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サッカー フットサル コラム 2021年8月18日

“十一者十一様”の魅力的な公立校集団。大津が目指すのは悲願の日本一

土屋雅史コラム by 土屋 雅史
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チーム3点目を決めた大津高校・薬師田澪が歓喜の咆哮

衝撃的な一戦だった。「良い勉強になりました。大津が単純に上でした。大人と子供みたいでしたよね」。敗れた榎本雅大監督が口にした言葉は、確かな本心だろう。大津高校と流通経済大柏高校。高円宮杯プレミアリーグを主戦場に置く優勝候補同士が、早くも2回戦で激突したビッグマッチは、3-0という意外な大差で大津が快勝を収めた。

開始1分の得点が、試合に大きな影響を与えたことは間違いない。大津はセットプレーから相手のオウンゴールを誘発し、いきなりアドバンテージを得た。ただ、「1個1個アンラッキーな所も含めて負けたというよりは、自分たちももっと良いサッカーをできたし、そこを相手にうまく封じられた形でした」と流通経済大柏のキャプテンを務める渋谷諒太も語ったように、ラッキーだったのはあくまでもゴールの形。以降も高いインテンシティでぶつかり合う両雄の局面局面を見れば、やはり大津の方に分があった。

最前線に小林俊瑛という190センチを超えるターゲットがいるだけに、まずはファーストチョイスとしてその武器を使うのだが、それだけのチームでないことをボランチの薬師田澪は誇らしげに口にする。「(森田)大智がドリブルで相手を剥がしてくれるので、そこは大きいかなという感じです。小林(俊瑛)も前で収められますし、(川口)敦史もシュートを打てますし、(一村)聖連も個人技があるので、そこは使っていきたいですし、日高(華杜)も足が速くて、(岩本)昌大郎も良いボールを蹴りますから」。

小林の後方で構える2シャドー、川口敦史と一村聖連はセカンド奪取にも、積極的な仕掛けにも力を発揮。一村は薬師田の巧みなアシストを受け、年代別代表にも選ばれている流通経済大柏のGKデューフエマニエル凛太朗も反応できないような強烈なゴールを叩き込んだ。

右ウイングバックの日高華杜はとにかく縦へと突き進み、左ウイングバックの岩本昌大郎は利き足の左足に絶対的な自信を持つ。岩本は後半にFKから絶妙のボールを中央へ送り、薬師田の完璧なヘディングゴールをアシスト。最終ラインに並んだ和田理央、寺岡潤一郎、川副泰樹の3人はエリアの前に壁を築き、侵入を許しても最後の最後には身体を投げ出す。仮にそこを突破したとしても、最後尾にはU-18日本代表候補のGK佐藤瑠星がそびえ立つ。

ドイスボランチの一角を担う森田大智は、ボールをほとんど失わない技術の高さを誇りながら、「今日はミスも多かったし、自分では全然納得行っていないです」ときっぱり。楽しげな笑顔で仲間を評した薬師田も、ボランチ転向半年とは思えないパフォーマンスで、この日も1ゴール1アシストの大活躍。これだけそれぞれの“キャラ”が立っているチームも、そうは多くない。個人的に普段なかなか見る機会のないチームということを差し引いても、1試合を見ただけで魅力的なグループであることは十分に理解できた。

チームを強化する上で、プレミアリーグというステージを戦っていることも、見逃せない大きなポイントだ。「新チームが始まってすぐは結構ひどかったんですけど(笑)、プレミアをやっていく中で成長したというか、最初に比べたら本当に強くなっているという実感が自分たちでもあります」と森田も話したように、コロナ禍という現状もあって、順調に日程を消化できているわけではないものの、ここまで7試合を戦って4勝2分け1敗の暫定3位と大健闘。ヴィッセル神戸U-18、ジュビロ磐田U-18とJユース勢に競り勝ち、セレッソ大阪U-18には4-1で完勝するなど、年代最高峰の相手を向こうに回し、確かな成果を残してきた。

2回戦の結果を受けて、よりこれ以降の注目度も増した感のある大津だが、実はまだ日本一の座に就いたことはない。2014年の山梨インターハイ決勝では、後半終了間際まで東福岡高校相手にリードしていたものの、土壇場で同点弾を浴びると、延長戦で突き放されてまさかの準優勝。何とも言えない表情を浮かべていた平岡和徳監督(現在は総監督)の姿は、今でも強く記憶に残っている。

「この試合は良い勝ち方をしましたけど、次の試合も気を抜けないと思うので、一戦一戦戦っていきたいですし、目標は優勝なので、そこを目指していきたいと思います」。チームを束ねるキャプテンの森田はハッキリとそう言い切った。悲願の全国制覇へ。真夏の福井でスタートした大津の進撃は、果たしてどこまで。

文 土屋雅史

土屋 雅史

土屋 雅史

1979年生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。早稲田大学法学部を卒業後、2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社し、「Foot!」ディレクターやJリーグ中継プロデューサーを歴任。2021年からフリーランスとして活動中。

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