追い付いて、その後の点の取り合いを制して4対3のスコアで連勝。2戦を終えた時点でアメリカとパラグアイが勝点0だったため、グループ2位以内が決まったのだ。
攻撃力は高いが、不用意な失点が多いといった印象の2試合だった。
残念だったのは3戦目、開催国ロシアとの戦いだった。
ロシアは初戦(アメリカ)が延長での勝利。2戦目(パラグアイ)がPK勝ちだったため、2戦終了時点で勝点が3だった(この大会では引き分けはなく、第3ピリオドまでの勝利には勝点3。延長での勝利には勝点2。PK戦勝利の場合は勝点1が与えられる)。
つまり、最終戦を前に日本はグループリーグ突破を決めただけでなく、ロシア相手に引き分け以上、あるいは1点差の負けなら首位通過が決まるという状況だったのだ。
ところが、キックオフ直後のロシアのシュートが日本代表の監督兼選手の茂怜羅オズに当たってコースが変わり、開始からわずか8秒で先制を許すという不運な失点でスタート。8分までに3点を失ってしまう。
この日のロシアはやることなすことすべてがうまく回っており、たとえば15分にはGKのチュジコフのキックのバウンドが大きく変わって日本のゴールに飛び込むなど、日本にとって不運な失点も続き、第3ピリオドに赤熊が豪快なオーバーヘッド・シュートをきめたものの1対7という大差で敗れて2位通過となってしまったのだ。
もちろん、ロシア戦では不運も重なったが、パワーのあるロシア選手の寄せの速さに封じ込められてパスがつながらなかったし、早いタイミングでリスタートしてくるロシアのアップテンポな攻めにすっかり受け身に回ってしまっており、内容的にも完敗だった。
ロシアは2年前にパラグアイで開かれた大会では3位決定戦で日本を破ったチームだ。やはり強豪との試合では試合の入り方を失敗すると苦しいということだろう。
ロシア大会の会場はルジニキ・ビーチサッカー・アリーナ。2018年のFIFAワールドカップの決勝の会場となったルジニキ・スタジアムのすぐ南側にあり、モスクワ川の対岸にモスクワ大学を望むという素晴らしい立地だ。「ルジニキ」というのは「湿地」といった意味のロシア語で、モスクワ川が大きく蛇行している一角で、19世紀以来、ロシアにおける近代スポーツの発展の舞台となった場所だ。
1956年にはこのルジニキに巨大な「レーニン・スタジアム」が建設された。ソ連(当時)の国家的威信を示す、当時のソ連の独裁者の名を採って「スターリン様式」と呼ばれる太い列柱が立ち並ぶデザインの独特の外観が印象的なスタジアムだ。
レーニン・スタジアムは陸上競技場であり、1980年のモスクワ・オリンピックの時には10万人収容にまで拡張されてメインスタジアムとして使用された。また、ソ連(ロシア)代表の国際試合やUEFAチャンピオンズリーグ決勝など、サッカーのビッグゲームも数多く開催されてきた。
1991年のソ連崩壊後には革命の指導者レーニンの名がはずされて「ルジニキ・スタジアム」と呼ばれるようになり、さらに2018年のワールドカップ開催を前に陸上競技のトラックが撤去され、スタンドも全面的に改築されて、外観はそのままにまったく新しい近代的なサッカー専用スタジアムとなったのだ。
そのルジニキ・スタジアムが目の前にそびえる、サッカー・ファンにとってもワクワク感のある場所に造られたのが今回のビーチサッカー・ワールドカップの舞台。ルジニキ・ビーチサッカー・アリーナなのである。
さて、日本代表は無事にグループリーグを突破した。最近、FIFA主催のワールドカップやオリンピックで、男女各カテゴリーの日本代表はすべてグループリーグ突破を果たしている。とくにビーチサッカーでは、2005年にそれまでの世界選手権大会がFIFA主催に移管されて「ワールドカップ」という名称になってからワールドカップは10回開かれているが、その間、日本代表は6大会でグループリーグを突破している。
つまり、日本代表にとってグループリーグ突破はノルマみたいなもの。これからが本当の戦いとなる。
各カテゴリーの世界大会で日本はグループリーグを突破しており、それは素晴らしい戦績なのだが、決勝トーナメントの初戦を突破できない場合が多い。2018年のロシア・ワールドカップのラウンド16でベルギーとの激戦で大逆転負けを喫したことは記憶に新しい。
先日の東京オリンピックでも、U-24日本代表は決勝トーナメント初戦(準々決勝)でニュージーランドに相手に苦戦。PK戦で勝ってベスト4には進出したものの、準決勝と3位決定戦に敗れてメダル獲得に失敗している。
グループリーグは勝ち抜けるものの、4試合目以降に力を発揮できない。それが、日本のサッカーの現在地なのだ。
ビーチサッカーの日本代表は、2年前のパラグアイ大会では準々決勝ではウルグアイを3対2の接戦で破り、さらに準決勝では同大会で優勝したポルトガルと3対3で引き分けてPK負けで3位決定戦に回っている。それだけに、ビーチサッカーの日本代表には他のカテゴリー以上に大きな期待をしてしまう。
とにかく、日本時間8月27日午前1時開始の準々決勝はぜひとも突破してほしいものだ。対戦相手は、グループBで勝点6を獲得し、得失点差でスペインを上回って首位通過したタヒチ。3試合で23得点を記録しているだけに好調そうだ。
日本代表は、2戦目までにグループリーグ突破を決めていたものの、最終ロシア戦でもメンバーを変更することなく戦った。フィクソ(DF)として欠くことのできない存在である監督兼任の茂怜羅オズがほとんどフル出場しているなど、準々決勝では疲労との戦いにもなる。中1日の過密日程の中でどれだけリカバリーできるかが課題になるだろう。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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