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4月10日に行われたドイツ・ブンデスリーガ第28節。現在4位に付けてチャンピオンズリーグ出場権獲得に向けて戦っているアイントラハト・フランクフルトが3位のヴォルフスブルクを迎えた直接対決は、両チーム合わせて7ゴールが決まるという壮絶な撃ち合いとなり、ホームのフランクフルトが4対3で勝利して、3位ヴォルフスブルクとの勝点差を1にまで縮めることに成功した。
そして、この試合でトップ下で先発した鎌田大地が1ゴール1アシストと活躍して、現地でも高く評価されているようだ。
前半6分にボテ・リドル・バクのコースを狙った素晴らしいシュートでアウェーのヴォルフスブルクがリードしたが、その2分後に同点ゴールを決めたのが鎌田だった。
右サイドからエリック・ドゥルムが入れたグラウンダーのクロスをセバスティアン・ローでがスルーすると、待ち構えていた鎌田が右足で正確にゴールの中に流し込んだのだ。
右サイドにボールが出た瞬間にフランクフルトの前線の選手が一斉にゴール前に殺到したが、鎌田はそこから約10メートルほど離れてタイミングを遅らせてペナルティーエリアに進入したため完全にフリーな状態になっており、それをローデもしっかり確認してスルーしたのだ。
先制を許した直後の貴重な同点弾だった。
27分にはルカ・ヨヴィッチが強烈なシュートを叩き込んで、フランクフルトは前半を2対1とリードして折り返した。ところが、後半開始直後の46分にはDF間のパス交換でのミスを拾われて、後半開始からあっという間に2対2の同点にされてしまった。
そして、8分後の54分に再び勝ち越しとなるチームの3点目、アンドレ・シウヴァのゴールをお膳立てしたのが鎌田だった。
相手陣内深いところで、相手選手のボールコントロールが大きくなると、その瞬間を狙っていた鎌田が体をねじ込むようにしてボールを奪い取り、そのままゴールに向かってドリブルを開始。相手DFをしっかりと引き付けてから右を並走していたアンドレ・シウヴァにパスを送ったのだ。
その後、1点ずつを取り合って、試合は4対3で終了。フランクフルトはチャンピオンズリーグ圏を争う当面の相手、ヴォルフスブルクを相手に貴重な勝点3を奪ったのだ。先制された直後の同点ゴールを決め、後半にも同点とされた後にすぐ相手を突き放す3点目をアシストした鎌田は、この勝利に大きく貢献した。
1ゴール1アシストという“結果”だけではない。この日の鎌田のパフォーマンスは90分を通して賞賛に値するものだった。
アシストとなったパス以外にも、トップ下に位置した鎌田は前線のヨヴィッチやアンドレ・シウヴァに素晴らしいパスを供給し続けたのだ。
事前に味方の位置や動きを把握しているからなのだろう。味方からのパスを受けたり、相手のボールをインターセプトした瞬間に、ほとんどノールックで的確なパスを出すことができるのだ。体の向きや顔の向きから考えて、まったく意外な、予測できない方向に角度を付けてパスを出せるので相手のDFからすると非常に対応しづらくなる。
鎌田は身長が180センチと、ブンデスリーガの屈強な選手たちの間では特に大きな選手ではない。いや、むしろ華奢な印象を受ける選手だ。また、俊足を飛ばして走り回る選手でもない。
そんな鎌田がこれほどの好パフォーマンスを発揮できるのは、ポジション取りの上手さのおかげなのだろう。鎌田は、つねに相手のマークからはずれた絶妙な位置を取ってボールを受けている。
しかもヴォルフスブルク戦の3点目のアシストの場面でも分かるように、接触プレーを見ても最近は当たり負けをすることがほとんどない。よほど、しっかりと体幹の強さを作り上げているのだろう。
その飄々としたプレーから長短の意外性溢れるパスを繰り出して攻撃を操るプレーぶりは独特のもので、どこか、あの日本代表のレジェンドだった遠藤保仁を思わすようでもある。
先日の日本代表での試合でも鎌田は好パフォーマンスを発揮していたが、このヴォルフスブルク戦のようなプレーをしてくれたら、日本代表にとってもオプションが増えることになるだろう。
日本代表は、韓国戦で3得点、モンゴル戦では14得点を生みだしたが、その攻撃の軸になっているのは大迫勇也である。
ただ、大迫自身はブレーメンでは出場時間が少なくなっており(先日のカップ戦では久々にゴールを決めたようだが)、必ずしもコンディション面で万全ではないようにも見えた。だが、日本代表では前線でしっかりとボールを収めて攻撃の軸となって味方を使える唯一の選手だ。
日本代表の攻撃の成否は、まさに大迫に懸かっているのだ。
しかも、大迫に代わる選手がいない。FWとしては鈴木武蔵や浅野などがいるが、どちらもスピードを生かして裏に抜けるタイプのFWであり、前線でボールを収める大迫の代わりにはなれない。もし、大迫が何らかの事情で起用できないときにどするのか。それが、日本代表にとっての大きな問題点である。
しかし、もし鎌田がヴォルフスブルク戦のようなパフォーマンスをしてくれるのであれば、トップ下の鎌田にくさびのパスを送って、そこでタメを作ることができる。そして、鎌田の前に裏抜けタイプのFWを置けば、鎌田からのパスから多くのチャンスが生まれるはずだ。
あるいは、これはすでに代表ではテスト済みだが、鎌田と南野拓実をツートップとして、互いに前後に出入りすることで生かし合うこともできるはず。
つねに、大迫のワントップでなく、鎌田のトップ下を生かした裏抜けタイプを生かす攻撃ができるようになれば、日本代表の攻撃パターンも多様化できるはず。
今や、フランクフルトの攻撃陣の欠かせない駒となった鎌田大地。このまま、チャンピオンズリーグ出場権を手にして、来シーズンはさらに高いレベルの試合を経験して成長していってほしいものである。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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