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1月22日に2021年シーズンのJリーグの日程が発表され、27日にはアジア・サッカー連盟からAFCチャンピオンズリーグ(ACL)の日程も発表された。具体的に新シーズンの概要が明らかになってきたことで、新シーズン開幕に向けて期待が高まってきたのではないだろうか。
昨シーズンは、新型コロナウイルス感染症の拡大のため、Jリーグは開幕直後に中断。J2リーグは6月末、J1リーグは7月初めに再開された。その後、非常にタイトなスケジュールの中で日程を消化。リーグ事務局や各クラブの運営担当、監督・コーチをはじめとしたスタッフ。そして、選手たち。さらに感染症対策を遵守しながら声を出さない応援スタイルの中で選手たちを支えたサポーターの協力によって最終的に全試合が実施されたことは、素晴らしい成果だったと言っていい。
ただ、日程がタイトだったこと、そして再開が真夏の酷暑の時期だったことなどのために、ピッチ上でのプレーに対する影響は避けられなかった。
厳しい日程をこなすために、「5人交代制」や「飲水タイム」が実施された。
初めは、交代の使い方がうまくいかなかったり、交代によってゲームの様相が一瞬にして変わってしまうようなこともあったが、次第に監督も選手も5人交代制に慣れて、交代選手を使いながら高いレベルのプレーを見せてくれた。
しかし、「5人交代制」が採用されたとしても、選手層の薄いチームにとっては使い方が難しかったことだろう。
選手層が厚く、「5人交代制」有効に使った川崎フロンターレが大きなアドバンテージを得たのは事実で、川崎はJリーグ史上最も大きな差をつけて早々と優勝を決めてしまった。選手が走るのではなく、パスを回してボールを動かすという川崎のプレースタイルも、間違いなく有利に働いた。
もっとも、もし、そうしたアドバンテージがなかったとしても、昨シーズンは川崎が優勝していたことは間違いないだろう。川崎はそれくらい強かった。
さて、そこで、新シーズンの日程について考えてみたい。
今シーズンの開幕は2月26日に開幕して、12月4日の最終節までの日程となっている。例年通りの日程である。ただし、昨シーズンは降格がないまま、2クラブがJ1昇格を果たしたので、今シーズンは20チームのリーグ戦となったことで、従来より4試合増えて38節までとなる。
昨シーズンほどではないが、やはり試合数が多く、厳しい日程であることは間違いないだろう。
今シーズンの特徴は、7月11日のJ1第22節で中断し、8月9日まで約1か月の中断があることだ。
もちろん、これは東京オリンピックが開催される(と、政府は主張している)からで、オリンピック期間中はJリーグだけでなく、プロ野球も中断し、日本のスポーツ界はオリンピックに集中することとなる。
これまでにも、ワールドカップ期間中に中断があったが、今年の特徴はまず、7月から8月までの暑くなった時期に中断があることだ。ワールドカップ期間の中断は開幕から2か月強経過した初夏の時期だったが、今シーズンは第22節、つまりちょうどシーズンの半分が終わった時期に中断があることだ。ヨーロッパのリーグ戦で言う「ウィンターブレーク」になぞらえて言えば「サマーブレーク」とでも言おうか。
しかも、中断期間は、ちょうど気温が急上昇し、真夏に差し掛かった時期に当たる。もちろん、中断明けの8月もまだ酷暑が続くが、中断によって休養が取れてコンディションを整えてから臨めるので、これまでよりも暑さの影響は少なくなるに違いない。
たとえば、運動量に頼るチームにとっては、暑さが厳しい時期の試合数が減り、中断でコンディションを整えることができるのは大きなアドバンテージになるし、逆に川崎フロンターレは昨年ほど大きなアドバンテージを得ることができない。
「運動量が必要な強豪」といえば、何といっても2019年シーズンに圧倒的な攻撃力で優勝した、アンジェ・ポステコグルー監督の横浜F・マリノスである。もちろん、昨シーズンと同じように、相手チームは超攻撃的な横浜FMの守備の弱点を狙ってくるだろうから、一昨年のような強さを発揮できるかどうかは定かではないが、ACLの負担がないことも考え合わせれば、横浜F・マリノスは「ストップ・ザ・カワサキ」の急先鋒と考えられる。
もう一つ、この「サマーブレーク」で得をするのが、新監督を迎えたばかりのチームだ。
新監督の下で選手起用も、戦術も変わる。開幕前の合宿でも十分な準備はするとしても、実戦を経なければ本当の意味でのコンビネーションは確立できない。シーズンに入って、噴出してくるであろういくつもの問題点。それを、いかに早く終始していくかが監督の手腕となるのだ。
しかし、試合日程が過密になっていると、そうした戦術的な修正は難しくなってしまう。つまり、試合と試合の間に戦術的なトレーニングをする余裕がなくなってしまうからだ。
昨シーズン、これで苦しんだのが鹿島アントラーズだった。ザーゴ監督が就任したものの、前シーズンは天皇杯決勝まで戦っていたので始動が遅れ、さらにACLのプレーオフもあったため準備不足のままシーズンに突入してしまった。そして、中断期間にも十分な活動ができず、修正が遅れてしまったのだ。リーグ戦の終盤で立て直してからは鹿島らしい強さを発揮したのだから、シーズン前半に日程の余裕があったら、昨シーズンの鹿島はかなり上位に食い込めていたはずだ。
今シーズンの注目クラブの一つが、リカルド・ロドリゲスを新監督に迎えた浦和レッズだ。徳島ヴォルティスを素晴らしいチームに育て上げたR・ロドリゲス監督の手腕は間違いない。だが、その戦術を落とし込むには時間がかかると見て間違いない。
しかし、22節を終了した後に設けられた中断期間をうまく利用できたら、その後はチーム力が急上昇するかもしれない。浦和だけでなく、新監督を迎えたシーズンにとっては、「サマーブレーク」をどう利用するかが重要なポイントとなる。
それでも、僕は今シーズンも川崎フロンターレが最大の優勝候補だと思うが、横浜F・マリノスやFC東京、鹿島アントラーズなど、ACLの負担がないクラブを中心とした“追走集団に”注目したい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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