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サッカー フットサル コラム 2020年10月30日

「前哨戦」での収穫は五分五分か。FC東京の若手選手のプレーに見た《将来性》

後藤健生コラム by 後藤 健生
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10月28日に行われたJ1リーグ第33節のFC東京対柏レイソルの試合はアウェーの柏が3対1で快勝した。

この試合はちょうど10日後に行われるJリーグYBCルヴァンカップ決勝の前哨戦でもあった。それでは、「前哨戦」として考えた場合に“得るもの”はどちらにとって大きかったのだろうか?

もちろん、柏にとっては「勝利した」という事実そのものが大きな収穫だった。決戦の10日前に内容的にも完勝したことは大きな自信にもなるだろうし、次戦に向けて戦い方が明確化するはずだ。

そして、今シーズンは故障で出遅れていたクリスティアーノが2ゴールを決めたことも大きな収穫だった。得点王争いで首位を走るオルンガはこの日は無得点に終わったものの、クリスティアーノのゴールはどちらもそのオルンガのアシストによるものだった。

高さと速さ、ボールテクニックに加えて、周囲を使うのがうまいのもオルンガという選手の能力である。後半開始早々46分のゴール・シーンなどは、オルンガ自身が強引にシュートを狙ってもよい場面だったが、オルンガはより確実に、冷静にフリーだったクリスティアーノへのパスを選択した。

さらに、オルンガは前半23分には北爪健吾のクロスからのヘディング・シュートをクロスバーに当てているし、82分には江坂からの強いパスをヒールでコースを変えてポスト直撃のシュートを放っている。

試合は柏の快勝で、柏の収穫はたしかに大きかった。ただし、この日のFC東京はターンオーバーを使っており、前節から先発7人を入れ替えていたのも事実だ。

主力の永井謙佑はベンチ外、ディエゴ・オリヴェイラもベンチスタート。最終ラインこそ中村拓海、渡辺剛、森重真人、小川諒也とベスト布陣だったが、中盤から前は若手が多く、GKも若い波多野が起用されていた。

そして、それに伴ってFC東京は攻撃のスタイルもいつもとは違っており、柏としてはこの試合での感覚をそのまま決勝戦に持ち越すことはできない。

では、「FC東京が得たもの」とは何か?

最大の収穫は、ベストメンバーをそろえたDFラインが柏の攻撃力をピッチ上で経験したことだろう。柏はトップにオルンガを置き、右にはクリスティアーノ、そしてトップ下に江坂任と最強の布陣だった。

その柏の攻撃をFC東京のDFラインは体感したのだ。いかなる映像による情報も、選手たちの体感に勝るものではない。しかも、3失点してしまったものの、FC東京のセンターバック・コンビの渡辺と森重はオルンガにはゴールを許さなかった。

今シーズンは、キャプテンを任されている渡辺が一段と安定感を増しており、渡辺と森重はJリーグ最強のセンターバック・コンビと言ってもいいかもしれない。彼らは非常に意識を高く保ち、オルンガへパスが渡る瞬間にグッと体を寄せてオルンガより半歩前に出てパスが入るのを阻止することでオルンガを封じた。「前哨戦」として考えれば「オルンガ」を体感し、そしてそれをなんとか封じ込めたことは大きな収穫だったのではないだろうか。

前半の失点は、こぼれ球を拾って加速した仲間隼斗を止めに行った森重が入れ替わられてしまったことによるものだった(仲間のシュートをGKの波多野がはじいたところを江坂が決めた)。森重のミスといえば明らかなミスなのだが、これは“オルンガ対策”で「相手より半歩でも前に出たい」という意識が強すぎたために誘発されたミスだったのではないだろうか(柏側から言えば「オルンガ効果」ということになる)。

「快勝した」という記憶を手に入れた柏と「オルンガ」を体感したFC東京。「前哨戦」として考えれば、収穫は互角と言っていい。

さて、この日のFC東京はクラブの育成組織出身の、いわゆるホームグロウン(HG)組が何人も起用された。中盤では品田愛斗がベテラン高萩洋次郎とダブルボランチを組み、サイドハーフには右に原大智、左に内田宅哉が起用された。GKの波多野、DFの渡辺、小川を含めれば23歳以下のHG選手が実に6人も起用されたのだ。

渡辺、小川といったレギュラー組を除けば、HG組の中で良いプレーを見せたのが原だった。191センチという長身に加えて、スピードもボールテクニックもあり、ドリブルを仕掛けながらパスを出す能力も高い。最近、「自分の持ち味をどのように発揮するか」が分かってきたようにも思える。

MFの品田はミスも多かったが、相手のマークからはずれてパスを受けられるポジションを取るのがうまく、その結果としてボールタッチ数が非常に多かった。片鱗を見せた形だ。

そして、こうしたHG組はコンビネーションもよく、パスで崩す意識が非常に高かった。

今シーズンのFC東京は攻撃面では永井とディエゴ・オリヴェイラの2人の好守に渡る献身的なプレー、つまり「個の力」への依存度が高い。ところが、HGの若手多数を起用した柏戦では、パスをつないでのビルドアップが目立ったのだ。

もちろん、それが決定機に結びつかないとか、カットされてショートカウンターを受けてピンチを招いたのも事実だが、それにしても彼らが経験を積んで行けばFC東京というチームが将来どのように変化、成長していくのかを垣間見せてくれたような印象も受けた。

ルヴァンカップ決勝では、長谷川健太監督は当然、D・オリヴェイラや永井をはじめ、経験豊かな選手たちを起用してくるはずだ。柏の選手達も、きっと「10日前とは違う」という印象を受けるに違いない。

文:後藤健生

後藤 健生

後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授

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