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サッカー フットサル コラム 2020年12月24日

異なってリーグの代表が残った第100回天皇杯。下部リーグからの挑戦の構図が最後まで続く……

後藤健生コラム by 後藤 健生
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今シーズンの天皇杯全日本サッカー選手権大会は「第100回」の特別な大会となるはずだった。

全日本選手権大会の前身である「ア式蹴球全国優勝競技会」が、1921年の9月に東京・日比谷公園で行われてからちょうど100回目というわけである(戦争などのために中止となった大会も通算してカウントされる)。

元号が明治から大正に変わった1910年代、東京高等師範学校蹴球部(フートボール部から改称)の生徒たちが本格的にサッカー(ア式蹴球)強化に取り組み始め、各地にチームが結成されていった。そして、全国大会開催を望む声は高まっていたが、統括団体(つまり協会)の結成はなかなか進まなかった。

だが、1921年にイングランド協会(FA)から「全国大会の優勝チームに」として銀製のカップが贈られたのをきっかけに大日本蹴球協会が結成され、初の全国大会が開催されたのだ(記念すべき第1回大会では、「東京蹴球団」が優勝している)。

その後、大会の形式は何度も変更され、第31回大会からは天皇杯が授与されることとなり、大会は「天皇杯」という名称で親しまれるようになった。さらに、本場イングランドのFAカップに倣って全国のクラブが参加できるようになり、サッカーのプロ化(Jリーグの結成)以後はJリーグ・クラブに全国のアマチュア・チームが挑戦する大会となった(サッカーの世界では「プロ」、「アマチュア」という区別にはあまり意味がないが、ここでは「Jリーグ以外のチーム」という意味で「アマチュア」という言葉を使用する)。

しかし、今シーズンは新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で、大会形式が大幅に変更となり、Jリーグ・クラブはJ1リーグの優勝と準優勝チーム、それにJ2リーグとJ3リーグの各優勝チームの4チームだけとなってしまった。各都道府県代表のアマチュア・チームがトーナメントを行い、勝ち抜いたチームがJリーグ勢に挑戦するという形式である。

天皇杯など、カップ戦の最大の楽しみが「ジャイアントキリング」である。とくに、番狂わせが起こりやすいスポーツであるサッカーでは、かなりの実力差があったとしても、下位チームがしっかりとハードワークして、そしてほんの少しの幸運が重なれば上位を倒すことができる。

実際、これまでの天皇杯の歴史を振り返っても高校のチームがJリーグ勢を苦しめるなど「ジャイキリ」の記憶は数多くある。

昨年度はJFLの王者だったHonda FCや法政大学がJリーグ勢を連破して注目を集めた。

しかし、今年はJリーグ勢が参加しないままだったので「ジャイアントキリング」の楽しみは味わえなかった。たしかに、地域リーグのチームがJFL勢に勝ったら番狂わせなのではあるが、アマチュアがJリーグ勢に勝利したのに比べればインパクトは小さい。

こうして、あまり注目を集めないまま今年の大会も5回戦までが終わり、いよいよ12月23日の準々決勝からJリーグ勢が登場する。

4回戦が終わって決勝までのトーナメント表が発表になってみると、今年の天皇杯も思った以上に面白い組み合わせになっていた。

まず、4回戦終了時点で勝ち残っていたのがすべて異なったリーグに所属するチームだったことだ。実力的には上のはずのJFL勢から勝ち残ったのは「アマチュアシード枠」のHonda FCだけだったのだ。

Honda FCは2019年までJFLで4連覇を達成しており、まさに「絶対王者」、「アマチュア最強」の名をほしいままにしていた。ところが、今シーズンは、Honda FCはJFLで4位と低迷してしまったのだ。Honda FCに代わってJFLのタイトルを獲得したのがヴェルスパ大分だったが、天皇杯4回戦ではそのヴェルスパ大分とHonda FCの顔合わせが実現。Honda FCがJFLでのリベンジを果たして5回戦進出を決めた。

そして、5回戦ではHonda FCは関東大学リーグから唯一残った筑波大学と対戦した。

日本のサッカー界のトップリーグはもちろんJ1リーグである。そして、J2リーグが2部に当たる。だが、3部リーグとはどのリーグなのことなのだろうか? J3というリーグがあるが、実力的にはJFLや関東大学リーグとほとんど変わりはない。いや、Honda FCや関東大学の上位校はおそらくJ3リーグより力が上であろう。

そのJFLの代表であるHonda FCと関東大学の代表、筑波大学と対戦。筑波大学が考え抜いた試合運びで効率的に戦って先制したのだが、Honda FCは慌てず、焦らず反撃し、90+1分の佐々木俊輝のゴールで逆転勝ちを収めた。今シーズンは、新型コロナウイルスの影響で春先から夏場にかけて活動ができなかったが、毎年、上級生が卒業し、新入生が入部してくる学校のチームにとってはとくに影響が大きかったようで、今シーズンの天皇杯では大学勢は大きな爪痕を残すことができなかった。

5回戦ではもう一つの山も面白い対戦だった。

勝ち残ったのはJFLよりさらに下のカテゴリーに当たる地域リーグ(北信越リーグ)の福井ユナイテッドと、地域リーグよりさらに下の県リーグ(広島県リーグ1部)の福山シティFC。結果は、なんと格下であるはずの福山シティが3対0で完勝してしまった。

こうして、各カテゴリーの代表クラブが集まってのトーナメントの結果、準々決勝ではアマチュアの雄Honda FCがJ2リーグで優勝を決めた徳島ヴォルティス、そして県リーグから躍進を遂げた福山シティがJ3リーグを圧倒的な強さで制したブラウブリッツ秋田にそれぞれ挑戦することが決まった。

Honda FCと徳島の戦いは注目カードだ。

徳島はスペイン人のリカルド・ロドリゲス監督の下で、試合中にも自由自在にシステムを変えてくる非常にモダンなサッカーをするチームだ。ロドリゲス監督も就任から4年目とあって、チームの完成度も非常に高い。

ただ、徳島はなかなかJ2優勝を決められず、最終節では2位のアビスパ福岡に0対1で敗れたものの、得失点差によって優勝が決まったのだ。最後まで競り合った後だけに、フィジカル的には疲労がたまっているだろうし、メンタル的には集中を欠く恐れがある。一方Honda FCの方は、JFLが終了してから1か月の時間があり、また、天皇杯に向けてしっかりと準備ができている。Honda FCが勝ってもけっして不思議ではないカードだ。

一方、県リーグ代表の福山シティが秋田を倒すのは難しい仕事となるだろうが、福山シティには“勢い”がある。変則的な形式となった2020年の天皇杯を象徴するチーム、福山シティの検討に期待したい。

そして、さらに準決勝ではHonda FCがJ1で2位に入ったガンバ大阪と対戦。そして、2020年Jリーグで圧勝した川崎フロンターレは秋田もしくは福山シティの挑戦を受けることとなる。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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