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サッカー フットサル コラム 2020年12月9日

ショッキングな失速。横浜F・マリノスの敗退の原因は?

後藤健生コラム by 後藤 健生
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カタールで開催されているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)。日本から参加している3つのクラブはすべてグループステージ突破を果たしたが、ラウンド16ではヴィッセル神戸がアンドレス・イニエスタの先制ゴールなどで上海上港(中国)を破って準々決勝進出を決めたものの、FC東京は北京国安(中国)に、そして横浜F・マリノスは水原三星ブルーウイングス(韓国)にそれぞれ敗れて敗退が決まってしまった。

FC東京にとってはディエゴ・オリヴェイラの離脱が大きかった。

グループステージでの上海申花戦で悪質なタックルを受けたディエゴ・オリヴェイラは「腓骨骨挫傷および右足首の靱帯損傷」という重傷で、その後の試合ではすべてベンチ外。来年の1月4日に行われるJリーグYBCルヴァンカップ決勝での出場も危ぶまれる状態だ。


悪質タックルをした選手が警告を受けただけで重い処分が課せられなかったという点はだ問題だが、いずれにしてもディエゴ・オリヴェイラの欠場によってFC東京の戦力は大幅に削がれた。

シーズン来、FC東京の攻撃面でのディエゴ・オリヴェイラの貢献度は非常に大きい。献身的にサイドで守備をしたかと思うと、自らドリブルで持ち込んて攻撃を組み立てたり、あるいは自ら得点を決めたりとディエゴ・オリヴェイラの攻守にわたる貢献は絶大なものがあった。FC東京にとっては片方の翼を失って戦ったようなものだ。

せめて、前半、優勢に試合を進めてチャンスを作った時間帯に先制点を決めれば活路も開けたかもしれないが、そこで決めきれず、後半に入ると自陣に押し込まれて北京国安の外国人選手たちの突破力に翻弄されてしまった。内容的には「完敗」だった。

一方、横浜FMの敗退は意外だった。

横浜FMは2019年のJリーグ・チャンピオンである。戦力的には日本から参加した3クラブの中で最強であり、今シーズンはリーグ戦では低迷していたものの、カタール入りする前に調子は上向いていた。そして、ACLが始まってからも上海上港とは1勝1敗に終わったものの、韓国王者の全北現代モータースを4対1で一蹴して最終節を前に事実上首位通過を決定。シドニーFCとの最終戦ではターンオーバーを使うこともできた。

ラウンド16における横浜FMの先発メンバーはシドニーFC戦から11人全員が変わってフレッシュな状態だった。一方、水原三星はFC東京との最終戦までグループステージ突破が決まらなかったのでフルメンバーで戦わざるを得ず、ラウンド16の横浜FM戦でもグループ最終戦とほぼ同じメンバーで戦うことになった。

戦力的にも、状況的にも、横浜FMが圧倒的に有利かと思われた。

実際、試合が始まってみると開始3分に左サイドの高野遼のクロスに仲川輝人が合わせるビッグチャンスがあり、20分には喜田拓哉からのスルーパスを仲川がワンタッチで折り返し、詰めていたエリキが決めて横浜FMは早くも先制に成功する。

前半はその後も2度決定的なチャンスがあってどちらも決めきれなかったが、試合内容としては横浜FMが圧倒していた。

だが、前半のうちに1ゴールしか決められなかったことのツケは大きかった。

立ち上がりの最初の仲川のチャンスは、クロスのボールをエリキが触ってコースとスピードが変わったので仲川としても合わせるのが難しかっただろうし、マルコス・ジュニオールがフリーになった場面でも、仲川からのクロスボールがエリキと相手GKの間を抜けてきたので合わせられなかったのだろう。しかし、やはり決定機が4度もあって1ゴールしか決められなかったのは痛恨事だった。

そして、後半に入ると、横浜FMの選手たちの足が止まり始めた。その結果、中盤でセカンドボールが拾えなくなり、自陣ゴール前に押し込まれてしまう。2失点目などは、金民友(キム・ミヌ)が横浜FMのDF数人の中を簡単なワンツーで抜け出してしまった。

中2日で戦っている水原三星を相手に、しっかりターンオーバーを使ったはずの横浜FMの選手が先に動けなくなってしまったのだ。立ち尽くす横浜FMの選手たちの姿は実にショッキングな映像だった。

横浜FMの選手たちの足は、なぜ止まってしまったのだろうか?

説明は、横浜FMのプレースタイルに求めるしかないだろう。

アンジェ・ポステコグルー監督が持ち込んだ横浜FMの超攻撃的なスタイル。それは、人もボールも動くアクション・サッカーだった。

攻撃の場面では選手が次々とポジションを変え、両サイドバックが同時に相手陣内のバイタルエリアまで進出することすら珍しいことではない。選手が動くことによって生じるオープンスペースを利用するために他の選手が走る。一方で、攻撃に参加した選手のポジションを他の選手がするために走る必要があるし、ボールを奪われれば攻めに出てきたDFは急いで自陣内に戻る必要がある。

つまり、横浜FMのサッカーは攻撃がうまくいっていればいるほど運動量が大きくなってしまう。まさに、水原三星戦の前半がそうだった。

それに対して、水原三星は前半のうちは5バック気味に構えて、ゴール前を封印してカウンターに徹した。そして、横浜FMが攻め疲れた後半に勝負をかけてきたのだ。

横浜FMのようなサッカー・スタイルはこの大会のような過密スケジュールでは継続することが難しいのだろう。また、カタールのスタジアムは芝生がしっかり根付いておらず、柔らかい状態だったので余計に疲労がたまりやすかったのも横浜FMにとっては不運だった。

そうだとすれば、脚が止まることはある程度から予想できたはずだ。後半に入って運動量が急激に落ち始めた時点で先手を打って選手交代ができなかったのも悔やまれる。実際、後半の追加タイムには交代で投入した選手が絡んで1点を返したのだから……。

今シーズンのJリーグは川崎フロンターレの一人勝ちのような形で終わりそうだが、前年王者の横浜FMはやはり運動量が必要とされるスタイルが災いして夏場の暑さや連戦続きの日程によって疲労をため込んでしまっていた。暑さの中の連戦といった過密スケジュールが川崎にアドバンテージとして働いたのは間違いない。つまり、今年のACLのような日程なら、人は動かず、ボールを走らせる川崎のようなスタイルの方が有利だったのだろう。

川崎と同じようにボールを動かすサッカーを志向しているヴィッセル神戸の今後の活躍を期待したい。そのためには、ラウンド16の試合で右脚の付け根を痛めてピッチを後にしたイニエスタの状態が良ければいいのだが……。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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