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Jリーグの2021年シーズンが開幕した。
開幕戦では、昨年、圧倒的な強さで優勝を飾った川崎フロンターレが一昨年の覇者、横浜F・マリノスに完勝して連覇に向けて好スタートを切った。
横浜FMはサイドバックの攻撃参加の形が整理されて安定感は増したように思えたが、得点源の一つだったエリキがチームを離れ、またマルコス・ジュニオールを欠いていたので攻撃面で迫力不足だった。
一方、川崎は、2ゴールを決めた家長昭博をはじめ各選手のコンディションもよさそうだったし、田中碧が大きく成長。昨年に比べてもチーム力はさらに一段上がっていた。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)と並行して戦う難しさはあるが、選手層の厚さを誇る川崎であれば、ACLとJ1リーグの「二冠」も可能なように思える。
さて、今シーズンのJ1リーグはチーム数が20チームに増えたことで全38節の長丁場となる。そして、何よりも4チームが降格ということでシビアな戦いが続くことだろう。
昨年、超過密日程となったことで取り入れられた「5人交代制」が継続される上、今シーズンから脳震盪の疑いがある場合には6人目の交代も認められることとなった。
昨シーズンは、この5人交代制のおかげで積極的に戦術的交代ができるようになったので、ゲームに変化が生まれやすくなった。今年も、各監督がさらに積極的に交代カードを使うと考えられるので、ゲームは格段に面白くなるだろう。
もう一つ、今シーズンの注目は「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」の導入だ。
昨シーズンから導入される予定で第1節で実施されたものの、その後、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で試合日程が過密になったことで、2020年シーズンの再開後は導入が見送られていた。
そのVARが、今シーズン再び導入されたのだ。
開幕節から、VARの影響はいろいろあった。ハンドの判定でゴールが取り消されたり、またPKが与えられたり、様々な形でVARの介入があった。
VARといえば、カタールで開催されたACLの準決勝でヴィッセル神戸の追加点が取り消されて、神戸が準決勝敗退となったことで物議を醸したことがあった。あの大会では、VARが過剰に介入したのが問題だった。大事なことは、VARというものはあらゆる反則を見逃さないためにあるのではなく、ピッチ上の審判員が犯した「明らかな誤審」をチェックするためのものだということだ。「疑わしき」は介入すべきではないのだ。
第1節を見る限り、JリーグのVARは過剰介入もなく、必要なところで必要なチェックが入って誤審を防ぐことができていた。VARが導入されて最初の週としては合格点だった。
ただ、それでも気になったのはゲームが途切れることだ。これは、Jリーグの審判員の問題ではなく、世界的に考えるべきことなのだが、いかに介入を少なくしていくのかが大事になる。
たとえば、開幕戦となった川崎と横浜FMの試合の前半に、横浜FMの仲川輝人が抜け出してシュートまで行った場面でVARが介入してオフサイドとなった場面があった。
この場面で、仲川は生で見ていてもすぐに分かる明らかなオフサイドだった。だが、VARが導入されている試合なので副審の旗はすぐには上がらなかった。「実はオフサイドではなかった」という誤審を防ぐため、プレーは流されて、その後にチェックが入るのだ。この場面でも、シュートシーンまでプレーは流されて、その後のチェックの結果オフサイドの判定となったのだ。
間違いではない。しかし、何とも不必要な中断のようにも見えた。
ほぼ間違いないオフサイドだったのだ。副審はその場ですぐに旗を上げてもいいのではないだろうか。
そこで旗を上げられれば、すぐに川崎の間接フリーキックで試合は再開することができるのだ。だが、VARチェックに判定をゆだねるために数十秒の時間が無駄になってしまうし、川崎のDFたちや等々力のサポーターたちは肝を冷やすことになるし、仲川も無駄なダッシュをしなければならなかった。
もし、旗が上がって、「でも実は、本当はオフサイドではなかった」となっても、それはただのミスジャッジでしかない。そこまで判定の正確を期すためにゲームの流れを犠牲にしなくてもいいのではないか。
逆にゴールが取り消された場面はどうだろうか?
浦和レッズ対FC東京の試合の前半5分に浦和の杉本健勇が抜け出して冷静に決めた場面があった。だが、ここでVARが介入して杉本がオフサイドだということが確認されてゴールは認められなかった。
誤審ではない。ほんの少しだったが、杉本は確かにオフサイドだったから、ここでVARが介入してゴールが取り消されたのは、まさにVARの目的に適っているものだ。
しかし、杉本が出ていたのはほんの半歩ほどのことだった。肉眼では見ることができないほどのわずかなオフサイド。あのゴールが認められたとしても、「明らかな誤審」とは言えないのではないか。
川崎のゲームの終盤、横浜FMが2点を追って攻勢を懸けていた時に川崎の反則があり、「レッドカードが必要かどうか」のチェックのためにレフェリーが試合を止めた場面もあった。横浜FM側は、クイックスタートで攻撃を続けたかったのにゲームを止められて、ボールのそばにいた畠中慎之輔はかかなり文句を言っていた。
今、このコラムの中で触れた場面は、いずれも現行のルールで考えればVARが介入したことはまったく誤りではなかった。しかし、ゲームが途切れるのは実にストレスフルだ。日曜日には、VARのないJ2リーグ(相模原対京都)を見に行ったが、余計な中断がなくて気持ちよく観戦できた。
僕はゲームが途切れるのを防ぐためにはVARの介入を極力回避すべきだという感想を抱いたのだ。運用の基準を考え直す必要がある。あるいは、「前後半各チーム2回だけチャレンジ権を与える」といったようにすれば、無駄な介入は防げるのではないだろうか。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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