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間もなく開幕を迎える2021年のJリーグ。昨年は、川崎フロンターレが圧倒的な強さで優勝したが、果たして今シーズンは川崎を倒すチームが現われるのか……。
Jリーグというのは難しいリーグで、ヨーロッパのリーグとちがって戦力は均衡しているし、相手をしっかり分析して相手の良さを消すようなことをしてくるチームが多い。前年優勝チームともなれば、すべてのチームの監督がすでにしっかりと分析して対策を立てていることだろう。連覇が難しいリーグなのだ。
だが、昨年の川崎の強さは尋常なものではなかった。2位となったガンバ大阪にしても、11月の対戦では0対5という完敗を喫して、目の前で川崎の優勝を見せつけられてしまった。天皇杯決勝で再び対戦し、0対1とスコア上は接戦だったし、終了間際には「あわや同点」という場面も作ったが、内容的には圧倒されていた。
僕は、昨年ほどの大差になることはないにしても、やはり川崎連覇の可能性が高いと思う。心配なのはACLの負担だろうが、選手層の厚さが武器の川崎なら乗り切れるだろうし、グループステージが4月から5月にかけての集中開催になったことで、その前後さえうまく乗り切れればかえって負担は例年よりは軽くなるように思えるのだ。
川崎の連覇以外の最大の注目点は、昨シーズン、徳島ヴォルティスをJ2優勝に導いたリカルド・ロドリゲス監督が浦和レッズの監督に就任したことだ。
昨シーズンの徳島の試合をご覧になった方はお分かりだろうが、徳島は3バックと4バックを使い分け、攻撃に移るとサイドバックが前線まで飛び出していく攻撃的な可変システムを使っていた。「現在のJリーグの中でも最もモダンなサッカーだった」といっても過言ではない。
そのロドリゲス監督が、浦和というビッグクラブでどんなチームを作り上げるのか、本当に楽しみだ。
もちろん、昨年の徳島のようなチームを作るのはそれほど簡単なことではないだろう。ロドリゲス監督は、徳島で4年をかけてチームを作ってきたのだ。高度な戦術を駆使して、スムースにポジションを変えながら試合を進めることのできるチームを完成させるのに時間がかかるのは、当然のことだろう。
ただ、浦和には経験豊富な代表クラスの選手が何人もいる。
そして、浦和の選手たちの中にはかつてミハイロ・ペトロヴィッチ監督の薫陶を受けた選手が多数いる。ペトロヴィッチ監督のサッカーも、3バックでスタートして、ボランチが最終ラインに落ちることによって2人のセンターバックも攻撃に参加するという超攻撃的な可変システムだった。
ペトロヴィッチ監督の下でタイトルをつかめなかった浦和は(2016年には最多勝点を記録したのだが、チャンピオンシップで敗れた)、その後、より現実主義的なオズワルド・オリヴェイラ監督が就任。さらに、ゲーム戦術を駆使するタイプの大槻毅監督にバトンタッチされていったのだが、ペトロヴィッチ監督の記憶を呼び覚ませば、ロドリゲス監督のサッカーも早い時期に習得できるかもしれない。
また、今シーズン、浦和にやってきた西大伍の存在も大きいだろう。
西は、鹿島アントラーズ時代から非常に戦術眼の高い選手であり、サイドバックが基本だったがボランチでもサイドアタッカーでもこなしていた(昨年のACLでもサイドハーフでプレーした)。ロドリゲス監督の可変システムを実践するためには、まさにうってつけの選手なのではないだろうか。
もう1人、注目の監督を挙げれば、清水エスパルスの監督に就任したミゲル=アンヘル・ロティーナ監督だろう。
このところ低迷が続いていた清水だが、今シーズンは日本代表GKの権田修一と契約するなど補強も積極的で、Jリーグで結果を出し続けてきたロティーナ監督が加われば、かなり順位を上げれる気がする。
ロティーナ監督は2017年に東京ヴェルディの監督に就任すると、前年はJ2リーグで18位だったクラブをその後2年続けて昇格プレーオフに導いた(同監督退任後、東京Vは再び2年連続で10位以下に沈んだ)。
そして、ロティーナ監督は2019年にはJ1のセレッソ大阪の監督として、前年7位だったクラブを5位に引き上げ、さらに2020年にはACL圏内の3 位に導いたのだ。
しっかりと相手を分析して、選手の立ち位置まで細かく修正。しっかりと勝点を積み重ねていく現実主義的な監督だ。まずは残留。そして少しでも順位を上げていこうという、今の清水にとってはまさにうってつけの監督のような気がするのだ。
ロドリゲス監督とロティーナ監督。2人はいずれもスペイン人監督だ。
Jリーグでは外国籍監督と言えば、これまで圧倒的のブラジル人監督が多かった。また、旧ユーゴスラビア諸国出身の監督も、あのイビチャ・オシム監督をはじめ数多く活躍してきた。そんな中で、ロドリゲス監督とロティーナ監督の活躍もあって、次第にスペイン人指導者の注目が集まるようになってきている。
徳島は、ロドリゲス監督退任の後に、やはりスペイン人のダニエル・ポヤトス監督を招聘した(新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、ポヤトス監督がいつ来日できるのか見通せなくなってしまったのは大誤算だったが)。
そういえば、フットサルのFリーグでもスペイン人指導者が活躍している。
Fリーグの“絶対王者”的存在である名古屋オーシャンズでは、現在スペイン人のフアン=フランシスコ・フエンテス監督が指揮を執っているが、非常に堅実な試合を展開しており、2020/21シーズンの終盤を迎えているFリーグでは、2月14日現在19勝1分1敗という圧倒的な成績を残してすでに優勝を決めている。また、ペスカドーラ町田も今シーズンからやはりスペイン人のルイス・ベルナット監督が指揮を執っており、若手選手をうまく使って躍進した町田は3位につけている。
Jリーグでは、これからもスペイン人監督がさらに活躍していくのだろうか? また、スペイン人監督は日本人にとって相性が良いのであろうか?
たとえば、スペイン人には戦術的なサッカーをする監督が多いが、そのあたりが日本人選手に合っているのかもしれない。もちろん、イタリア人も非常に戦術的な指導をするが、イタリアの戦術というのは非常に特殊な進化を遂げており、イタリア人同士ならすぐに理解できるところでも(日本人だけでなく)外国人には伝わりにくいところがある。そのあたりで、スペイン人監督の始動の方が分かりやすいのかもしれない。
いずれにしても、ロドリゲス監督とロティーナ監督の今シーズンの活躍に注目していきたい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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